第13話 裏部隊出動
「な、なんで、この豪華メンバーなのに。オレがですか? 無理ですよ」
「大丈夫だ。そう慌てんな。あくまでも裏で動く部隊だ」
「裏?」
再び肩を組んだ二人は、しゃがんだ。
ガストがどこからか拾って来た枝で、地面に地図を書き始めた。
「ルル坊」
「はい」
「今いるここが正面だ。わかるか。お前、地図のスキルを持ってるだろ」
「はい。ここの地図は頭に入れました」
「さすがだ。やっぱな。お前は優秀だわ」
彼女は、ルルロアの優秀さにニッコリと笑う。
「いいえ」
「そういうとこも含めて、お前は優秀だ。んで、ここからあたいらが行こうと思う」
ガストたちは、山のアジトの入り口からは行かず、裏手にあるとある場所から侵入をしようとしていた。
「え? この裏からですか。でも道がないですよ」
「そうなんだけど。ここにな。爆弾を置く」
ガストは、地盤の緩い場所に爆弾を設置するつもりだった。
「ここをボマーの力で爆発させて、穴を開けてから突入する。相手の主力は恐らくこっち側。表には居ない」
「裏手にあえて、こちらの主力がいくと? 一気に奥を突くんですね」
「そうだ。それで、慌てる奴が出てくる。それが多分表に出ていこうとする雑魚どもだ。それをこっちの正面の入り口で迎え撃つ。だから、入口を固めるのさ。それで数を減らそう。こっちは少ない。あっちは圧倒的だ。策が重要だ」
冒険者連合は、40弱に対して、赤の庭園は、情報によると300以上だった。
数の差は歴然でも、質の差があった。
相手は、英雄職一人であったのだ。
「そっちの正面を封鎖するリーダーは、あたいの所から出すんだけど。でもルル坊も少数を率いてくれ」
「なるほど。じゃあ、オレな正面封鎖じゃない。別な任務なんですね。内部潜入かな」
「そうだ。やっぱ、お前は地頭が良い。説明全部してねえのに理解してんのな」
「いえいえ。全部とはいきませんよ」
ガストたち主力が、裏から侵入する時点で、作戦が挟み撃ちである事はルルロアも理解していた。
それで、ガストがこの時からルルロアを高く評価することになったのは、自分が伝えた作戦の一部だけしか話していないのに、そこから自分に与えられる任務が別物であることに気付けることから来ている。
これほど察しの良い人間は、中々いないと頷いていたわけだ。
「お前は乱れる洞窟内部で、人質解放をしてくれ。奴らに囚われている人はかなりいるはずだ。そこで上手くやれれば、こっちが圧倒的に有利になるからよ」
この言い方で、ルルロアはピンときた。
「なるほど。向こうが焦れば、人質を使うんですね」
「その通りだ。あいつらは裏の人間だ。どんな手を使っても自分が生き残ろうとするから、気をつけろ」
「はい」
「それで、そっちをまかせたいんだ。どこにいるかも、探してもらえるか」
「ええ。いいですよ。でも、オレってそういう索敵能力がありませんよ。当てずっぽうで探す羽目になるんで、時間が掛かりますよ」
「ああ。だから、こっちのミルフィをやる。あいつを使え」
「ミルフィさん? どなたで」
ルルロアが冒険者連合の仲間たちを見た。
ガストが、お目当ての人間の特徴を言いながら、指を差すと、その人間は『ひぃ』と軽い悲鳴を上げていた。
「あの桃色のおさげ髪の女だ。のほほんとしているから、制御が難しいけど。優秀ではあるから、あいつを連れて行け」
「わかりました」
「あと、三名くらいをお前につける。アサシン部隊がいいかな。それで頼むわ」
「はい」
こうして、ルルロアは、英雄らとは別の任務に就いた。
ハイスロ山決戦の裏側。
ハイスロ山人質救出作戦である。
―――
戦闘の始まりは、ハイスロ山の南西。
海が見える場所での大爆発だった。
地震と勘違いするほどの大きなもので、そこに巨大な穴が開いて、英雄らが率いる部隊が突入した。
面を食らった赤の庭園の面子は、侵入を許した場所では、優秀な者たちがいたために、立て直しがされた。
しかし、他の箇所にいた人間らは、その大きな爆発と揺れに驚いて、入口を目指してしまった。
数にして百ほどの人間が、外に出ようと移動したのだが、その入り口を固めていたのが、20を超える冒険者らだった。
彼らは特級。準特級で構成されていたために、鉄壁の壁となっていて、赤の庭園の構成員たちが逃げようにも逃げられない状態となる。
