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周りが英雄職なのに俺だけが無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
無職の再出発 大王の先生編

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第26話 二つの事件

 ジェンテミュールを辞めて、早一年が経過。

 成し遂げたい目標を失った事で、生きる力を失い。

 酒でも飲んで自暴自棄にでもなるかと思われたが。

 オレはそんな風にはならなかった。


 充実している。毎日を楽しく過ごしている。

 目標が駄目になっても、また新たなものを見つけて、明るい道を歩めていた。


 今のオレは、ほとんどの時間をフレデリカたちの指導に当てている。

 日々。成長していく彼らを見ていると、なんだかオレの心にあった喪失感が消えていく気がした。

 彼らのおかげでオレの心は、充実感で一杯になったようだ。


 それに、どうやらオレは、新たなる英雄の誕生を手助けするのが、自分の歩むべき人生なのかもしれないと思った。

 俺自身はただの無職なのに、オレのそばにいる人間たちは、皆、英雄職を持つ者なんだ。

 英雄誕生のきっかけを作る男に、オレはなっていくみたいだ。

 


 大王。

 

 専門職『王』を超えし力を持つ者。

 王国のお姫様フレデリカは、いまだにその才覚の全てを発現させてはいない。

 しかし、力の片鱗はたまに出る。

 腹から声を出した時などに、王魂が現れる時があるんだ。

 今後は少しずつだけど制御した方がいいかもしれない。

 たぶんその制御方法を学ぶのが、かなり難しいだろう。

 参考になるような技をオレも持っていないから、アドバイスのしようもない。

 彼女自身が、制御していかないといけないんだ。 

 だからこそ、今すぐに焦って矯正する必要もないと思う。

 ゆっくり少しずつ制御できるようになった方がいいと思うんだ。

 

 なんせ、彼女はやっと今の生活に慣れてきているみたいなんだ。

 オレと出会ったばかりの頃の寂しげな表情は、今はしていなくて、彼女は人に対する警戒心も薄れていっている気がする。

 表情も柔らかいものになってきているんだ。

 段々とオレにも少しずつ慣れてきているから、ここで無理をさせなくてもいいと思うんだ。

 今の段階だと、この三人が笑顔でいればいいと思っているからさ。



 ◇


 オレは、師匠から呼び出しをくらった。

 彼女らの課外授業をホッさんに託して、師匠の元へ向かった。

 指令室に入ると、すぐにいつもの紅茶を頂いて会話が始まる。


 「師匠、何の用でしょうか?」

 「ルル。今、暇か?」

 「暇ではないですね。毎日、あの子たちに指導してますよ。楽しんでます」

 「そうか。それはよかったな。そうか・・・手が空いたりはせんか。俺が出向くわけにも行かんし、ああ、困ったな」

 「ん? 師匠。何かお困りなんですか?」

 「まあな。少しな」


 師匠の顔色が少々悪い。

 普段は悠々とした顔をしているのに、何かを心配している様子だった。


 「オレが手伝えることなら何でもやりますよ」

 「いや、今は忙しいんだろ。ルルには、ルルの人生があるんだ。俺の用事で旅してもらうわけには行かんからな」


 そんな遠慮なんてしなくていいのに・・・水臭い。


 「ん? 旅!?・・・師匠、お話だけでも聞かせてくださいよ」

 「お前なぁ。はぁ。お前はお人好しだから、これ見ちまったら、『行く』って、絶対に言うからな。やっぱ駄目だわ」


 師匠は胸ポケットからピンクの封筒を取り出して、見せないと言った。

 そこまで出しておいて、お預けですか!

 気になるので見せてください。


 「まさかぁ。そんな、馬鹿じゃありませんから、大丈夫ですよ」

 「なら、絶対に第一声で言うなよ。見せるからな。言うなよ!」


 師匠に念を押されながら、オレがこの手紙を数秒で読み、第一声は。


 「いきます!」

 「ほらな。お人好しめ。だから念を押したのによ。まったく、アホ弟子。そいつは無視していいんだよ」

 「無理ですよ。こんな手紙を読んだらいかないと駄目じゃないですか」


 手紙はルナさんからの手紙だった。

 切実な文章。

 切迫した状況がこの文字から伝わってきて、オレは彼女が心配になったのだ。



―――――


 グンナーさんへ。

 

 グンナーさん。お体の調子はどうでしょうか。

 ご壮健であれば幸いであります。

 グンナーさんや軍の仲間たちと会えなくなって二年程。

 寂しさ募る毎日を過ごしていますが、私は元気であります。

 ご心配なさらずに。

 皆様の無事をここより願っておりますです。はい。

 それではまた会える日まで・・・・。



 PS

 グンナーさんんんんんんん。

 拙者、みんなの元に帰りたくとも帰れないんですよおおおおおお。

 パンケーキ食べたい。

 あ、でももう、この際、グンナーさんが奢ってくれるおにぎりでもいいや。

 帰りたいいいいいいいいいいいいいいいいいい。

 だずげで

 里から出られないいいいいいいいい。

 お願いします。拙者、一生のお願い。

 なんでも言う事聞きますから。

 おにぎりでもいいですから。

 グンナーさんの所に帰りたいいいいい。

 グンナーさんが来てくれれば、きっと帰れるんですよおおおおおおおお。

 たじゅげて~~~~~。

 何か策をくださいいいいい。軍師でしょおおおおおおお。

 たのみまずぅううううううう。

 今を打開するための策がほしいんでずううううううううう。



―――――


 と盛大にPSの方に本心が書かれていた。

 文字しかない手紙なのに、なぜか彼女の顔と声付きで再生ができる不思議な手紙であった。 

 


