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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
侍の里 剣聖の師は無職

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第12話 四大ダンジョン ガルズタワー

 ついにこの日がやって来た。

 ガルズタワー挑戦の日。

 

 八カ月という長そうで短い修行期間を経て、アマルはだいぶ成長した。

 厳しい訓練をやり遂げて爆発的成長を遂げたのである。


 実力で言うと、一級冒険者クラスの剣士と同格となり、単独でミノタウロスと戦えるくらいにはなった。

 つまりはBランク帯のモンスターは、へっちゃらであるということだ。

 時と場合によっては、Aランク帯とも戦えるかもしれない。

 それくらいの強さになった。


 なのだが。

 なぜかアマルは、いまだに初期スキル『泰然自若』が、発動していないのだ。

 それなのに、一級冒険者と同じ実力者となってしまった。

 ということはだ。

 もし、こいつが初期スキルの発動に成功すれば、おそらくは準特級か特級の実力者になるやもしれない。

 まだ13になるか、ならないかの年齢の子がだ。

 オレって、もしかしてとんでもないバケモノを育てあげてしまったかもしれない。

 内心ドキドキに思っています。

 下手をしたら、レオンたちを超える英雄を誕生させてしまうのかもしれないんだ。

 マジで、とんでもないバケモノを生み出したかもしれないのだよ。


 ああ、世界よ。オレはやばい奴を育てたかも知れんぞ!

 ははははは!!!

 すまんな。

 こいつが悪いことしたら、誰も止める人がいないかもしれないよ。

 大魔王誕生であるぞ!!!


 なんて心の中で思っているのは、ルナさんたちには内緒にしておこう。


 

 ◇


 オレとルナさんとアマルは、ガルズタワーの入り口に到達。


 「これがガルズタワーか。でけえ。遠くで見た時とは大きさの印象が違うな」


 ガルズタワーはジョー大陸のサーカンド山脈より東の位置で、大陸にとっても東の端に近い場所だ。

 ここは斜めに聳え立つ塔。

 当然斜めな分、入口も斜めになっており、オレたちのような人間にとっては空間把握能力が奪われるダンジョンだ。

 なぜなら、中に入ってもそうなのだ。


 「む。ルル、これは」

 「ルル殿」

 「ああ、こいつは・・・モンスターよりも厄介だな。予想していても、実物はヤバいな」

 

 オレたち三人は、同じような姿勢になる。

 体を斜めに傾けたのだ。

 それが、本来の建物の正常な姿であるからだ。

 内装も全てが斜めになっている。

 壁も床も何もかもが斜めで、シャンデリアみたいな吊るされたものは真っ直ぐ下に落ちていて、他が斜めになってるもんだから、自分の目がおかしくなったのかと錯覚してしまう。


 「やばいな・・・慣れないといけないわ」

 「そうですね。ルル、どういう風にダンジョンを」

 「前段階の話し合い通りに、ゆっくり進みますよ。ここを見て尚更思いますね。まずは慣れましょう。目と頭がね」

 「はい。そうですね」


 ルナさんとオレは、ここに来るまでの間に話し合いを積み重ねてきた。

 連携の取り方。

 戦いの際のアマルの配置。

 これらを重点的にチェックし、実際にもイメージしながら連携を取っていた。

 

 だが、その心配をよそに、意外にもアマルは。

 「いける! 頑張れるぞ。拙者いけるです」

 1階、2階と難なくモンスターと戦えていた。


 「よし、いいぞ。お前も戦力と見なしていい感じだな」

 「そうか。ルル殿!」

 「ああ。よくやってる。でかした。オレもルナさんもそんなに気を遣わんでもいいのは、このダンジョンでは大きい。オレたちが気疲れせずに上に行けるぞ。よくやってんよ」

 「うむ。まだまだ精進する」

 「お。おお!」


 最近、出会った頃のアマルとは全く違う性格になった気がした。

 アマルはオレに褒められたとしても、調子に乗らずに自分を見つめ直している。

 一歩一歩強くなろうとしていた。


 ◇


 無事に五階まで到達。

 しかし、オレの当初の予定とは違うことに、逆に不安に思う。

 何事も無い。

 この一言は、聞こえはいいけど、不安になる。

 これが、四大ダンジョン以外であったら別に不安にもならない。

 しかし、四大ダンジョンと言えば、イレギュラーがつきもの。

 それが順調はあり得ない。

 

 「順調だ。順調すぎるからこそ、ここで休憩を取ろう。ルナさん、アマル。二人は寄り添って寝てください。出来るだけまとまって、オレはその前で見張ります。安心して寝てください」

 「わかりました。そうしましょう。アマル来なさい」

 「うむ。おば・・・姉上」


 アマルは、ここ最近、ルナさんを呼ぶ時に叔母上を辞めた。

 当然だ。叔母上と言うと、100%アッパーカットが来るからだ。

 もう二度とあの攻撃を食らいたくない。

 死にかけたくないのだという切実な思いがそこにあるのだ。


 二人は互いの頭と肩をつけて、寄り添って眠った。


 「よし、スキル展開をしておこう」


 二人の眠りを見届けたオレは匂いのスキルを軸に展開。

 モンスターが来るのであれば、すぐに対応したいのでこのスキルにした。


 「……もうガルズタワーに来たのじゃな」

 「お、レミさん。オレの服にいたのか」

 「うむ。ずっとルルの胸のポケットにいたのだ」

 「そうすか。やけに胸がもっこりしてるなと思ったら、レミさんがいたのか」

 「うむ・・・って、気づけ! なのじゃ!」

 「はははは。そんな怒んなって。オレって、あんまり服に興味が無くてさ。気にしてなかったよ」


 オレはいつも軽装スタイルを貫いている。

 重い動きになるのを嫌っているんだ。

 それは、オレ自身が軽い状態でいたいのと、オレのスキルたちの種類は豊富であるのだけど、重装系統のスキルが少ないことが起因している。

 斧とかバスターソードとかを扱えないわけじゃないが、オレの性分にも合わないのである。


 「んんん・・・おかしいんだよ。レミさんは感じないか」

 「どうしたのじゃ?」

 「五階まで順調すぎるんだ。敵の出現も数も少なめなんだ。このダンジョンってさ、四大ダンジョンなんだぞ。だから、この順調さがありえないんだ。バイスピラミッドもマリンリアスも最初の段階から冒険者を殺しにかかってきていたんだ。レミさんはここの階層数知ってる?」

