意外なコラボレーション
「じゃあ、魔法は全滅ってこと?」
ミリオタは尋ねた。
「私たちのレベルだと、氷魔法かな。トロントをしばらく活動停止にできる」
ノーブルは答えた。
「それって冬眠?」
ハッカーは言った。
「植物も冬場は活動停止しますからね」
化学は答えた。
「木枯らしって、あるでしょ。あれって寒さで木の水分が抜けるんだよね。氷魔法で水分が抜けないのかな」
チェスは言った。
「氷魔法の持続時間ってどれくらいですか?」
化学は尋ねた。
「私たちのレベルだと、15分程度かな」
ノーブルは答えた。
「氷魔法で水分を抜くのは、難しいかなと」
化学は言った。
「リベンジしたい訳じゃないんだけど、山火事あるだろ。あれも生木なのになぜ燃えるの?」
ミリオタは尋ねた。
「あれは条件があって、乾燥が続いていて、枯れ枝や立ち枯れした木などが多く、下草も枯れており、それらがまず燃焼することにより、生木も燃えるという仕組みだと思います」
化学は答えた。
「あのさ。素人考えなんだけど、トロントって木でしょ。木こりに任せればいいんじゃないの」
ハッカーは尋ねた。
「もちろん、木こりが一番適職だと思いますが、彼らは動かない木しか倒せません」
私は答えた。
「じゃあ、氷魔法で眠らせといて、木こりに切ってもらえば?」
ミリオタは尋ねた。
(それだ)
一同の意見が一致した。
……
私は、トロントが多発する森に、ノーブルと木こり、そして護衛を引き連れ、出かけて行った。
「トロントが出るというのは、この辺りか?」
私は尋ねた。
「そうです。先週この辺りで大きいのを見ました」
木こりは答えた。
「見つけたら、氷魔法を使えばいいのよね」
ノーブルは言った。
「そうだ。頼む」
私は答えた。
「しかし、トロントは厄介だぞ。魔法なんかで大丈夫か?」
木こりは尋ねた。
「知らないわよ。ただ活動は停止するから、普通の木になるんじゃない」
ノーブルは言った。
「あれ。トロントじゃないか?」
私は尋ねた。
「あぁあれがトロントだ」
木こりは答えた。
「じゃあ。魔法を使うわね」
ノーブルは言った。
私と木こりはうなづく。
「マスメマユラキグテンスフォエイオプゴネテス。氷の精霊※※※※※よ。汝に命ずる。かのものを氷の眠りにつかせよ。スノードリーム」
空中に吹雪が出現し、トロントに向かって放たれる。
辺りは急に寒くなる。トロントの動きは停止した。
「では始めてください」
私は言った。
「ちょっと待て、こんな寒さの中で木を切るのか?」
木こりは震えている。
「何してんのよ。早く切りなさいよ。プロなんでしょ」
ノーブルは叫んだ。
木こりは、ムスッとした顔をし、トロントに向かう。
そして、斧を恐る恐る入れる。
(こーん)
暗い森の中に、木を切る音が響く。
「おぉ叫ばないわい。これなら切れそうだ」
木こりは叫び、再度斧を入れる。
木こりは5分ほど格闘し、トロントを伐採した。
「もう良いわよね。止めるわよ」
ノーブルは言った。
私と木こりはうなづく。
「しかし、上手くいきましたね」
私は言った。
「本当だ、嬢ちゃん頑張ったのぉ」
木こりは言った。
「当然よ。木こりさん、あなたも良い腕じゃない」
ノーブルは木こりの背中を叩いた。
木こりは頭をかいた。
「これでトロントは死にましたよね」
私は尋ねた。
「こいつら木だけど、根っこから養分吸わんからな。捕食できなくなったら死ぬ」
木こりは答えた。
「これをどれくらい倒したら良いの?」
ノーブルは尋ねた。
「この森だけで300体のトロントを確認しています。
この1割を間引きますから、30体ですね」
私は答えた。
「このトロントは回収はせんのか?」
木こりは尋ねた。
「まだトロントが多い森なので、回収すると危険です。回収するなら、もっと安全になってからですね」
私は答えた。
「どんな編成と規模でするの?」
ノーブルは尋ねた。
「トロントがこの方法で攻略可能だとわかったので、ここを皮切りに、全国規模に展開します。ただ、あまりにも一気にすると警戒されるので、そのあたりは慎重にならないといけません」
私は答えた。
「この1体だけの成功で、全国規模に展開は、ちょっと早急じゃないか?」
木こりは眉をひそめた。
「そうね。私はこう見えても、残った魔法使いの中では高レベルな方よ。他の子達に同じレベルの事が再現できるかはわからないわ」
ノーブルは言った。
「なるほど。たしかに一理あります。ではノーブルさんと、木こりさんで、1週間ほどかけて、この周辺のトロントを少しずつ討伐していってもらえますか?護衛はつけますので」
私は答えた。
「あぁわかった」
木こりは答えた。
「私も大丈夫よ」
ノーブルは言った。
私は木こりとノーブルに、護衛をつけ、近くの村に停泊させた。
小さな村だったので、宿屋もなく、村長や村人の家に分散させて、泊まらせた。
村長にお金を渡し、豚を一頭捌かせた。
村人たちは久々のごちそうだと喜んでいた。
……
私は一体のトロントを討伐したことで気をよくし、王城に急ぎ馬を走らせた。
大事な事を検討してなかった。
兵士や魔法使いのレベル差の問題だ。
トリネギスタン王国は先の侵攻で、高レベルの騎士や魔導士の多くを失った。
だから兵士や魔法使いのレベル上げは急務なのである。
勇者様たちに相談すれば、なんとかなるかもしれない。
そう思ったのだった。
王城に戻ると、もう日が傾きかけていた。
王城に西日が差し、黄金色に輝いた。
王城の窓から王女が顔を出していた。
その輝きがあまりにも神々しく、
私は王女を守る喜びに、心を震わせた。
私はその輝きを見上げながら、
この国を守りたいという気持ちと、
正しく判断しなければならないという責務が、
いつからか同じものだと思い込み始めていることに、
まだ気づいていなかった。




