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第八章 島
七月十五日。志賀島。
志賀島にたどり着いた二十一人は、その後の二ヶ月で十九人になった。島での最初の日に一人が持病で倒れ、六月に入って二人が食中毒から回復できなかった。誰も、その名前を口にしなかった。口にすれば、壊れてしまいそうだったから。
志賀島は海の中道と呼ばれる細長い砂州で本土と繋がっている。到着してすぐ、中村は砂州の最も狭い地点を爆破した。元自衛官の知識が、ここで活きた。さらに三日かけて、残った砂地をスコップで掘り崩し、満潮時に海水が通る幅まで広げた。
「これで奴らは来れん。海は渡れんし、道はなか。ここが俺たちの城たい」
島には漁港があり、畑に転用できる土地があり、井戸水が出た。何より、死者がいなかった。
人口ゼロの島。それは、死者もゼロということだった。
最初の一ヶ月は、ただ生き延びることに必死だった。魚を獲り、野菜の種を蒔き、雨水を溜め、見張りを立てた。本土の方角からは、夜になると微かに呻き声が風に乗って届いた。
美咲は毎朝、島の北端に立って本土を眺めた。かつて百六十万人が暮らした福岡の街は、静まり返っていた。ビルは建っている。道路もある。信号機だけが、もう二度と色を変えることなく、風に揺れていた。




