表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
侍の里 剣聖の師は無職

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/240

第8話 レミさん?

 休息日二日目。

 昨日。

 「親子でゆったりとした時間を過ごしてください」とブランさんに告げておいた。

 アマルの休息は心がメインで、親父さんの愛を受けてもらう事が重要だとして帰って来た。

 

 オレの事であるが、オレは、あの意味不明な親父から愛を受けたと思っている。

 正直、話の半分以上は意味不明。でも、親父が愛してくれているのは明確に分かる。


 それだけはね。

 わかるんだ。なんとなくだけどね。


 それにアマルは母親がいないから、父親からの愛情をたくさん受けて育ってほしい。

 ちなみに爺さんにも愛情を貰おうと思ったが、爺さんは王都での仕事があるらしく、今はいないので全てをブランさんに託した。



 ということで、オレは、ルナさんと一緒に休憩に入った。

 里長である爺さんの大屋敷に居候する形になったオレは、二人で台所に立った。


 「ルル、必要な用具はこれですか?」

 「はい。ありがとうございます。それじゃあ、少し待っててください!」

 「はぁ??? 拙者は作らなくてもよいので?」

 「ええ。オレが作りますよ。とっておきのものを出しますからね」

 「そうですか。では、待っていましょう!」

 

 と言ってルナさんは、台所の隣の部屋のちゃぶ台の前に正座して座った。


 スキル料理を発動させ、高速でパンケーキの準備をする。

 マジックボックスから具材を取り出して、手際よく小麦と卵と牛乳を出していく。

 もちろん、これらは、二か月前に買ったからって腐ってませんよ。

 マジックボックスは、何故か物が腐らないのです。

 これは証明済みなんです!!

 だから便利道具なんですよ。

 ルナさん、お腹の心配はしないでくださいよ。


 次にオレはふわふわに焼くために火の加減に神経を使い。丁寧に焼く。

 良い香りと気泡がぷつぷつと湧いてきたら、ひっくり返すチャンス!

 オレはパタンとパンケーキをひっくり返した。

 

 それで次々と焼き上げていって、皿にふわふわのパンケーキ三枚を重ねて盛って、その上に特製のクリームを置いた。

 モリモリと山のようにクリームを入れて、周りにフルーツをちょちょっと盛り付ける。


 これにて、ギンドールさんのお店の特製パンケーキの完成である。

 

 「よし、できた」


 オレは、特製パンケーキを隣の部屋に持っていった。



 ◇


 「どうです! ルナさん! これがルナさんの食べたかったものでしょ!」

 「ぬ・・・・なんですこれ?」

 「え、パンケーキですけど」 

 「え!? どこに?」

 「いや、ここにあるんですけど・・・」


 ちゃぶ台に乗っけたパンケーキ。

 何故かルナさんにはそれに見えないらしい。


 「・・・これはケーキじゃないのですか?」

 「え?」

 「生クリームですよね。これ、あとイチゴとか」

 「いえいえ。ケーキじゃないですよ。これが最新のパンケーキらしいですよ。マーハバルで修業しましたからね」

 「え・・・修行? 拙者の為にですか?」

 「ええ。ルナさん食べたいってずっと泣いていたから!」

 「泣いてませんよ!」


 ルナさんは堂々と嘘を言った。


 「ルナさん。毎回、おにぎりは嫌でしょ!」

 「・・・そうですね」

 「生ハムも食べさせてもらえてないですよね?」

 「ええ。そうですね」 

 「だから、せめて、オレがパンケーキを食べさせてあげたいなと思いましてね。料理スキル持っているので、是非食べさせてあげたいなと」

 「・・・おお。それは優しいですね。ルルは。グンナーさんと一緒ですね。どれどれ」


 ルナさんが一口食べたら、フォークが口の中で止まって出てこない。


 「うううううう。ううううううう」


 フォークを口の中から取り出さずに呻いている。

 苦しいのか。やばいのか!?


