エルフのチームへ加入
突然、話しかけてきたカイトにエルフたちの視線が一斉に向く。
「ん……なんだね? 見たところ旅人のようだが?」
「俺、カイトって言います。この世界では召喚士やらせてもらってます」
こんなに熱心に自分自身を売り込んだことなんて今まで一度もない。
けれどクライシス・モンスターの討伐を今後も続けていく上で、一人でできることは限られているとこれまでの戦闘でつねづね感じていた。
「『この世界で』って、なんかおかしなこと言う奴だなあ」
大柄なエルフがハッハッと笑う。
「宿の外で俺の仲間たちをお見せします」
三人のエルフを連れ外で次々とモンスターを召喚しスペルカードの効力も披露した。
「ふむ。中々の戦力だと思うぞ。どうかな、二人ともカイト君を仲間に迎え入れるというのは?」
かしらのゴブリンが良い心証を持ってくれたようでカイトは一安心した。
「良いですね! そのカードとやらを使った対応力と攻撃力、何より携帯性の高さが遺跡攻略に最適かと思われます」
小柄なエルフが興味深そうにカードやモンスターを観察している。知的好奇心をくすぐられているようだ。
「俺はユナイトとかいう黒いドラゴンが気に入ったぜ! こりゃ楽しくなりそうだ」
元々、遺跡攻略に前向きだった大柄なエルフだ。
すっかり腕を鳴らしている。
「決まりだな! よろしく頼む」
かしらのエルフが握手を求めて手を差し出してきた。
リーダーの貫録を常に放つ長剣使いのウルグ、小柄な参謀役であり弓使いのコディ、大柄でムードメイカーの斧使いガンマ、そして様々なカードを使いこなしドラゴンまでも使役する召喚士のカイト。
ここに四人の遺跡攻略チームが結成された。
どうやら遺跡までは宿屋から歩いて三時間ほどかかるらしい。なので十分な休息と準備が必要とされた。
コディが地図をテーブルに広げ遺跡までのルートや休息ポイントを綿密に計画してくれていた。
「まず河を超える必要があります。情報では幅は二キロ程、橋が壊されていなければ問題はないでしょう」
「河を超えれば平原エリア、そこからまた一時間ほど歩けば遺跡に到着となる」
ウルグが言うにはその平原エリアでは爬虫類型モンスターが多数生息しているらしい。
「はん! トカゲでも蛇でも俺が叩っ切ってやらあ」
ガンマは依然として張り切っている。
「あの遺跡でもトカゲモンスターがいるって話でしたけど?」
一番気になるのは遺跡で現れるモンスターについてだ。
「ああ、そうだな……命からがら生き延びた者の証言ではトカゲのようなモンスターに群れで襲われたらしい。いつしか《トランス》と呼称された。非常に獰猛で瞬く間に数人の部隊がやられていったそうだ」
その口ぶりからウルグの口惜しさがわかった。
「おそらくは遺跡の奥に女王アリのようにトランスを生み出す役割の個体や核となる卵があるものだと考えています」
コディの勘は当たっているのだろうと思う。
群れで統率を執っているのであれば。
「まずいのはよ……今は遺跡に留まってくれているようだがトランスが野に放たれちまったらってことだ」
さすがのガンマも苦笑いで顔に焦りを浮かべた。
「俺のユナイトドラゴンは遺跡の中で召喚できそうですか?」
「遺跡の中は部屋が連なっているようでその一つ一つが大部屋だそうだ。狭路では難しそうだが主な戦闘は大部屋で行うつもりだ」
「これまでは二つ目の部屋までの情報しかありませんが遺跡の大きさから推測するに三つ目の部屋まででしょう」
カイトは今までとにかく北へ北へと闇雲に冒険してきた。
エルフたちのようにもっと慎重に情報を集め行動できていたならリィズを危険な目に遭わせることはなかったかもしれないと心が痛んだ。
自分はこれ以上リィズと旅をしない方が良い。
勝手かもしれないが安全な場所で健やかに過ごしていて欲しい。
カイトがエルフたちの遺跡攻略に進んで参加したのもリィズと離れる覚悟を決めるためでもあったのだ。
「ひと眠りした後に早速、遺跡へ向けて出発するぞ! いいな!」
ウルグの気合の入った号令を受けカイトは気持ちを切り替えた。




