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滅亡世界の果てで  作者: 漆之黒褐
第2章
37/52

誠心誠意、ご奉仕させて頂きます

少し思う所があり、作品名を変更致しました。

旧『どうも。滅亡世界を再生……侵略?しています』

 せめて1センチの距離で固まったままでいたかった。

 超高速で離れるとは、どれだけ俺達は初なんだ。


 ほんの少しだけ気まずい雰囲気が流れる。


「あの、お客様?」


 部屋の外で待機している小僧が、返事が無い事を不審に思いもう一度問いかけてくる。

 俺達が宿から出ていない事は知っているのだろう。

 あくまで部屋の中に俺達がいる事前提での問いかけだった。


「分かった。今取り込み中だから、ドアの前に置いておいてくれ」


「申し訳ありません。それですと盗まれる危険があり、私が店の主に怒られてしまいます。遅くなっても構いませんので、直接お渡しをさせて下さい」


 アクアを見る。

 首が横へと振られた。


「……分かった。少し待ってろ」


 そう言って立ち上がると、アクアが先立って音も無く動き、壁に掛けていた外套を取り俺へと着せてくれる。

 多少衣擦れする音はしたが、この部屋はそういう事をする為に防音処理された場所なので、ドアの外には聞こえない筈。


 ……ん?

