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番外編五 神と邪神、そして次代守護者へ

『拝啓、全てを失った俺へ。今度は全て守り切ってみせます。』の一話に繋がる番外編です。


 神界。神と神獣の世界。


 胸騒ぎがしたヴィーネは神友達とのお茶会を飛び出し、慌てて自分のテリトリーに戻った。




「デウス……!」


 だが少し遅く、留守番をしていたデウスは仰向けに倒れ、意識を失っていた。





「あんた誰よ!」


 デウスの側に立っていたのは黒髪に黒い瞳を持つ青年。だがここは神界。神と神獣の世界。それなりに腕の立つデウスを倒している事からも普通の人間とは思えない。



「木谷和也……って知ってる?」


「まさか……邪神メビウス……」

(フェリーチェ・サージスが木谷和也だって気付かれた……?)



「フェリーチェ……ね。和也の今の名前はそうなんだ」

(心を読まれた!?)


 ヴィーネは他人の心を読む事は出来ない。便利だが、自分を非難する心を読んでしまった時に凹むからだ。だが、目の前の邪神メビウスは心を正確に読んだ。



「なりふり構っていられないって事ね……。悪いけど、私の世界には行かせないわ。他の世界への干渉は御法度。神界裁判で裁かせてもらうわね」


 神界裁判とはルール違反をした神を裁き、必要とあらば対象の神が管理する世界諸共消すという判断を下せる会議の事だ。




「この体になってから、身体能力が上がったんだ。だから、死んでも恨まないでね」

(フェリーチェが、自分が絡むと倫理観が無くなるって言ってたけど……こういうことね……)


「和也を取り戻す為なら他の全てを傷付けたって良い」

 その瞬間、ヴィーネは浮遊感に襲われた。



「う……!」


 瞬時に判断して受け身を取ったが、追撃で吹き飛ばされる。元とはいえフェリーチェの恋人、という事で攻撃を躊躇ってしまうヴィーネと違い、理久は少しの躊躇いも無い。



 理久の言い分としてはあと少しで最愛の人間に会えるのだ。邪魔はさせない。


 他人の世界で神力を自由に使う事は難しいが、神界ではそれが適応しない。神力量の殴り合いになる。



 普通なら千年以上生きたヴィーネが有利だが、邪神メビウスとなった理久はとある方法で神力を集める事に成功していた。





 それは、生き物の恐怖心を神力に変換するという非人道的な方法。既に世界を滅ぼした理久の元には大量の恐怖感情が集まっており、その全ては神力に変換されている。


 今干渉しているヴィーネの世界にも恐怖感情は大量に転がっている。それを奪い、神力に変える。感情の一つを盗られた人間は、運が悪ければ廃人となるが、そんな事は理久に関係無い。




 意識を失ったデウスを守りながらヴィーネが戦うのは難しく、徐々に体力が奪われていく。


「その犬にはもう用は無いよ」

「……どういう意味よ」


「メモリーの一部を破壊したから。あんたが本気で治そうと思えば治せるけど、それまでは眠ったまま。邪魔にならないからもう用は無い」

「っ……!」



 神になった事で理久が使える様になった魔法が有る。破壊魔法。記憶の消去や殺戮等、人を傷付ける事に特化した魔法だ。





「予定を変更するわ。今ここで貴方を消す」

「出来るものならどうぞ」


 自分と千年以上一緒に居てくれたデウスを傷付けられたヴィーネは初めて激怒した。


 ヴィーネの神力の糧は信仰心。守護者が居る今ならこの場で消せる。躊躇いを無くし、邪神に向き直る。




 だが、誤算が有った。


 戦いは長期化。フェリーチェの死亡後も終わらなかった。勿論、フェリーチェの所属していた連盟の顔ぶれも一新している。神界は時間の流れが無いので全く実感が無かったのだ。



 待てど暮らせど祈りに全く応えてくれない神に人々は不満を募らせ、だんだんと信仰をやめていった。



 生誕祭を行わなくなる国まで出てしまい、ヴィーネに与えられる神力も雀の涙程に。


「うぁあ……!」

 神力で張っていた結界も壊れ、ヴィーネは膝をつく。





「待ってて。今行くから」

 ヴィーネが最後に聞いたのはその言葉。

 フェリーチェの死亡からおよそ千百年が経った頃だった。




「居ない……。こうなったら王族の体を乗っ取って無理矢理探させるしか無いな……。一応、撃退される事も考えて分身もしておこう」


 そして、運悪く依代に選ばれてしまった第一王子の名が、レオン・サージス。次代守護者の友人である。



これにて完結。最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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