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周りが英雄職なのに俺だけが無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
侍の里 剣聖の師は無職

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第1話 いざ、ジョー大陸へ

 ジョー大陸へ出立する日の朝。

 誰もいない学校で、皆がオレを送り出してくれた。


 「先生! 本当にいっちゃうんですか」

 「おう! ジャック、いってくるわ。メモの通りに修行しておけよ」

 「は、はい。帰りを楽しみにしてます。絶対に帰ってきてくださいね」

 「ああ。そんなに心配すんなって!」

 

 ジャックが不安そうな顔でオレに挨拶をしてきた。

 隣にいるクルスも続く。

 

 「ぼ、僕・・・寂しいです。せっかく先生とお話しできるようになったのに」

 「クルス、すぐに帰って来るぞ。安心しな。あと、そうだ。クルスの神官術はホンナー先生と師匠が協力して助けてくれるからな。オレが書いたメモは棒術だけだぞ!」

 「わ。わかりました。頑張ります」


 寂しそうな顔のクルスは静かに頑張る決心をしていた。

 覚悟が決まったいい顔をしている。


 「ルル先生……」

 「なんだ。フレデリカ?」

 「ありがとうございます。ワタクシは、あなたのおかげで大切な・・・」 


 黙っていると感謝しっぱなしになるので、オレが止める。


 「おいおい。また感謝かよ……フレデリカ、いいか! そんなに気にせんでもいいんだって、オレはお前たちの先生なんだ。だから当たり前のことをしたんだぞ。あ、あとさ。お前にはこれを! たぶん、これがフレデリカの成長のカギを握る修行だと思うんだ」

 「あ。ありがとうございますわ・・・感謝しますわ」 

 「ちょっと、感謝しまくりだな。お前。もう少し甘えていいんだぜ。子供なんだからな」


 彼女にメモを渡す。

 中身は大王のスキルについての記述をまとめ上げたものと、オレの推測を入れての修行方法である。

 彼女の力は制御の段階に入った方がいい気がしていた。

 王魂。

 あのスキルのことを知る者がいれば、彼女が大王だと確信してしまう。

 だから、出来るだけ発動は自分の意志での形が良い。


 フレデリカは、大事そうに両手で抱きしめるようにメモを持った。

 彼女の隣にいる先生が声をかけてくれる。


 「ルル君。お元気で」

 「はい。先生・・・・先生もですよ!」

 「ええ。もちろん。私は元気であなたの帰りを待ってますよ」

 「はい!」

 

 先生の後は師匠がやってきた。


 「おい。ルル。こいつをルナに渡しおいてくれ」

 「ん?」

 「手紙よりかは、メモみたいなもんだ。一応俺からもあいつを励ましてやらんとな」

 「ハハハ。相変わらず師匠。お人好しですね。世話焼きですもん」

 「お前に言われたかぁねえわ」

 

 師匠は笑っていた。

 そしてオレは大事な事を言い忘れていた。


 「ホッさん。頼みますよ」

 「うむ」

 「あなたが頼りですからね。王国だけじゃなく、青の海岸(ブルーコースト)が無くなったとしても、残党がいるかもしれない。警戒してください。あと、お嬢様は駄目ですよ。この子は、ここではフレンですからね。フレンと呼んであげないといけないですよ」

 

 フレデリカの頭に手を置いた。

 そしたらフレデリカは手を払わずに受け入れてくれた。

 もしかしてオレのことも受け入れてくれたのかと思って、彼女に微笑んだ。

 ちょっと嬉しくなったのである。


 「わかってる。今後はフレン様と呼ぼう」

 「だ、駄目じゃん・・・あんた大人なんだよ。フレン様って言ってちゃ、お嬢様と意味合いが変わらないじゃん」

 「む・・・・むずかしい・・・・」

 「しっかりしなさいよ。ジャックとクルスだって慣れてくれたんだから。あなた大人でしょ。大人の意地見せなよ」

 「か、かたじけない・・・努力する」

 「うん、じゃあ任せましたよ。では・・・オレ、いってきます。みなさん、また会いましょうね。それじゃあ!」


 こうしてオレは、恩人たちに大切な生徒を任せて、新たな旅に出た。



 ◇


 都市マーハバル。

 その西側の出口から歩いて一時間。

 飛空艇離着陸場に到着した。

 目の前には存在感のある飛空艇だ。

 首が痛くなるけど、見上げてみた。



 飛空艇は、四大陸を結ぶ重要な乗り物で、動力源が魔力である。

 供給するのはもちろん人だ。

 莫大な魔力を運用して、空を飛ぶので、供給する仕事は大変だ。

 それと、ここには決まった職業の者が、魔力を供給することになる。

 それが、『魔力動力士(マジックタンク)』と呼ばれるジョブを持つ人たちだ。

 この魔力動力士(マジックタンク)は、尋常ならざる魔力量を誇る人たちで、魔法を一切覚えることが出来ない代わりに、莫大な魔力を持つジョブとなる。

 摩訶不思議な内政職だ。

 なので、このジョブになれた人は、一人の例外も許さずに、飛空艇の運行職員に就職するのが常だ。

 大体、一つの飛空艇で10名ほどの『魔力動力士(マジックタンク)』がいて、彼らは交代制で各大陸を移動する飛空艇を運行する。


 ジーバード。ジャコウ。ジョー。ジョルバの順で運行して、世界を一年中飛び回る。


 飛空艇は、大陸間をすぐに移動できる分、魔力消費も激しいので、一つ大陸を移動する度に職員の方の休憩が必要となり、大体一週間ほど、その大陸に滞在する。

 その間に飛空艇はホテルのようになり、その大陸の人が乗り込むための時間を生み出すというわけだ。

 

