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爪楊枝 3本

 気が付くと、そこはウルス村の村長宅だった。

 なんか最近、こういう事多いな。

 まぁいいか。


「お目覚めですかな?」


「はい。少しうたた寝してしまったみたいですね。すみません」


「いえいえ。私のクエスト処理のためケント殿に長々とつまらない話ばかりを聞かせていた私が悪いのです」


「別につまらない訳では。いくらためになる話でも、ずっと集中しているのは疲れるので」


「そう言って頂けると助かります。いやはや、ケント殿が不神者だというのは何かの間違いのような気がしてきますな」


 村長は引き続き話を再開した。

 まだクエスト終わってなかったのか。

 てっきり目が覚めたらクエスト達成していると思ったのに。


「おや。いつの間にかクエストを達成していたみたいです」


 熟々と1時間以上も話を聞いた後に、そんな言葉が告げられた。

 おい。


「……縄を解いてもらえますか?」


「もちろんですとも」


 縄を解かれると同時に伸びをする。

 身体中がメキメキいっている。

 もう夕方か。

 夕飯までには戻るとユキさん達に言ってあるので、丁度良い時間と言えば時間か。


「お話、ありがとうございました」


 本心半分、うんざり半分。

 まだ寝ているミントちゃんを抱き上げ、外で遊んでいたビックスとカリーちゃんに声を掛けてウルス村を後にする。


 考える事は山ほどあった。

 ほんと、うんざりするほどあった。

 但し優先すべき事だけは分かっている。

 才能ポイントを振り、何かしらの才能を身に着けて、教会で暮らしているみんなを守る。

 その一点に尽きる。


 しかし、ただ自分が強くなるだけではダメだと思う。

 何故なら、この世界ではまともな武器や防具が手に入りそうにないからだ。


 村長の話では、この世界の文明レベルはかなり下がっているとのこと。

 500年以上前は剣の時代だった。

 そこから進歩して、200年以上前ぐらいに剣と魔法の時代へと突入した。

 しかし魔王が現れて世界は一度滅び、剣の時代に逆戻り。

 そこから更に時間が経ち、魔王によって武器になりそうなものは片っ端から取り上げられてしまい、力を持った者達も順次殺されていった。


 残ったのは木や石のみ。

 後は動物から取れる皮などか。

 この世界にはモンスターも数多いるが、まともな武器もなく、身体を鍛えて強くなる事も禁止されていたらしいので、雑魚は兎も角上級を殺す事は難しいらしい。

 初代魔王が死んで魔族が北の領地に帰っていったので身体を鍛える事は解禁されているそうだが、いつまた同じ事が起きるか分かったものではないため、それから暫くはほとんど誰も強くなろうとは思わなかった。

 その考えが徐々に変わってきたのは、ごく最近になってからだとか。


 兎に角、この世界ではまともな装備を手に入れる事は出来ない。

 いくら自分が強くなっても、なまくらの剣やちょっと堅いだけの鎧という装備ではいずれ限界がくる。

 土地や権力を巡って覇権を争っている領主達は最初から装備に頼らず数の暴力で小競り合いを繰り返しているとの事だが、この世界で俺がどれだけ強くなれるのかはまだ分からないし、何より数には勝てないと思う。

