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天地開闢
渾沌。
其は総ての始まりの前、総ての終わりの後。
其処には天も地もなく、生も死もなく、有と無の境すら曖昧であった。
茫漠と広がる無辺の渾沌の中で、後に始祖竜フラクトフェノンと呼ばれる其れは、ただ一片の渾沌の澱でしかなかった。
ある時、ふと生じた一粒の泡。
瞬きの間に消え去るであろうそれに、其れは目を、或いは心を奪われた。
目も心も持たぬはずのただ一片の澱は、確かに感を得ていたのだ。
その泡を美しいと。
かけがえがないと。
ただ、なにより喪いたくないと。
ゆえに、決して喪わぬよう、我が身のうちに取り込んでしまった。
大きく口を開き、周りの渾沌も諸共、一呑みにした。
其れは、まさに世界の産声であった。
それは、
世界の始まりよりも前から続く。
悲劇と呼ぶにはあまりにも陳腐な、
ありふれた物語。




