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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
無職の再出発 大王の先生編

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第11話 ルルとグンナーと時々ルナ

 モンスターウエーブ終了後。


 「おい。ルル! 大丈夫か。一日中眠ってんだぞ。お~い」

 「・・・し、師匠!?」

 

 丸一日経ってから、オレは目覚めたらしい。

 師匠に軽く頬を叩かれてから目覚める。

 それで、体を起こした瞬間には、激しい頭痛に見舞われた。

 ついでに、目もおかしくて、ぐにゃと曲がったように見えた。


 「ぐ、これは。厳しいですね」

 「お前、そいつは魔力切れ状態か? それともスキルの使い過ぎか? どっちだ?」 

 「そうですね。両方な感じがしますね」

 「そうか。まあ無事だからいいが。それにしても、ルル。いつの間に魔法なんて覚えたんだ?」

 「はい。冒険者になってから覚えました!」

 「そうか。軍にいた時はな。魔法なんて出来なかったもんな。すげえなお前」


 目が徐々に慣れてくると、周りが見えた。

 たぶんここは、天幕だ。


 それに周りに兵士さんがいるので、オレはグンナーさんの兵士さんたちによって介抱されていたらしい。

 辺りには水分補給のためのコップや、顔とか体を拭くための洗面器類が置いてあった。

 たった二年くらいしか一緒じゃなかったのに、みんな、オレのことを仲間の一人だと思ってくれているようで嬉しかった。

 

 「にしても、あの魔法。異常だな。おまえ、初級クラスで覚える技とかスキルしか、自分の中に昇華出来ないんじゃなかったか? あれだと、最高クラスの魔法じゃないか?」

 「あれはですね。ただの初級の魔法ですよ。ただのサンダーです」

 「は? ありえんだろ。あの威力だぞ」


 魔法が進化した原因を説明すると師匠は呆れ顔になっていく。


 「師匠。オレって職人気質があるじゃないですか」

 「ああ。あるな」

 「それを使って、大賢者ミヒャルのスキルを使用するんです。初期魔法のサンダーが、あれになって撃てるんです。ただし、一発のみですよ。一気に魔力切れを起こしますからね。それにスキルオーバーの状態にもなるみたいですね。普通の魔法使いのスキルを真似たんであれば、あんなことになりませんが。あの巨大なオクトパスキラーを倒すには最大火力を生まないと倒せないですから全力を出しました。具合が悪くなったのは・・・こればかりはしょうがないですね」


 という説明をし終えると、師匠は疲れた顔をした。


 「そ、そうか・・おまえ、馬鹿みたいに強くなったな。俺が師匠であるのが恥ずかしいくらいだわ」

 「なにをいってるんですか。師匠。オレは生涯あなたの弟子でいますよ。破門されない限りね」 

 「ふん! 嬉しいことを言ってくれる弟子だ。ばかやろう!」

 

