第35話 次の為に、修行再び!
二人が眠ってから少し時間が経ち。
師匠とオレの二人きりになった。
「お前、まだ体が上手く動かないだろ。俺には分かるぞ」
「ははは。バレましたか。さすがに立ったり座ったりの動きは、無理がありますね」
「そうだろ。ガキどもに心配させまいと無理しやがって。アホ弟子」
「師匠だって、同じ立場ならば、ああいう風にしますでしょ。だからオレは、師匠がやってくれたことをこいつらにやってあげているだけですよ」
「ふん! そう思ってろ。俺は、お前みたいな甘々な師匠じゃないわ」
「ははは。照れてる!」
「うっさい!」
からかったら、師匠は頭にチョップしてきた。
ゴチンっとぶっ刺さって、頭が砕け散るかと思った。
「いで! さっき、オレの体の心配したじゃないですか。叩くことないでしょ!」
「いいんだよ。俺は師匠だからな」
師匠は照れると少し暴力的である。
「お前、その体を癒したら・・・」
「はい。ルナさんのところに行こうかと思います」
「やっぱな・・・そうするよな・・・お前なら・・・・」
師匠はしばらく沈黙した。
だから、オレは少し違う話題を振った。
「そうだ。あいつら、青の海岸でしたよね」
「おう。そうだったぞ」
「やはり。そういえば、ホッさんはどうなりましたか?」
「そうだな。説明してなかったな」
師匠はオレにあの後の流れを教えてくれた。
敵アジトは青の海岸の本拠地だったらしい。
オレと同時に入口に突撃を仕掛けたホッさんは、そのあと一人で進軍して、敵をほぼ全滅させた。
そして彼の後に続いた小隊が、倒された者たちを拘束しながら制圧して、完全勝利となった。
そこで、次に師匠たちはそいつらに拷問を仕掛けたようで、情報を聞き出してくれていた。
彼らがフレデリカを狙った理由は、単純な誘拐で、身代金が目的だったらしい。
青の海岸の運営資金に充てるはずだったそう。
この大陸って、裕福な人間が少ないから、こいつらが集まっても、かなり貧乏だったらしい。
狙うターゲットが少ないから貧乏って、裏の世界の人間たちなのに、なんだか悲しい懐事情だった。
「それじゃあ、師匠。アミナ。ゲルデュス。これらの名は聞いてません?」
「ああ。アミナは分かる」
アミナは分かるのか!
「そいつ、役職ありましたか?」
「ああ。リーダーらしい。下っ端どもがそう言っていた」
「やはり、リーダーだったか。あの野郎。あんな感じでか」
「でもよ。ゲルデュスが分からん。そんな奴の名前は出て来なかったわ」
「そうでしたか」
でも、あのゲルデュスの感じは・・・仲間だった。
それも対等な感じがしたな。
たしか、ヴィランとかいうのが上の立場そうな言い回しをしていたな。
ヴィラン様の話を聞いていなかったか。
こう言っていたはずだ。
そいつが、あの二人に命令をしていたんだ。
つうことは、青の海岸のリーダーと対等な奴が居て、しかもその二人の上にも誰かがいるって感じだ。
これは、かなり厄介な気がする。
裏ギルドに縦社会があるのか。
新興勢力だけど、その上にもある組織って、まさかな。
古株の赤の庭園か?
いやそこよりも上か?