 何かがおかしい気が。


「開けるぞ」


 扉は開き戸となっているため、事前に忠告して扉を開ける。

 もし小僧が料理を持って扉の目の前に立っていると、折角の料理がぶちまけられるというそれこそ店の主からゲンコツだけじゃ済まされない罰が小僧に降りかかるだろう。

 それを警戒して扉を開け……。


「へへっ、怪我したくなかったらおとぶばぁっ!!」


 ナイフ片手に襲い掛かってきた男を、怒りの鉄拳でぶん殴った。


「なっ!? き、きさ……」


「もう一人いたか」


 男は小僧の首にナイフを当てていた。


「ひぎゃっ」


 一瞬だけ逡巡し、もう一度拳を構えようとしたらアクアが投げた石が男の脛に命中し、殴りやすい位置に男の顔が下がる。


「ぶげぇっ」


 容赦なくその顔をぶん殴った。

 木製メリケンサックを装備した右腕で。


「ぎゃっ!」


「ぎゃっ!」


 追い打ちで、倒れた男の股間にアクアが投げた石がジャストミートする。

 どうやらアクアも大層ご立腹の様だった。

 容赦がない。

 俺はノーダメージなのに、同じ男として精神的に巻き添えを受けてしまった。


「申し訳御座いません、ご主人様。ここは信頼出来る宿と聞いていたのですが、どうやら情報が間違っていた様です。何なりと罰を」


 罰とは非常に魅力的な誘惑だったが、初めからそんな上級者プレイはしたくない。

 いや、そんな事はどうでもいいか。

 首をめぐらせると、怯えた様子の小僧が一人立っていた。


「初めからグルだったのか?」


 睨みを効かせると、小僧が土下座して床に頭をガンっと強く打ち付けた。


「申し訳ありません! 許して下さい! 従わないと殺すと脅され、仕方なくやったんです! 何でもしますから命だけはどうか!」


 アクアを見る。

 また首を横へと振った。

 そんなに俺との情事を邪魔されたのが気にくわないのか。


 ……いや、この小僧が嘘を吐いているとアクアは思っているのだろう。


「とりあえず、主人を呼べ。この落とし前はキッチリつけてもらう」


 俺も丸くなったものだ。

 弐式核弾頭と呼ばれていた時代なら、有無を言わさず小僧を殴り飛ばし、口を踏みつけて歯を折っていた。


 ……2人、もう殺しているがな。











 汗だくで走ってきた宿の主人は、スライディング土下座を決めて謝ってきた。

 そういう姿勢を取れば確実に守れる場所はいったい何処か。

 きっと小僧から事のあらましを聞いた筈だ。

 あの一切躊躇いの無かったアクアの必殺攻撃は俺でも怖い。


 その姿勢を保持させてやったまま、宿の主人と話を進める。

 横で同じ姿勢を取り微動だにしない小僧が店の泊まり客であるチンピラ2人とつるんでいる事は主人も知っていた。

 つまり、知っていて放置していた。


 チンピラ2人はこの宿の護衛も兼ねており、主に客を取った娼婦の事後処理を行う者達だった。

 娼婦との一晩の夢を買った客が、思い違いをして娼婦を自分の物だと思い込み危害を加えた際に彼等は仕事を行う。

 但し、基本的にその仕事は全て事後に行われる。

 娼婦を守るのではなく、問題を起こした客から絞り取れるだけ取り、その後の処理まで含めて行う掃除人。

 それが俺達を襲撃してきた男達の素顔だった。


 ならば何故、俺達を襲ってきたのか。

 それは、俺が外部の人間であり、尚かつアクアが娼婦では無かったから。


 情事を行うのに高い部屋を取るのは金を持っている貴族か大商人だけであり、しかも泊まる際には秘密の暗号を交わしてくる。

 娼婦も当然その秘密の暗号を知っているので、暗号を知らない客でも娼婦が一緒ならば問題は無い。

 つまり、そのどちらでもない俺は、絶好のカモでしかなかった。


 襲撃するかどうかは気分次第。

 その手段と方法も気分次第。

 今回はたまたま食事を頼んだので、そこにつけ込んで奇襲した。

 小僧は囮で、首にナイフを当てていたのは人質を取っていると思わせ俺の思考を鈍らせる為。

 赤の他人を人質に取られても俺の様に無視する者は多いが、カモが馬鹿であればそれだけで片が付く。

 宿の主人も初めからそういう手筈で、防音処理を施していない安い部屋に俺を小僧に案内させていた。


「ひぃぃっ! どうか命だけは!」


 チンピラから奪ったナイフを土下座する宿の主人の眼前に突き立て、どうするか考える。

 何だかどっちが悪者か分からない図式だった。

 が、殺されても文句は言えない事をこの男達はしている。


 悪、即、斬。

 ――といきたい所だが、よくよく聞いてみると、彼等は襲撃した相手からは小銭程度しか奪わないらしかった。

 殺しは御法度、奪うのもあまり怨まれない程度に。

 何というか、世の中の厳しさを教えつつ駄賃をもらっています的なノリだった。

