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周りが英雄職なのに俺だけが無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
英雄職の終焉 新たな英雄たちへ

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第6話 王の友 大王の従者 

 「ルクスさんは!?」

 「急ぎましょう。王!」

 「クルス。でも」

 「いいんです。ルクスさんは強いんですよ。なんて言ったって、ルル先生のお父さんです」


 置いていったルクスを心配したフレデリカ。

 従者のジャックが、彼女を諫める。

 

 「フレデリカ様。ここは皆が役割を全うせねば! 解除が優先です」

 「そ。そうですね。そうです。ワタクシは、自分が出来る事を・・・精一杯」

 

 大王は、魔了の解除が優先。

 それが任務でもあるのだ。

 何が起きても第一優先が解除。

 なぜなら、それがとある合図になるからだ。


 「ジャック。クルス。護衛を頼みます」

 「「はい」」 

 「エラルさん、ヨルガさん。案内お願いします」

 「おう」「ええ」

 

 五人となってしまったが、任務はまだ続く。



 ◇

 

 フレデリカたちが地下道から飛び出す。

 街の中心部にやや近い北東の位置に出たみたいだ。

 地図で確認して、大体合っている。

 敵が近くにいるかと、皆が首を振り確認する中、先頭の二人が会話する。


 「ヨルガ。光は!」

 「大丈夫です。道は輝いています。それより、私たちの姿は消えていますか」

 「今、消したわ。すぐに行けるぞ」

 

 神隠しの発動。

 ここまで来たら、飛空艇を隠す意味がないので、ここで人間を隠す。


 「ならば、進みます」


 ヨルガが見るフレデリカの天運の光を頼りに、エラルの騙しのスキルを頼りに、一行は目的地に進む。


 誰にも見られていない中で、街中を走る。

 辺りの人々に生気が感じられない。

 フレデリカが呟く。


 「おかしいです。これじゃあ・・・・」

 「そうですね。フレデリカ様。操られているのでしょう」

 

 ジャックが答えた。


 「はい。これは魔了の影響下でしょうか」

 「おそらく、そうでしょう。姉さんたちがこうならなくてよかった」


 クルスが答えた。


 「体と心が離れているように感じますが、微妙に意識がありそうですね。だから厄介ですね。このスキルは」

 

 魔了。

 人々を操るスキル。

 魔王の言いなりになってしまうタイプと、なんとなく意識を誘導されるタイプに別れる。

 大衆はどちらかと言うと後者でまとまっており、言いなりになっているのは軍関係者だ。

 

 昔いたノワクルーラがその操られ方をしていた。

 彼らは、各カラーの荒くれ者だったのだが、徐々にノワクルーラとしての活動を受け入れる形となっていた。

 知らず知らずの内に人をコントロールする力、それが魔了だ。

 前回の魔王もこれで、大王を追い込んだ。


 「人々の心を徐々に変える・・・こんなムカつく事。ルルに見せないで良かったな」


 エラルは察していた。

 ルルロアがこの現状を見たら、気が狂うほど怒るだろう。

 自由を奪う。

 それが彼の怒りの引き金になるのは間違いない。


 「そうですね。彼ならば、許さないでしょう。人の心を踏みにじるなってね」


 ヨルガもルルロアの心情を察した。


 「ああ。どれだけ怒るかな。あいつが本気でキレた所。見た事がないからな」


 二人の慎重なルート選択で、街の中心部まで無傷で辿り着けたのだ。



 ◇


 街の中心部の噴水前。


 「ここですね。この都市の中心は」

 「そうです。大王」

 

 ヨルガが答えた。

 

 「はい。ではさっそく魔了を解除しましょう。大王のスキル『千差万民』をします。エラルさん。ワタクシたちの分だけのスキル解除を」

 「了解だ。神隠し解除!」


 指を鳴らすと姿が表に現れる。


 「今から魔法陣の準備をします。時間をください。ジャック。クルス。二人はワタクシの護衛を。エラルさん、ヨルガさん。お二人は離れて。おそらく敵がここに来ます。ここから危険となりますから」

 「「「「了解」」」」

 

 フレデリカが杖を持った。

 大王のスキルを増幅させるために、魔法陣を展開する。

 杖の先を使い、魔力を込めながら描いていく。


 「こ。これを・・・こうして・・・」

 