およそ、80ほどの赤の庭園の構成員が、そこの入り口で倒されたのだ。
挟み撃ちの作戦は見事に成功していた。
―――
両方の作戦が順調に動いていた時。
ルルロアは、内部潜入に成功していた。
慌てている赤の庭園の構成員に見つからないように移動して、少数での素早い移動を展開していた。
「ミルフィさん。敵ってどっちにもいます?」
分かれ道に到達したルルロアは、先頭にいるために、後ろに手で合図を出す。
待機の指示を出しての、質問だった。
「はいぃ。左が多くて、数えられないです。こちらからは2です。こっちに来ますぅ。どうしましょう」
「ええ。大丈夫。不安にならなくてもいいですよ。ありがとうございます」
「そんなぁ。お礼なんて。エヘヘ」
彼女は、褒められることに慣れていない。
リングロード内では厳しさに溢れているので、今回のルルロアの対応に照れていた。
普段の指示とは違い、ルルロアの指示がとても優しくて、それがとても嬉しかったのだ。
ガストにもこういう対応して欲しいなと、内心で軽く思っている。
「ロンドさん。クロンさん。シレルさん。頼みます。いけますか」
三人は黙って頷いた。
この三人は、リングロードのアサシン部隊のメンバーだ。
無言を貫くのは敵に声を聞かれたくないから、徹底した闇の動きをするのだ。
「お願いします」
再び三人が頷くと、右の道に進んでいく。
アサシンの隠れ蓑を使って、敵に気付かれないように前へ移動していった。
二人が残されるとルルロアは再度指示を出す。
「ミルフィさん」
「はいぃ」
「この地図って違いますよね」
「ええ。だいぶ違いますねぇ」
のほほんとしているけど、しっかりしている所はしっかりしている。
ミルフィは、地図を見て、実際の洞窟内の大きさに違いがある事に気付いていた。
「これは・・・ルル君」
「はい」
「内部で、拡張工事をしているかもしれません」
「やっぱり」
「はい。内部構造が違います。音も変なんですよぉ。この地図の感じだと、音がもっと速く伝わるはずです。でもそれがちょっと弱いので、広くなってるはずですよ」
「そうですか。なるほど」
ミルフィのジョブは『音楽師』
特殊職で支援系統のジョブである。
音にまつわるスキルを持っていて、主なスキルだと。
①音で味方にバフをかける。
②敵の耳に音を直接ぶつけて、デバフをかける。
③音索敵と呼ばれる能力を持っている。
これで、ミルフィは③の能力が抜群で、近くも遠くもどっちにいようとも敵がわかってしまうのだ。
それは、一般人が出す際の音と、冒険者ら、軍関係者、裏ギルドなどの人の動きの音の違いに気付くくらいの能力を持っている。
その聞き分けは、驚異の99%の正解率がある。
「ルル君。どうします。私が役に立ちませんよぉ」
「え? どうして」
「こんなに広いと、しらみつぶしになっちゃって・・・音を探すのが大変で・・ああ、ごめんなさい」
頭を下げて謝って来て、ルルロアが慌てる。
「え? いやいや、謝る必要なんてありませんよ。オレは、すっごく助かってます。ミルフィさんのおかげで、オレたちって敵に気付かれてないんですよ。これって、凄い事ですよ。大丈夫。役に立たないなんてありえない。ミルフィさんは踏ん反り返っていてください。凄いですから、自信持ってくださいよ!」
「え? そ、そうですかぁ」
「ええ。間違いない。この班で一番の手柄を立てるのは、あなたですからね」
ニコッと笑ってくれたルルロアが素敵だった。
のんびりしたミルフィの恋心は、激しく揺れ動く。
五つも下の子なのにと、真っ赤な顔をピンクの髪で隠した。
「そ・・・そんなぁ・・・ありがとうございますぅ」
ルルロアはそんな彼女の変化に気付いてなかった。
「ええ・・・あれ、ん!?」
ここでルルロアが前方を見る。
指示を受けた三人が、敵二人を倒したらしい。
合図が来ていた。
「安全ですか。よし。いきます。しらみつぶしになるのなら、ミルフィさん」
「は、はい!」
「オレに乗ってください。急いで移動しましょう。一つ一つ地図を足していき、しらみつぶしで場所を潰していきます」
「・・・あ、はいぃ」
この後、顔が真っ赤な彼女は、ルルロアの背に乗って、おんぶされた状態で索敵をしたのである。
この時間が永遠に続けばいいのにと、別な邪な事も考えていたミルフィであった。




