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「男気ジャンケンしよーぜ」
花火大会の会場に着いたところで、時田くんが言った。
「お、マジか!」「やろやろ!」
出店の屋台が並ぶところで時田くんがそう提案すると、クラスの男子三人がノってきた。
「透子たちは良いからな、これは男だけでやるから!」
男四人でジャンケンする前に、ふいにこちらを向いた時田くんが透子ちゃんに言った。
「えーありがとう!一護男らしいー!」
「さすが、一護!」
(ん?なんで喜んでるの?)
よく状況が分かっていない私は、黙って男子達の様子を窺う。
「うわ、負けたー」
最終的にジャンケンに負けたのは、時田くんだった。
「じゃあ、全員に水あめ奢ってー」
甘えた声で透子ちゃんが言う。
「え、水あめで良いのか?」
時田くんが拍子抜けしたような表情をする。
「うん!私水あめが食べたい!ね、優妃も水あめ食べたいよね?」
突然他の仲の良い女子ではなく、私に同意を求めてきた透子ちゃんに驚きながらも、突然皆の視線が集まって、私は慌てて頷く。
「ほら、優妃も食べたがってるし!」
透子ちゃんが時田くんに向き直る。
「じゃあ、水あめな!」
時田くんがそう言って水あめの屋台へと向かった。
「透子、一護に甘すぎだろ」
時田くんが居なくなると、他の男子がニヤニヤしながら透子ちゃんにそう言うのが聞こえた。
「水飴って、一番安いじゃん。もっと高いの頼めば良かったのにさ」
「良いの!私は水あめ食べたかったの!」
透子ちゃんが、なぜか頬を赤くしてそう言い張る。
(?透子ちゃん、どうしたんだろ?)
ムキになってそう言い返す透子ちゃん。
私にはよくわからなかったが、そんな透子ちゃんがとても可愛いらしく見えた。
「バレバレだって、本心が」
「もう!やめてよ、違うって」
「はいはい、そういうことにしといてやるよ」
男子とそんなやり取りをしていたところで、時田くんが戻ってきた。
「っつうか、誰か持つの手伝えよ!持ちきれねーから」
割り箸に、色とりどりの水飴。
それをいくつも持って歩いてくる時田くんの姿は、なんだか見た目と合わなくて、そのギャップに私はフッと笑みをこぼす。
「あ、私手伝うよ!」「お、サンキュ」
すぐに数本を透子ちゃんが持って、他の男子に配る。
「はい、香枝の分。」
いつの間にか私の前にいた時田くんが、水飴のついた割り箸を一本、私へと差し出した。
「え?」
(私も…貰えるの?)
まさか私の分もあるなんてと驚いていた私は、受けとるのを戸惑っていると、
「早く、他の落ちそう」
時田くんが急かす。
「ありがとう…」
急かされたので慌てて受け取り、私はお礼を言った。
「どういたしまして」
時田くんがニカッと歯を見せて笑った。
眩しいくらい、爽やかな笑顔だった。