 フレデリカは、ルルロアとウルダーナの指導で、魔力結界を学んでいた。

 スキル増幅の結界で、魔王のスキルを解除する。

 実は、魔了を増幅させていると言われている何らかの装置が、この都市にはあるとされているのだ。

 しかし、それを発見する機会も時間もないとしたルルロアはその装置があろうとも、関係ない作戦を作った。

 それが、フレデリカのスキル自体が、その増幅された魔了を上回ればいいとする。

 単純明快な考えを軸にした作戦である。


 「ルル先生の教えでは・・・こちらを重くして」


 魔法陣を書く作業。

 魔法陣を展開する作業。

 こちらに時間が掛かってしまう。

 だから・・・。


 「気付かれた。やはり・・・・」


 フレデリカは上空を見上げた。

 曇り空の中で、一人、空を飛ぶ女性がいた。


 「ジャック。クルス。お願いします」

 「「はい!」」

 

 展開の間の勝負。

 それが、ジャックとクルスの役割だった。



 ◇


 「大王が! なぜここに!」


 何やら怪しい雰囲気を感じたので、リリスが空から登場した。

 魔法陣の展開による魔力の乱れをいち早く知ったのだ。

 

 「あれは・・・魔法陣? あんな複雑なものを」


 賢聖。

 魔法に関する知識を深く知る英雄職。

 魔法陣も作成可能。

 ただし、魔法結界を展開するには、魔法陣の奥深さを知らないと出来ない。

 結界は、結界術師のように理解がなければ、展開ができないのだ。

 しかし、その結界師の結界も、北の世界のウルダーナには及ばない。

 彼女ほどの結界師はこの世界にはいないのである。


 「展開の邪魔はさせません」


 声が下から聞こえた。

 顔を下げると、二人の男性が突撃してきた。


 「な、空を?!」


 魔王のように自在に空を飛ぶ男性が近づいて来た。


 「あなたが賢聖リリスですね。敵で空を飛べるのはあなたと魔王だけだ」

 「あ、あなたたちは?」

 「僕はクルス」


 最初に答えたのがクルスで次が。


 「私はジャックです」


 ジャックだ。

 二人は、ルルロアの指導で魔力操作の飛空練習を成功させていた。

 空を飛ぶ。

 これが、ヒンメル侵攻の際に連れて行く最低条件だとルルロアが決めていた。

 魔力を学び、自身を空へ飛ばす。

 これくらいできなければ、上位存在たちとの決戦なんて不可能なのだ。


 「ジャック? クルス?・・・ん、ああ、フレデリカ大王の側近!?」


 リリスの耳にも二人の名は届いていた。

 フレデリカ大王の二人の従者。

 最高の友にして、最強の護衛だ。


 「あなたを拘束します。大人しくしてくれれば、怪我をせずに済みます。僕らは傷つけたくないんで」

 「む!?」

 「私たちとは戦わない方がいい。忠告は先に済ませます」

  

 リリスが、二人の言葉にムカッとした。

 挑発と捉えたのだ。

 

 「ムカつく! ヴィよりも、腹立つ言い方ね。あなたたち」

 「ヴィ? 魔王かな?」

 

 ヴィランのヴィか。

 クルスは察しているのに、ようやく察した振りをした。


 「もう頭きた。こっちを馬鹿にするのが、英雄でも何でもない奴なんて! ムカつく。絶対殺す」


 リリスの魔力が、怒りと共に溢れていく。

 ジャックとクルスがその様子を窺いながら並んだ。

  

 「ジャック。今ので成功ですかね?」

 「たぶん成功です。クルス! 私が引きつけます。クルスが決め手を」

 「了解」


 今の挑発は意図的なもの。

 これもルルロアの教えだった。

 相手を単調にするには、様々な手がある。

 挑発に乗りにくい者は、自尊心を燻ったり、強い言葉でけしかけたりする。

 まずは敵を見る。

 そして、性格を探る。

 一番は会話、次に重要なのは語気だ。

 性格はそこに隠されている。

 

