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恋してるだけ   作者: 夢呂
第二章【花火大会】
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「あー、綺麗だったよね」


「もう終わりかー、あっけなかったよな」


クラスの女子と男子が話しながら皆で帰り道を歩く。履き慣れない下駄で少し靴擦れを起こしていた私は少し後ろを歩いていた。


「香枝って、帰り電車?」

振り返った時田くんが、私に訊ねる。


「あ、うん。」


「帰り、すごい人だよな。」


「そうだね…」


確かに花火大会が終わって、電車の最寄り駅へと人の流れが出来ている。何回電車を見送ったら乗れるのだろう…。


「俺付き合うわ」


時田くんがさらりとそう言うと、歩く速度を私に合わせてくれる。


「え、でも…」


「お前小さいから、流れに乗って変なとこで降りそうだし」


「…そんなこと…」

無いと言いたいが、この人混みだと「降ります!」とか言えないかも…。




「私達、こっちの電車だから!」「じゃあな、一護!香枝も!」


透子ちゃんや他のクラスメイト達は、手を降りながら私と時田くんを残して先に帰っていく。


「じゃ、行くか!」

時田くんがそう言って少し先を歩いてくれる。

駅の改札付近は特に混み合っていて、時田くんが先を歩いてくれて、なんとか歩けるような状態だった。


「時田くん、ちょっと」


靴擦れの痛みがひどくなって歩くのが辛くなった私は、先を行く時田くんとはぐれないように思わず背中の裾を掴む。


「!?」

驚いたように時田くんがビクッとして振り返る。


「ごめん…ちょっと待って…」

なんとか痛みを堪えて、申し訳ないけど時田くんにお願いする。


「足、痛むのか?」


「うん…ちょっと…」

本当は痛すぎてちょっと処じゃ無かったけど、私は苦笑いで答える。


「じゃあ、一旦この人混みから抜けよう」


「でも、時田くんの帰る時間が遅くなっちゃう…」


乗る列から抜けたらまた並び直さなければいけない。

私のせいで時田くんに無駄な時間を過ごさせてしまうのは凄く心苦しかった。


「俺は平気だから。―――あと少し、歩ける?」


私の考えていたことを心配いらないと笑い飛ばして、時田くんが人混みを避けるように歩き出す。


(えっ、えっ?)


心臓がバクバクと激しく音を立てる。緊張のあまり、手から汗が出ている気がした。


(手!手…っ!)


手元から視線をはずせないまま、私は時田くんの後ろを必死で歩く。


私はこの日、初めて男の子と手を繋いだ―――――。




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