 「まあな。でもお前も忙しいだろ。で、俺も忙しい。なにせ俺は、軍の司令官なんだぞ。そんな俺がな。一個人を迎えに行けるわけないだろ? ルナも馬鹿だよな」

 「・・・まあ、そうでしょうけど。ルナさんも寂しいでしょ」

 「ああ。でもな。ここ最近、裏ギルドどもが動いていてな」

 「え? どこの団体ですか」


 裏ギルドの団体名が気になった。


 裏ギルド。

 通称闇の組織。

 それは冒険者ギルドのような組織を裏で結成していて、秘密裏に各大陸で犯罪する厄介な連中の事だ。


 現在の裏ギルドの主なものは。

 赤の庭園(レッドガーデン)

 黄色の砂塵(イエローダスト)

 緑の竜巻(グリーントルネード)

 である。

 


 「青の海岸(ブルーコースト)だな」


 オレは、師匠が教えてくれた団体の名称を聞いた事がなかった。


 「それ、何の団体ですか?」

 「最近できた裏の連中らしい。俺たちの大陸を中心に活動する海賊みたいな連中だな。主に人攫いで金を稼いでる。人質にしたり、売ったりな」

 「そうですか。赤の庭園(レッドガーデン)じゃないんですね」

 「ああ。あれらが、この大陸で金を稼ぐわけないだろ。それにそいつらは超有名な裏ギルドじゃないか」

 「まあ、そうですね。奴らじゃなきゃ、軍でも大丈夫でしょう」

 「ん? お前、赤の庭園(レッドガーデン)となんかあったのか?」

 「少しありましたね」


 

 ジェンテミュールに所属していた時。

 ジョルバ大陸の南西のハイスロ山の戦いにて赤の庭園(レッドガーデン)と戦った。

 

 オレと英雄職の四人とその他のギルドから派遣された特級、準特級の冒険者連合軍で戦ったのだ。

 赤の庭園(レッドガーデン)との戦いは死闘だった。

 数十時間にわたる激闘の末に、相手のアジトを叩き潰すことには成功したが、残党がまだいる。

 だから、最近になって、また活動を再開したのかと思ったが、師匠が言うには別の団体のようで、まさかこの大陸でも裏ギルドの活動をする団体ができるとは思わず、少々驚いた。

 貴族がいない大陸では稼ぎが少ないだろうし、ここの様な平和な大陸では、活動もしにくいだろう。

  

 「そうか。まあそれはいいとして。こっちの青の海岸(ブルーコースト)は、俺たちもニ、三回戦ったことがあるんだ。まあ、この軍の実力でも対抗出来たし、まだ実力的にはこちらが上だから、大丈夫だと思うけどな」


 軍で戦えるのなら、基本が二級までの強さの団体だな。


 「そうですか。というと冒険者でいう準一級程度がマックスですね」 

 「まあ、そうなるな。だから、ホイマンがいれば、余裕で守れるだろ?」

 「そうですね。ホッさんはオレと同じくらい。準特級くらいの実力者ですからね」

 「ああ。だから、あん時に仲間にしておいてよかったな。ルルも安心だろ?」

 「ええ、三人の安全に関しては安心ですね。安全に関しては・・・・ですね」


 ホッさんは、警護は完璧だけど、その他がヤバい気がする。

 実は、あの人って過剰にフレデリカを守ろうとする節がある。

 子供たちの喧嘩にも介入しようとするし、彼女の買い物の時の店員の態度が悪いと文句を言いそうになるし、いつも相手につっかかろうとして、逆に大変な時があるんだ。

 もう少しだけ、彼らを自由に成長させてあげたいのに、過保護な親みたいになってしまっている。


 「はあ。ですね。そこのところは、ホンナー先生がいれば大丈夫か」

 「兄貴?」

 「ええ、そうだな。ちょっとルナさんの所に行ってみますよ。あいつらは、先生とホッさんに任せれば安全でしょうからね。迎えに行きます」

 「ん? いやいや、いくらなんでもルナの我儘に付き合わせるなんてな。お前に悪いわ」

 「いえいえ。オレもちょうどルナさんに会いたかったですし、そっちに行っても、そんなに長くはならないでしょうからね。オレが行ってきますよ。場所を教えてくれればすぐに行って・・・んん?」

 「お。なんだ。騒いでんな」


 指令室の周りがやけに騒がしかった。

 大声での言い合いが続いているようなので、オレと師匠が外に出る。

 すると、慌てているホッさんがいて、そこを数人が抑え込んでいた。


 「待ちなさい。今。司令はお話し中で」


 ホッさんの前で両手を出した女性が言った。


 「いいのだ。緊急である」

 「止まれよ。ここは軍だぞ」


 ホッさんを抑え込んでいる右の男性が言った。


 「大丈夫だ。私も特別な任務をここでもらっている」

 「知らねぇよ。あんたみたいなおっさんはさ」


 ホッさんを抑え込む左の男性がピシャリと言い切った。

 もつれるようにして前に進むホッさん。

 それを見た師匠が。


 「お前たち、いい。その人を俺の部屋に」

 

 と言って、事態を丸く収めた。


 

 部屋に入って早々にホッさんが土下座した。

 

 「す、すまぬ。お二人とも。き、緊急である。ふ、フレデリカ様が・・」


 呼吸が苦しくなりそうなくらいにホッさんは息を吸わずに吐き出し続けていた。


 「いなくなったのだ! 攫われてしまった!」

 「「は!?」」


 突如として、二つの事件が幕を開けた。

 一つは、ルナさんの嘆願。

 もう一つは、フレデリカの失踪である。

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