 先程のリリスの口調から言うと、単純な挑発も効くが、魔王プライドが高いとみた。

 信頼する魔王を馬鹿にすれば、挑発はより効く形となる。

 二人の判断は正しいものだった。


 「乱風水夫(シュートウインド)」 


 愚風と呼ばれる風玉が基礎にある魔法で、愚風は内側に巻き付くように回る風で、一定方向に回っている風ではなく、あえてぐちゃぐちゃな方向に回っている風である。

 その中に、渦巻く水流があるのが乱風水夫(シュートウインド)だ。

 氷魔法にしてしまうがの普通なのに、あえて風と水の混ざらない魔法にするのは珍しい。


 「なるほど。逃げます!」


 相手の魔法の強さを見て、瞬間的に逃げる事を選択したジャック。

 しかし正しい判断だった。

 乱風水夫(シュートウインド)は明らかに上位魔法である。

 体に当たってしまえば、その乱気流に巻き込まれて、大怪我じゃすまないダメージを負うだろう。


 「おのれ! ちょこまかと! 動くな」


 そこまで自在に飛べるのか。

 二人の方が自分よりも、圧倒的な飛行センスをしていたために苛立ちが増していく。

 リリスも三つの玉を同時に操っているのだが、一つも当てられない。それくらいに抜群の飛行能力を相手が持っているのだ。

 

 「今さら動くなと言われてもですね・・・無理じゃないですか?」


 当然の言葉でさらに挑発。

 馬鹿にするのも板に付いて来た。


 「くっ。小僧どもが!!!」


 お喋りなリリスが相手のペースにされるのも珍しい話だった。

 口が回る彼女は魔王すらも圧倒する言語量で会話していたのだ。

 それが今は単語ばかりである。


 ジャックが敵の三つの玉を躱し続けていると、途中でクルスの声が聞いた。

 

 「ジャック」

 「ん!? 来ましたか。クルス」

 「はい! いきます」

 「了解ですよ。タイミングは合わせます」

 「ええ」


 双子かのように、二人は攻守を入れ替えた。

 逃げ惑う形だったジャックに代わり、クルスが突撃で飛ぶ。

 三つの玉を急にクルスに向ける事が難しい。

 リリスは反応に遅れてしまった。


 「賢聖リリス。これにて終了です。三点崩撃」


 クルスがリリスの上空に出現。

 魔力を帯びた棒を使用して、見事なまでの棒術を披露した。

 脳天と両足の甲を軽く打ち抜く。


 「え、攻撃じゃない?」


 リリスは、自分に軽く触った程度の三撃に不満を持った。

 

 「ええ。攻撃じゃありません。これは、こういう事です。身体硬直の技ですね」


 三点が輝き始める。

 

 「な、何が起こった? ひ、光が」

 「あなたの魔力が強すぎるために、封じ込めます」 


 クルスが、能力封印アビリティロックの玉を取り出すと、三点の光に呼応し始めた。

 不殺であれば、クルスが最強。

 これもルルロアの教えだ。


 「これでどうでしょう。成功だと思いますよ」


 最後の光が、リリスの全てを奪った。

 空中にいられなくなり、落下が始まった。


 「え!? お、落ちてる! ま、魔力が練れない。きゃああああああああ」


 地面に向けて真っ逆さまに落ちる彼女を見て、クルスが叫ぶ。


 「ジャックお願いします」

 「了解」


 逃げ回っていたジャックが、落下するリリスを助けた。

 

 「よし。完璧に終わったはず。後は警戒を」


 リリス以外がこちらに来た場合の対処もしていた。

 ジャックとクルスは完璧に護衛を務めていた。



 ◇

 

 「か、完成です。今から始めます」


 魔法陣を完成。そこから結界を張りきったので、スキルを展開する。

 大王フレデリカの一世一代の技である。


 「発動、千差万民」


 魔了により都市に漂う暗黒の空気。

 それを打ち払う風が吹いた。

 千差万民。

 人はそれぞれ自由。

 王により支配されるものじゃなく、自分により自分を見つめてもよいと思わせるスキル。

 魔了の反対のスキルとして存在しているスキルの中で、最も強いスキルだ。

 ゆえに扱うのが大変に難しいのだが、今のパワーアップしたフレデリカならば、発動させること自体は楽である。

 しかし、効力を最大限にするための結界が最大に難しいものであった。


 「晴れなさい。人々の心も・・・・この都市も!」


 愛ある言葉と共に、世界は明るくなっていく。

 世界を覆う淀んだ空気が、大王フレデリカの技により変わっていく。

 

 ここから生まれ変わるかのように・・・。

 

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