 俺の様なカモれそうな客が現れた場合に、気分が乗れば暇潰しにちょっと悪巫山戯を行う感じである。


 アクアがこの宿を信頼出来る場所だと聞いていたのは、少しだけ納得出来た。

 暗号さえ知っていればこの宿は安全で、しかも良心的な対応をしてくれるのだろう。

 ちょっとした悪さはするものの、その悪質加減は十分に許せるレベル。

 上京してきたばかりの世間知らず、新人の冒険者などがたまに痛い目を見る。

 が、アフターケアもそこそこしているので、いつかは笑って許してくれる。

 娼婦を買える様になるぐらい稼ぎ始めたら、この宿の常連の一人に仲間入り。


 だからどうしたと言うのか。

 そんな話で今の俺達の機嫌が直るとでも思っているのだろうか。


「ご主人様のお手を煩わせるまでもありません。裁きは是非、私目に」


「最上級の部屋を御用意させて頂きますので、それだけはどうかお許し下さい!」


 命よりも大切なのかどうかは兎も角、宿の主人は俺よりもアクアの方に恐怖を感じている様だった。

 アクアは涼しい顔をしているのに、目が全然笑っていない。

 許可すれば間違いなく彼等の大切な場所は一生使い物にならなくなるだろう。

 確信出来た。


「二度とこういう事はするな」


「有り難う御座います!」


 血を見るのも精神的に辛い場面をもう一度見るのも今日は勘弁して欲しい。

 この後の事を考えると精神的に良くないので、許してやった。


 アクアの怒りを静めるため、優しく肩を抱いてやる。

 身も心も委ねてきた。

 が、流石にこの後すぐにという訳にはいかない。


「頼んだ食事は、今度こそ持ってきてくれるのか?」


「はい! 大急ぎで!」


 のびているチンピラ2人をその場に残し、部屋を移動した。











「汗を掻いたな。背中を拭いてくれるか?」


 特急で運ばれてきた豪勢な食事をじっくり堪能し終えた時には、既に街は寝静まっていた。

 だが酒場の営業は客次第なので、まだどこか営業しているのだろう。

 夜は大人の時間帯。

 酒を飲んだ後は財布の紐が緩み、ついつい夢を買って夜の運動へと洒落込む。

 故に、この宿もまだ営業時間内の様だった。


「はい、ご主人様。失礼致します」


 外套を脱ぎ、アクアに預ける。

 一度見た光景を再びこの部屋でも行うアクアだったが、その後の行動は違った。

 水の魔法を使って桶に水を溜め、部屋に備え付けの拭き布を浸す。


 部屋に水は用意されていたが、冷やされている訳はないためとても温い。

 だがアクアの出した水の方は冷たい。

 不思議発見。

 この水はいったい何処から出てきているんだろうな。


 腰巻き姿になった俺の背中を、後ろからアクアが布で拭く。

 何も言わなくても、次は腕を丁寧に拭いてくれた。

 少し悪戯心を出して、指を拭いてくれている時にアクアの手を握る。

 指を絡めてきた。

 そのまま空いている方の手でアクアは作業を続行する。


 胸を上から下に布が這う。

 男の俺の胸を拭いてもあまり楽しくないと思うのだが、アクアはちょっとだけ嬉しそうだった。

 握ったのは正解だったか。


「この宿の事だが……」


「お叱りは甘んじて受けさせて頂きます。如何様にも」


 勿論そうさせてもらう予定だが、それはそれ、これはこれ。


「それは片付いた事だ。気にするな。頼んだのは俺だ。アクアが責任を感じる必要は無い」


「それではケジメがつきません」


 それほど俺に暴れて欲しいのか。

 激しいのがお好みなのか。


「この宿がお勧めだった理由も分かった。防犯意識も高い……のかどうかはちょっと疑わしいが、少なくとも適切な対処さえ知っていれば良い宿なんだろう。それに、部屋を取る際に宿の主人任せにして、部屋に案内された後もチェックを怠った。信用しすぎた俺も悪かった」


「ご主人様に仕えて早々、ミスを犯した私を罰しないのですか?」


「必要が無い。そして、したくもない。俺は……御前を大事にしたい」


「勿体無いお言葉です。ですが……」


 上半身を拭き終え、今度は下へと向かう。

 間にある部分は飛ばし、今度は下から順にアクアは拭いていった。

 奴隷屋で拭いてくれた時と同じ様に。


 ただ、あの時は他の娘達もいた。

 だから肝心の部分は拭いてくれなかった。

 しかし今は違う。

 この部屋には、アクアと俺の二人きりだ。

 すっかり忘れていた料理の出前も、今度はバッチリ処分済みだ。


「……分かった。罰を与えよう。誠心誠意、奉仕しろ」


「有り難う御座います」


 腰巻きの結び目が丁寧に解かれ、開放感に満ち溢れる。

 余す所無く、懇切丁寧に細心の注意を払って拭いてくれた。

 ……ん、それだけ?