色々考えてもよく分からないから、オレは師匠にこの予想を話してみた。
オレは、一人で抱えるのを辞めたから、何でも相談することに決めている。
「その予想な・・・ああ、俺は核心をついている気がするな。ルル。気をつけておく。俺の方でも情報を調べておくぜ」
「ありがとうございます。軍の調査力が加わると助かりますね」
「ああ。ついでにギルドにも知らせておくわ。全方面から敵を探し出しておこう。青の海岸は解散だろうが、そいつらが不安だもんな」
「はい!」
ぶっきらぼうで、一見優しそうじゃない師匠は、実はとてもマメな人です。
しばらく談笑した後。
「そんで、お前、回復次第で行くんだったな。どんくらいで回復するんだ?」
「そうですね。この感じだと、あと一週間くらいですかね」
「そうか。すぐ行くか?」
「いいえ。一か月後に行きます。体がなまってるだろうから、冒険者ギルドで討伐クエストを受けて、リハビリしてからですね。ついでにお金も貯めて、失礼のないような形でルナさんを迎えに行きますよ」
「そうか・・・そうだな。悪いな。ルナを頼むわ」
「ええ。任せてください。パンケーキも食べさせてあげたいんで、修行してきます」
「????」
オレが言った事を理解できなかった師匠は、キョトンとした顔をした。
当然だ。
パンケーキと修行が結び付かないのだろう。
うんうん。
オレも師匠の立場だったら意味不明だと思う。
でもこれは、結び付くんだよね。
◇
翌日からオレは、スキル『応急手当』を駆使して、徐々に体を回復させていった。
回復を早める判断を取っていた。
静かに師匠の部屋で待機していると、子供らは、よほどオレの事を心配しているのか。
授業に区切りが出来る度に、オレの所に来ていた。
日曜学校から、軍の屯所は、正反対の位置にあるというのに、無理してでも走って来ていた。
まあ、こいつらの体力作りに一役買っていると思って、あまり咎めないようにした。
笑顔の子供たちは可愛いと思う。
オレって、子供好きだったのか?
シエナも可愛いと思ったもんな。
妹とか弟がいないから、そこら辺の感情に疎かった事を知った。
◇
そして、体力が回復しきってからは、フレデリカたちの実践訓練を手伝って、空き時間にはなったら、冒険者クエストをこなしつつ、お金を稼いでのリハビリをした。
順調に日々をこなしていく中で、この期間で最もやり遂げたい。
最大の修行を行った。
それが、マーハバルの都市の商店街通りの一角にある。
『ハンドール』というお店での修行だ。
他のコックよりも、頭三個分長い帽子を被っている料理人ギンドールさんに、オレは自分が作った料理を持って聞いた。
「すみません。こんな感じですかね? どうです」
ギンドールさんは優しく微笑んでくれた。
「お! ルルロア君。君は筋がいいね。もう、ここで働いちゃいなよ!」
勧誘された。でも、十中八九お世辞だろう。
ギンドールさん優しいから。
「ほんとですか。嬉しいですね。ギンドールさんに、そこまで褒められちゃったら、お世辞でも嬉しいですよ。ここで働けなんてね」
「いや、お世辞じゃないんだけどな・・・」
オレって実はすでにスキル『料理』を持っている。
料理人の初期スキルだ。
これもだけど、いつもながらのアルバイト生活で培ったスキルである。
だから子供の頃から持っているんだ。
当然、オレは希望の星のご飯も作って来たのだ。
勘の良い人ならばわかるだろうが、オレが今持っているのはこれだ!
「うん! 焼き目にさ。フワフワの食感も。バッチリだよ! これなら、うちのお店に出してもいいくらいだよ」
「本当ですか。いや、褒め上手っすね」
「うんうん。違うんだけどね」
何が違うんだろうか。
ギンドールさんは、褒めちぎってくれてるってことか?
「・・・それにしてもルル君。なんで作り方を勉強してるの?」
「いや、食べさせてあげたい人がいるんですよ」
「お! 恋人かな」
「いえいえ。恩人です。オレの剣の師匠と言ってもいい人です」
「ほほう。師匠・・・女性なの?」
「ええ。いつもパンケーキを食べたいって、上司に言ってる人なんですけど、その上司は必ずおにぎりをその人に奢るんですよね。だからオレが直接食べさせてあげようかと」
「え? パンケーキとおにぎりって・・・・全然違う食べ物じゃない?」
「そうですよね。酷い上司ですよね。ははは」
「そうだね。はははは」
オレは、ギンドールさんと共に師匠の酷さを笑った。
こうしてオレは、この一カ月でパンケーキをマスターしたのである。
これで、ルナさんに食べさせてあげられる。
どうせ、ルナさんの里には、パンケーキがないだろうから、ちょうどいいと思ったのだ。
これで、オレの次の目標が決まった。
ジョー大陸に行き、ルナさんを連れ帰ってくることである。
困っているだろうから、彼女の問題も解決してこよう。