 飛空艇の運行職員は、とても大変な職業だけど、とても人気なお仕事でもある。

 だから、神からこの魔力動力士(マジックタンク)を提示された人は、泣いて喜ぶのだそうだ。

 なんせこの仕事、話に聞くにめっちゃ給料がいいのだ。

 オレは、とある人と知り合って、いくら稼げるのかは詳しく教えてくれなかったが、数年働けばジジイになるまで遊んで暮らせるくらいに稼ぐことが出来るらしい。

 素晴らしい職業である。

 間違えた・・・羨ましい職業である。



 「でけえな。相変わらずさ・・・これは、シャルテ号か・・・」


 飛空艇は二隻ある。

 シャルテ号とヴィセンテ号である。

 由来はヴィセンテさんが飛空艇の発明者であることと、そのヴィセンテさんが飼っていたお気に入りの鳥の名前がシャルテであったからという、かなり単純な命名をしていた。


 一隻の飛空艇が、ジャコウにある場合は、もう一隻は正反対の大陸のジョルバに置かれ、常に人が大移動できるようになっている。

 結構きめ細かい配慮がなされて飛空艇は運用されている。



 オレは入口で8万Gを支払い、飛空艇の中に入った。

 チケットは、今日出立の即日チケットというものなので少々お安めで、お泊り付きのチケットだともっとする値段なのだ。

 大体二倍以上支払う人もいる。

 金持ちってすげえなと何度も思ってしまうわけだ。

 さっき、オレの目の前の人が出したチケットは30万だった。

 ジョルバまで行くらしい。

 『たけええええええ』

 と思ったことは内緒にしよう。


 そして、オレがここで値段交渉しないのは、チケット売り場の人が大商人のジョブ持ちしかいないからだ。

 大商人のジョブを持っている人に、オレ程度の取引は効かない。

 さすがは、格上の交渉術を持つ人たちだ。

 本当は安くしたいのにさ。


 「ああ。オレも大商人欲しいな・・・・チケット安くしてぇ」


 何て守銭奴みたいなことを言いながら、飛空艇の大ホールに向かった。

 全面ガラス張りの大ホールは、空を飛べば、自分が飛んでいるように感じる。

 何度かこの体験をしているオレは、それを楽しみに出発を待った。

 


 ◇


 飛空艇が浮き上がる時。

 独特な音が鳴る。

 風を切り裂くようなシューという高音が鳴るのだ。

 その音が地面とぶつかると、飛空艇離着陸場の上にある軽い砂が吹き飛ぶ。

 薄茶の砂煙が巻き起こり、飛空艇は空を飛び出すのだ。


 「おお! 相変わらず、すげえ速度だ!!!」


 一度浮くとそこからは一瞬で、あっという間に空を飛ぶ。


 ◇

 

 飛空艇は、空を自由に飛び回る鳥のように風を切り裂いて前へ進む。

 オレの身体は今、自由になった。

 なんて、思いながら大ホールでは感じられない風を、想像で感じた。

 しばらくして、それに飽きたオレはルナさん奪還計画を確認する。


 「えっと・・・まずは、ジョー大陸の中央。王都サーカンドに寄って、そこからルナさんの故郷はというと」

 

 ルナさんの故郷。

 侍の里『サクラノ』

 王都サーカンドの北の出入り口以外を囲うサーカンド山脈の奥地にある秘境で、そこは秘境らしく、よそ者立ち入り厳禁の里らしい。

 

 「ルナって名前を言えば、きっと入れるだろうって師匠は言っていたけど。ほんとか? 里は立ち入り厳禁って、昔ルナさんが言ってた気がするんだけど、本当に大丈夫なの??」


 先行き不安のままサーカンドの北西にある飛空艇離着陸場に到着した。


 ◇


 飛空艇から降りると空気感が少し違う。

 風は西から東へ、一定方向に吹いていて更に冷たい。

 さすがは風の大陸『ジョー大陸』である。

 この風が止むことがないのだ。


 「さむ! ヘックション!!!」


 実は四大陸は各々特徴がある。

 ジャコウ大陸―――水の大陸。

 ジョー大陸――――風の大陸。

 ジョルバ大陸―――火の大陸。

 ジーバード大陸――土の大陸。

 四つの大陸はそれぞれ別な特徴を持つからこそ、独自の発展をしているのである。

 それにこの四大陸の特徴を最も受けたのが、かの四大ダンジョンだ。


 オレたちジェンテミュールが制覇したのが。

 ジャコウ大陸の海底ダンジョン『マリンリアス』

 ジーバード大陸の迷宮ダンジョン『バイスピラミッド』である。


 水と土をクリアしたジェンテミュールは次にどこに挑戦するつもりだったんだろう。

 レオンたちは今はどこだろうか。

 もしかしたら、ジョー大陸の塔ダンジョン『ガルズタワー』かもしれない。

 地面から斜めに伸びた塔のテッペンを目指すダンジョンだ。

 あいつら、方向感覚を掴めるかな・・・。

 

 なんて、オレはレオンたちの事を久しぶりに考えながら、ひとまず王都サーカンドへと移動を開始したのだった。

  


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