 期待していた奉仕は無かった。

 これは後で教育が必要だな。


「褒美だ。次は俺が拭いてやろう」


 暴走しそうになるのをぐっと抑え、アクアの手から布を奪う。

 誰に対する誰の為の褒美か。

 恐らく互いに違う解釈がされている事だろう。


「……は、はい」


 一瞬、恐れ多いという顔を浮かべた後、アクアが小さな声を絞り出す。

 拒否されなくて良かった。

 拒否しても強引に行うが。


 色褪せたワンピースに手をかける。

 膝頭を隠しているスカートの部分を掴み、上へと上げていく。


「ほら、万歳だ」


「あ、あの……ご主人様、服は自分で脱ぎますので」


「万歳だ」


「は、はい……」


 皺になる事など気にせず、裏返しになる事も気にせず、めくり上げていく。

 そうしたら、すぐにカボチャパンツっぽい短パンが現れた。

 なんだ、ノーパンだと聞いて期待していたのだが。

 色気も何も無い膨らんだ下着がアクアの大事な部分をしっかりガードしていた。


 まぁ、それはそうか。

 スカートの下が完全フリーでは、強い風が吹いた時に出血大サービスとなってしまう。

 ちなみに上ももう1枚着ていた。

 着ていたと言うより、巻いていた。

 さらしである。

 意外にガード硬いな。


「それだと胸はきつくないのか?」


「少しだけ」


「外すぞ」


「はい」


 アクアが俺にしてくれた様に、最初は背中から拭く為に邪魔な物は全て排除する。

 外套越しに胸を押し付けられた時には着やせするタイプだと思ったが、それは本当だった。


 それなりに攻撃力の高い暴力的な胸が現れ、ぷるんと触れる。

 奴隷屋で見た猫娘の攻撃力には負けるものの、男の目を奪うには申し分無い攻撃力をそこは秘めていた。

 例えるなら、村正と菊一文字。

 余談だが、他3人は小太刀とか苦無という表現が似合いそうである。


「水魔法が使えるなら、身体を拭いて清めるのは何処でも出来そうだな。それにしては随分と汚れているが」


「食事以外、何も与えられませんでしたので。牢では魔法も封じられていました」


「それは大変だったな。いつからあの店にいたんだ?」


「今日から数えて、十日前からです。その間ずっと、顔を洗う事も身体を拭く事も許されませんでした」


「……他の4人は身綺麗になっていたが」


「たまたま今日、彼女達は先立って貴族の前に出されましたので。ご主人様がお店を訪れたのは、店を閉める少し前の事でした」


「あの4人は売れ残ったのか?」


「それは私には分かりかねます。私はただ、今日は貴族が見えられると聞いていただけです」


「そうか」


 ちょっとだけアクアが不機嫌になっていた。

 これからナニをするというのに、他の女の話題を出してしまったからか。

 明日は気をつけよう。


 肩から二の腕、肘、上腕、手首、手の平と拭いていく。

 そうしたら、アクアが俺の手を握ってきた。

 まんま俺の真似だ。

 当然、俺は指を絡める。


 腕の後は、お楽しみ。

 背後に回り込み、抱き込む様にアクアの胸を丹念に拭いてやる。

 2つの山脈が次々と形を変えて俺の目を楽しませてくれる。

 質感はプリンだ。

 手を離すとゼリーの様に震える。


「……っ」


 素晴らしい。

 これが絶対戦力と言われる場所か。

 お子様には絶対に見せられない光景だった。


 ただ、いつまでも霊峰を拝んでいる訳にもいかない。

 名残惜しいが、次へと進む。

 おへそと腰を清めていく。


「っっ」


 弱点発見。

 それはそれとして、次へと向かう。

 明らかに俺の方が体格が大きいのに身体を清める時間はアクアの方が掛かっていたが、気にしてはいけない。

 何しろ、十日分の垢を落とさないといけないのだ。

 時間が掛かってしまうのは必然。


「右足を上げてくれ」


「はい。肩をお借りしても宜しいでしょうか?」


「ああ」


 足の指を丹念に拭いていく。

 ここは3番目に汚れやすい場所だからな。

 1番目と2番目が何処かは敢えて言うまい。


 桶に溜めた水で布を何度か絞り、足を拭いていく。

 流石に桶の水も濁ってきたので、アクアの水魔法で新しい水に変えてもらった。

 両足を太腿の半ばまで何度も何度も拭いた後、もう一度水を替えてもらう。


 そして、最後の1枚を剥ぎ取る。

 抵抗は無かった。


「……そろそろ寝るか」


 最後の場所を清め終わった時、アクアは立っている事が出来ずベッドの上に倒れていた。

 肩で息をしているのは、それだけ体力を奪われたからなのだろう。

 思い掛けず罰を与えてしまう結果となってしまった。


 まぁ、アクアも喜んでいたから良いか。

 罰と言うより褒美?


「はい」


 かなり疲れている筈なのに、アクアが気力を振り絞ってベッドの上で正座となった。

 何をするつもりなのかと見ていると、両手の先が揃えられ深々とアクアが礼をする。


「未熟者ゆえ何かと至らぬ点もあるかと思いますが、精一杯ご主人様のお相手をつとめさせて頂きま……あっ」


 あまりに可愛くて、我慢出来ず言い終わる前に唇を奪った。

 口吻したままベッドへと押し倒す。

 唇を解放し、今度は首筋へとキスをしながら背後へと回る。


 そのまま後ろから抱き締め……夜は更けていった。

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