 「う?」

 「うわあああああああああああああああああんんんん」

 

 大音量で泣き始めた。


 「え、不味いの? なにこれ? どういう状況?」


 オレは戸惑った。


 「おいじいでず・・・・どでも美味しいでず・・・・ズビっ」


 ルナさんは美味しすぎて鼻水を出したみたい。


 「まあまあ。そんなに泣かないでも・・・ほらハンカチですよ」

 「ありがとう・・・ルル。助かります」

 

 本当にこの人は、世話の焼ける姉のような人だ。

 でも喜んでくれたようでオレは嬉しかった。


 「美味しいですね。これも。美味しいです。あの時のも美味しかったですが、同じくらいこれも・・・」

 「あの時?」

 「ええ。一度グンナーさんが奢ってくれた時に食べたパンケーキです。あの時は生クリームはありませんでしたが、それでも美味しかったですね。あれは、一緒にいた人の優しさが詰まっていたんですね。これもそうです。ルルの優しさが詰まってるのです。だから特別においしいんです。ありがとう。ルル」

 「あ、はい。こんなに喜んでもらえて、嬉しいですよ」

 「ええ。大事に食べます!!!」


 と言って、ルナさんは三分で、三段のパンケーキをペロリと平らげた。

 大事に食べるという言葉は・・・いったい、どこへいったの?

 目をパチクリさせたオレは、満足そうに全てを食べきったルナさんに驚くばかりであった。

 


 ◇



 お屋敷の中庭。


 オレは縁側に座って庭を眺めていた。

 これが庭園・・・。

 王族でも何でもないオレにとって、砂利が敷き詰められているのに、整った形をしている庭なんて初めて見た。

 盆栽とかいうものや、こんもりした木とか、実家では見たことが無いものがここにある。

 でもわかる。

 綺麗なんだ。

 風情があると言った方がいいかもしれない。

 とにかく心を落ち着かせるには、とてもいい場所である。

 アマルの体と心を回復させるにはちょうどいいだろう。


 「は~。こういう場所で育ったから、ルナさんは所作が綺麗なのかな」


 オレはそんな独り言を言った。

 直後、上から叫び声が聞こえた。


 「なんでじゃ!? あの・・・・野郎・・・ムカつくのじゃ!!!」


 は?

 と思ったオレは上を見た。


 誰もいない。

 なのに声は続く。


 「たすけてくれ~~~なのじゃ~~~~。だれか~~~~。って余の声が、人間に聞こえるわけないのじゃ。デカい独り言になってるのじゃ~~~~~」


 え、聞こえてるんだけど。

 え、オレって人間じゃないの?

 っと思ったことは内緒にしておこう。


 「ほえ~~~~~ん。ぐえ!」


 庭園の木に何かが突き刺さった。

 

 「は? なんだ?」




 ◇


 恐る恐る声の方に近づく。


 位置を確認して、木を凝視してみると、枝に翼を絡めた薄紫の小鳥がいた。

 逆立ちしたようになって、ぶら下がっている。


 「ふえええええんんん。人間がいるのじゃ~~~。余を助けてくれなのじゃ~~~。ああ、でも、余の声、届かないのじゃ~~~~」

 