 「うむ。40階層じゃな」

 「そうなんだ。40もあるんだよ・・・それで、バイスピラミッドって知ってる?」

 「おお。三角の!」


 レミさんのダンジョンの覚え方は、独特な覚え方だった。


 「そう、三角のダンジョンさ。あれって一番下を一階だと仮定すると、計23階層なんだ。つうことは約二倍。互いを換算すれば二倍と二分の一で計算していいでしょ。それで今オレたちは五階まで進んだということはあっちでは二、三階程度なはず。なのに三人パーティー。しかも二人は一級止まりの冒険者のパーティーでほとんど無事でいることがおかしい。結構苦戦するはずなんだよね。あっちは一階層からチルチルが出てくるからさ」


 バイスピラミッドを思い出すと比較できる。

 ずるがしこいチルチルに、迷宮の様な作りの建物内は、最初から極悪だ。

 

 あの時のオレたちはあれだけでも苦戦したのに、実際は五階層しか進んでいないのだ。

 あの時の冒険者パーティーは。 

 準特級一人。一級六人。

 これで挑んで、五階で引き返してきたわけだ。

 しかも、一人を失ってだ。

 なのに今は三人が無事である。

 逆に異常事態と言える。


 「だからさ、オレはここから一気に難易度が上がるんだと思うんだよね」

 「そうかもじゃな。しかし、そんなに警戒していては慎重に行き過ぎると体力が持たんぞ。十五階は外じゃぞ」

 「ああ、知ってる。十階から、十五階のセーフエリアまでは、螺旋階段のように塔の外を回るんだよね」

 「そうじゃ。10~15。27~30。この二つが外じゃ。外に繋がるダンジョンなど、滅多にないダンジョンじゃな」

 「物知りだね。レミさん」

 「長生きなだけじゃ。むしろ、ルルがそこまで知っておるのが不思議じゃ」

 「オレは知ってるさ。冒険者になるために座学を学んでいるからね」

 「座学?」

 「ああ。こういう情報は、先生からと、図書館で調べ上げているんだ。冒険者になる前からオレは、いつかここに挑戦して全てのダンジョンをクリアさせてあげるんだって。そう思って生きてきたからな。必死に勉強したのさ」

 「させてあげる??? するじゃなくて???? どういうことじゃ??」


 オレは四人の顔を思い浮かべた。

 

 「ああ。オレの大切な友達の、英雄のあいつらが英雄たる栄光を勝ち取るためにさ・・・」


 そうだ。

 あいつらが、本物の英雄になるためだったら、オレはどんな努力も努力だと思わなかった。

 どんな苦労も苦労だと思わなかったんだ。


 ◇


 二人が起きた後。


 「ルル、あなたは眠りませんか?」 

 「ええ。そうしたいですけど。ダンジョンで警戒できますか。ルナさん」

 「ダンジョンでの方法は知りませんが。軍の方法なら出来ます」

 「拙者は初めてで・・」


 アマルが申し訳ないと言いたげだった。


 「ああ。それは分かってる。そんな暗い顔をするな。アマルは今から勉強すればいいんだ。ルナさん、軍の方法でいきましょう。この場合だと二つの目を左右に置いて警戒ですね」

 「そうです。360度警戒方式です。二人しかいないので、目が足りませんがやるしかないです」


 グンナーさんが提唱している警戒は、90度を四人で警戒する。

 360度警戒方式だ。

 一人が90度を警戒すれば、人間の視野は90度以上あるので、自然と重なり合う部分が生まれ、より敵を発見しやすいというグンナーさんが独自で考えた警戒方法だ。

 基本はスキルに頼らずに動くのが軍なので、今の少ない人数でのダンジョン攻略ではこれが重宝する。


 「五分もらいます。それで寝ます!」

 「ご、五分!? 短いのでは、ルル殿。拙者らは一時間ほど寝たのに……」

 「大丈夫だ。アマル、心配すんな。オレにはスキルがある」

 「スキル?」

 「ああ。任せとけ」


 と言ってオレは、二人に警戒を託し、壁に寄りかかって眠りに入った。


 スキル『深々眠り(まるっとうたた寝)

 ジョブ 『魔力動力士(マジックタンク)』の初期スキルである。

 

 これは少し寝ただけで体力が回復するスキルだ。

 ここで重要なのは『体力』である。

 これはあくまでも魔力は回復しない。

 魔力動力士(マジックタンク)は、ハードな職業。

 飛空艇運行職員は、数時間以上、魔力を放出し続けるという作業をこなして、魔力消費も凄いのだが、体力消費の方がもっと激しいんだ。

 だから、ひとまず体力回復の方が重要なので、魔力動力士(マジックタンク)は、この初期スキルを得ている。


 …五分後。


 「ルル、五分です」

 「はい! いきましょうか」


 オレは、五分でフル回復させ、先へと進む指示を出した。

 


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