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第十章 地下の記録
篠原が持ち出したUSBメモリには、京都大学の山際研究室が最後の数日間に記録した膨大なデータが入っていた。
島にはもう電気がない。だが、翔太が漂流中に拾った太陽光パネルと、島の廃屋にあったノートパソコンを組み合わせて、どうにかデータを読み出すことができた。
美咲と中村、そして島の生存者たちが、篠原の周りに集まった。
篠原はゆっくりとファイルを開いていった。
「山際先生は、あの最後の録音で『原因がない』と言った。全てのウイルス、全ての細菌、全ての環境要因が陰性やった。それは事実。でも、先生はその後も調べ続けとった。死者の体ではなく――死者が蘇った瞬間を」
画面に波形データが表示された。誰にも意味はわからなかった。篠原だけが、それを読むことができた。
「先生は死の瞬間に立ち会い続けた。何十体もの。倫理もクソもなか状況やけん、研究所に運び込まれた遺体が蘇る瞬間を、あらゆるセンサーで記録し続けた」
篠原は一つのグラフを拡大した。
「これが――死亡の瞬間。そしてここが――蘇生の瞬間」
二つの点の間には、約八分の空白があった。
「この八分間に、何かが起きとう。先生はそこに気づいた。体の中じゃなか。体の外で」