 と言葉は悪いけど、師匠は満面の笑みでオレの頭を撫でた。

 くしゃくしゃになったオレの髪も、嬉しそうだ。


 「そんで、何でここに来たんだ?」

 「それが・・・」


 今までの経緯を詳しく師匠に伝えると。


 「そうか。それなら、レオンたちが心配だな・・・あいつら、大丈夫か?」


 師匠も先生とお袋と同じようなことを言った。

 あっちの方が心配になるらしい。

 それに師匠は、オレがあいつらの中和剤。オレがあいつらの潤滑油。

 そんなことを言っていた。



 「ま、あいつらを心配してもしょうがないか。そんで、ここの目的の一つが、ルナもか?」

 「はい。そうです。それでいますか? ルナさん? 見かけてないんですけど」


 ルナさんがいないのは分かる。

 オレが倒れていると分かったら、ここに来てくれるからだ。


 「いない。あいつは一年くらい前に地元に帰ったんだ。なんでも家の事情で帰らねばならんとのことだ」

 「そうですか。こちらにいないんですか。残念」

 「ああ。あいつ。最後さ」



 ◇



 師匠が別れのワンシーンを再現してくれた。

 師匠が軍の施設の出入り口で彼女を見送った時のことである。

 彼女は、師匠の方に急に振り返って、嬉しそうに言って来たそうだ。


 「グンナーさん! パンケーキ!!!! 絶対奢ってください! だからここに帰ってきます!!!! 絶対に拙者、ここに帰ってきますからね!!!」

 「はいよ」


 師匠は右手を軽く上げて答えたそうだ。


 「返事が軽いです!!! そこはお前を待ってるぞ! でしょ!!!」

 「ああ。待ってるぞ」


 ここも軽く返事をしていたみたいだ。


 「棒読みだ!!! ああ。いやです~~~~。おうちにかえりたくな~~~い」

 「おい。ルナよ。家の事情ですから仕方ありませんって言ってたじゃないか。さっさと用を済ませて帰って来いよ」


 師匠にしては優しい言い方だった。


 「うわああああああんんんんん。グンナーさんが優しいのが怖いいいいいいいいい」

 「おい。なんだよ。どれがいいんだよ。そっけないのがいいのか。それとも優しいのがいいのか。どっちかにしろよ。ルナ!」


 こういう所が、師匠のデリカシーの無さだ。


 「優しいのがいいです!!!」

 「じゃあ、さっきので良いじゃねえか」


 この部分も酷い。


 「ああもういいです。グンナーさん。じゃあもうおにぎりでもいいですよ」

 「そうか! それならもちろんだ! バッチリまかせとけ!!!」


 元気一杯に答えたのだそう。


 「何でそっちでは張り切るんですか!! 結局パンケーキを食べさせる気がないんだぁあああ。うわああああんんんん」


 と、激しく泣いて別れたのだそう。

 まるで子供のようだったと師匠が笑っていた。

 


 ◇


 「ルナさんのその時の顔と言葉が目に浮かびますね・・・師匠、まだルナさんにパンケーキを食べさせてないんですか」

 「そうだな・・・俺さ、パンケーキの美味しい店を知らんのよ。なあ、ルル。奢る時ってさ。美味しい物じゃないと奢れないじゃないか」

 「え、師匠。ルナさんに奢らない理由って、そういうことだったんですか・・・だったら素直にルナさんにそう伝えればいいじゃないですか」

 「言えるか。俺は上司だぞ。美味しい店しか紹介できん!」

 「ああ。だから、奢る時のお店が、おにぎりの店とかラーメンの店なんですね」

 「そうだ!!! あれらが美味しい! 他は知らん」

 「それって自分の食べたいものばかりじゃ・・・はぁ、ルナさんが可哀そうだ」



 師匠はお店を知らないという理由で、ルナさんにパンケーキを食べさせていないだけだった。

 だったら下調べすればいいじゃんって喉まで出掛かったが、腹の底に沈めた。

 たぶん、そんな事言ったらカンカンに怒り出しそうであるからだ。



 「そうだ。ルナさんって、実家はどこなんですか? 一年も帰ってこないって、結構遠いんですかね?」

 「ああ。あいつはジョー大陸の出だ。だからしばらくは帰ってこれないかもな。あいつ、ジョー大陸にある侍の里の一員であるんだよ。実はあいつの特殊な技ってな。あそこで学んでいるからなんだぜ。今回、何の用で帰ったのかは詳しくは知らんが、まあ、いつかは帰ってくんだろ。あそこにはパンケーキがないだろうしな」

 「そうだとしたら、必ず帰ってきますね。うんうん」

 

 ジョー大陸。

 世界の中央東に位置する大陸。

 ジャコウの北に位置する大陸でもあるので、比較的近い存在の大陸である。


 「そんで、ルルはこの後はどうするんだ? 俺に会って一つ。目的は果たしているだろ?」

 「あ、はい。そうですね。あ、そういえば先生が手伝ってほしいことがあるって言ってましたね。私の元に帰ってきてくださいと」

 「おお。そうか。兄貴がか・・・」


 師匠は先生のことで何か一つ思いついたらしい。 

 フムフムと言ってしばらく黙った。



 「あ、もしや。あいつらのことを頼むのか。いやぁ。まあ。また兄貴も難儀なことをな。ルルに任せるのか。でもまあ、いい気分転換になるのか。兄貴なら上手くやるか」

 「ん? どうしました。師匠? 何か知ってるんですか?」

 

 師匠は意味ありげな独り言を言っていた。


 「ああ。別に気にすんな。たぶん兄貴のは緊急じゃないからよ。しばらく俺たちといないか。一週間くらいさ。ここでキャンプを張り、モンスターウエーブが終わったかを確認してから俺たちは帰ろうと思うんだ。だからお前も一緒に帰ろうぜ」

 「・・・それ、いいですね。オレも皆さんと久しぶりにゆっくりしたいですし。それに。この頭痛を取らないと」 

 「そうか。じゃあよ。その頭痛がよくなったら皆の前に顔を出してくれ。でも今は寝てろよな。安静にしとけよ」

 「はい。そうします」


 それから師匠はオレの天幕から出て外で指揮を取っていた。

 残党のようなモンスターたちはすでに一掃しており、波はあれから来ていない。

 オクトパスミラーを撃破したからこその事の顛末だった。

 我ながら良く戦い抜いたと思ったのが今回のモンスターウエーブとなった。


 


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