 可愛らしい目に涙が溜まっていた。

 かわいそうなので助けることにした。


 「鳥だ。綺麗な小鳥だ・・・・つうか、何で話せるの?」

 「それは余が、神鳥でじゃな・・・とっても立派な聖なる存在でじゃな・・・・え!? なんで、人間に声が聞こえてるのじゃ!」

 「いや、あんた。さっきから独り言言ってたよね」

 「うわ・・・恥ずかしいのじゃ。忘れてくれなのじゃ」

 「ああ、いいよ。で、助けた方がいいの? あんた、逆さづりの状態だけど」

 「おお。そうじゃそうじゃ。助けてくれなのじゃ~~~~」

 「いいよ。ほら」


 謎の小鳥を木から救ってやった。

 あれだけの猛烈な勢いの落下で、不思議と怪我はなさそうなので、安心した。


 「よかったな。あんた。怪我がなさそうじゃん」

 「うむ。余を傷つける奴はそうそういないのじゃ。あいつくらいじゃな。イヴァンたちくらいじゃな」

 「誰だよ。そいつ」

 「知らんのじゃ? ってなんで、そちは余の言葉が分かるのじゃ!!!」

 「いや、あんたが話してるし・・・」

 「いや。そうだけど・・・人間なのに、何故余の声が・・・」


 小鳥との会話が止まった。

 小鳥は頭痛いみたいに、翼を上手に折りたたんで自分の頭を触っていた。


 「ルル! 何を独り言を言ってるのですか。どうしました」


 縁側にやってきたルナさんが、オレに声を掛けてくれた。

 右手にしゃもじを持っている。


 「え。ルナさん! こいつの声。聞こえないんですか?」

 「こいつ? どいつ?」

 「これです、これです」


 オレは肩に乗った小鳥を見せた。


 「ああ、小鳥さんですね・・・え? 話すわけないじゃないですか」

 「ええ。どういうこと?」

 「ほら。余の声。普通の人間には聞こえないのじゃ。なぜそちには声が聞こえるのじゃ」

 「知らんよ。え。どういうこと」

 「なにしてるんですか。ルル。そろそろ晩ご飯ですよ。食べましょう」

 「あ、はい。ま、いっか」


 とオレは納得して、ルナさんの後を追いかけるために、小鳥を地面にそっと置いて手放した。

 鳥付きで、晩飯は駄目だろう。

 

 「ほれ、飛び立っていけよ。無事でいろよな。元気でな!」

 「うむ・・・って、何で手放そうとするのじゃ!!!」

 「ぶべ!」


 小鳥のキックを右の頬に食らった。

 小鳥なのに体の芯に食らうような威力である。


 「強ええ。何この小鳥」

 「小鳥じゃない! レミ、あ・・・・真名は駄目じゃな。レミさんじゃ!」

 「レミさん? 誰だよそいつ」

 「余の事じゃ!」

 「は? 名前が勝手についている小鳥って事?」

 「うむ。そうじゃ」

 「マジかよ。超レアじゃん。ってことで、そんなレアな子は危険なので、ほら、外に飛び立ちなさい」

 「なんでそうなるのじゃ!」

 「ぶげ」


 またオレは小鳥のキックを、左の頬にもろに食らった。

 両方が赤く腫れそう。


 「何すんだよ。レミさん!」

 「レミさんは、今大変なのじゃ。協力してくれじゃ、人間!」

 「何を」

 「力を取り戻したいのじゃ」

 「は? どうやって?」

 

 話を聞こうとしたら、奥の間から。


 「ルル~。どうしました。もうみんなでご飯を食べますよ」


 ルナさんからお呼びがかかった。


 「は~い。ルナさんもう少し待っててください」

 「わかりましたよ。早めに来てくださいね。ご飯冷めちゃいますよ」

 

 ということで。


 「そんじゃ、頑張ってレミさん!」

 「なんでそうなるのじゃ! 激レア体験真っ最中じゃろが」

 「そうだよ! オレだってな。この激レア体験のせいでめっちゃ頭混乱してるわ!!! あんた、オレの親父みたいに意味不明なんだよ」

 「だから、もう少し、レミさんと会話せいということじゃ!!!」

 「何回会話してもこの状況意味分からんわ。な~~んで鳥が言葉話してんのよ。オレ、頭おかしくなったか!!!」

 「おかしくないのじゃ。余が話しかけているのじゃ」

 「ああ、あんたという心の中のオレが話しかけてきてるんだな。やばいな……オレは相当疲れていたのかもしれないな。早めに風呂入って休もう」

 「そうかもなのじゃな・・・って、ちゃんと余が、余の意思で話しかけているのじゃあああああ」

 「ぶげ!」


 また小鳥に蹴られたオレであった。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