 ましてやこの世界には強力な力を持った魔族もいる。

 ただのサラリーマンであった俺には流石に荷が重い。

 だから、俺ツェー無双案は却下。

 柄でもないしな。


 やっぱり、俺にはのんびりペースがあっている。

 のんびり暮らすために生活環境を整えていく。

 生活環境を整えていく上で危ない橋を渡らなくても良いように色々と保険を掛けていく。

 それに、なにも俺自身が強くなる必要はない。

 みんなが強くなっていけばいい。

 もとい、みんな()強くなっていけばいい。


 となると、やはり物作り系か。

 そもそも教会での暮らしはあまりにも酷すぎる。

 物がない。

 食べ物がほとんどない、清潔な水なんてない、着る物もほとんどない。

 ただ寝る場所があるだけ。

 人間の暮らす環境ではないことは、この半月の間に嫌というほど理解させられた。


 それをまず何とかしようと思う。


「ただいまー」


「あら~、おかえりなさいー。随分と遅かったんですね~」


 と思っている間に、教会に着いてしまった。

 才能ポイントを振るのはまた後だな。


「早くしないと~、御飯なくなっちゃいますよ~」


「「ごはん!?」」


 俺の腕の中で寝ていた子犬のビックスと子猫のミントちゃんが飛び起きた。

 自分の足でここまで歩いて帰ってきたカリーちゃんも、いつの間にか姿が見えない。

 早い……。


「何か変わった事はあったか?」


「いいえ~。いつもと変わりませんよ~?」


「そうか」


 食堂に入ってマリンちゃんがいる事を確かめる。

 良かった、ちゃんといる。

 女神の話では、俺がこの教会にいる事で運命が変わったとのこと。

 但し、あの悲しい運命が完全に回避された訳ではないので、近く調査に乗り出すことにしよう。


 いつもよりも量の少ない夕食を終える。

 量が少ないのは……あれだ、ユキさんがまた火加減を間違えたからなのだろう。

 きっと、才能:魔法制御を持っていないんだな。

 一度取得した事があるため、何となく分かる。


 ちなみに、夢の中で才能ポイントを振っていたため、現実にはまだちゃんと22ポイント残っている。

 しかし、夢の中で各才能を取得した際に得た知識や感覚はまだ朧気に残っている。

 俺個人の戦闘能力を伸ばさない方向に決めた理由には、これによる所も大きかった。

 何故なら、おおよそ魔法というものがどういうものかを既に俺は理解していたため。


 わざわざ才能ポイントを消費して魔法関連の才能を取らなくても、恐らくそれらの才能を俺は苦せずして取得する事が出来る。

 流石にすぐにとはいかないが、その確信はあった。


「おやすみ、マリンちゃん」


「けんにぃ、おやちゅみ」


 ちょっと心配だったので、その後ずっとマリンちゃんにベタベタした。

 マリンちゃんは不思議そうな顔を向けていたが、これといって特に嫌がる素振りもなくつきあってくれた。

 それにしても、ほんと子供の肌はぷにぷにだな。

 それにすべすべ。


 マリンちゃんの寝付くまで頭を撫で撫でしながら、才能ポイントの振り分けをどうするか考える。

 マリンちゃんの髪はモフモフしてて気持ち良いな。

 癒やされすぎて思考がまとまらない。


 いやいや、頑張れ俺。

 今日中に才能ポイントを振り分けて女神を安心させる事が今の俺の仕事だと思い込め。


 マリンちゃんが規則正しい寝息をたてはじめる。

 もうちょっとだけモフモフ……。

 ふぅ、満喫。


 さて、仕事だ。

 仕事だと思い込んだら、急に頭がサクサクと回転し始めた。

 とっとと終わらせてしまおう。










 全員が寝ている事を確認して、聖堂へと向かう。

 例の件を確かめる必要もあったので、聖堂で瞑想しながら才能ポイントを振っていく。




『才能:製造Lv1を取得しました』




 色々思う所はあったが、まず最初にこれを取った。

 予想通り、いくつもの技術(テクニック)系スキルが手に入った。


 スキル一覧に〈鍛治製造・基礎〉〈彫金製造・基礎〉〈木工製造・基礎〉などといったクラフト系スキルが色々と追加された。

 取得出来る才能一覧の中に鍛治といった項目がないことから、もしやと思っていたのだが、予想が的中した。


 そもそも、鍛治が出来るだけの才能があるならば、他のことも大抵が出来る筈である。

 職人というのはただ1点のみに特化しているから職人なのではない。

 鍛治をするにしても、時には他の技術も必要となる。

 職人は、色んな才能を持ち合わせているから職人となりうるのだ。


 考えてみればいい。

 俺は以前、ピアノを引けるから手先が器用になったという例をあげた。

 指が滑らかに動かせる、自由に動かせるのならば、リコーダーやクラリネットなどの木管楽器の腕前も相当なものになるという事である。

 勿論、木管楽器には息継ぎなどの技術も必要になるので、手先が器用なだけではプロだとはいえない。

 だが、ほとんど最初から並以上の演奏者にはなれる。


 ピアノを弾く事を鍛治技術に当てはめるなら、指先を器用に動かせるというのは製造の才能に該当する。

 ピアノを弾けるという事は、ピアノを弾く技術に加えて指先が器用である。

 ピアノを弾く技術はそこで完結してしまっても、指先を器用に動かす事が出来る能力は他に応用がきく。


 才能:製造というのは、物作りをする上で重要な何らかの技術なのだろう。

 俺は職人でも何でもないので、それがいったい何なのかはよく分からない。

 ただ、その才能を取得した瞬間、何か小さな悟りを開いたような気がした。


 まぁ、それはおいといて。

 まずは確認が必要だ。

 その結果次第では、この後に取得する予定の才能一式を再考する必要がある。


 取得したスキルの中で、今現在俺が置かれている環境下で使いやすいのは〈木工製造・基礎〉。

 鍛治とか彫金は流石に材料がないので試せない。

 木材ならば手に入らない事もなかった。


 ウルス村からこっそり拝借してきた木片の欠片をポケットから取り出す。

 これでいったい何をするのか。


 爪楊枝(つまようじ)を作ってみた。


 まぁポケットに入るようなとても小さな木片だしな。

 作れる物はどうしても限られてしまう。

 何に使うのかだとか、何のために作っただとかいうのはどうでもいい。


 肝心なのは、この爪楊枝を作った際に取得出来た経験値がいくらなのか、である。


「1、か……経験値が入っただけでも喜ぶべきかな?」


 幸いにして、爪楊枝製作後に〈木工製造・基礎〉の経験値を確認すると、数値が上がっていた。

 他に取得していた〈鍛治製造・基礎〉などには経験値は入っていない。

 まぁ当然だろう。


 爪楊枝。

 所詮は爪楊枝。

 されど、作るだけでも実は結構な労力を費やしている。

 何しろまともな道具がないのだから、出来るかどうかすら怪しかったぐらいだ。


 ちなみに、どうやって作ったかというと、ザラザラした石で地道に削りました。

 疲れた……。

 むしろよく出来たなぁと思う。


「で、ここからが本題だな」


 この半月の間、ずっと俺の頭を悩ましていたとある才能を俺はついに取得する。




『才能:効率Lv1を取得しました』




 俺はずっとこの〈効率〉という才能が気になっていた。

 効率……良い言葉だよね。


 もし俺の考えが正しければ、この才能は俺の未来を大きく変えてくれる可能性があった。


 俺は大器晩成型。

 初めチョロチョロ、中パッパ、赤子泣いても蓋取るな。

 意味はまるで違うが、何となく。


 いきなり大きな力を得るよりも、少しずつ堅実に確実に効率良く力を得ていく方を好む。

 早熟よりも、晩成。

 この効率という才能は、永遠の若さというチート能力を持った俺にとって、神才能となる可能性があった。


 もう少し分かりやすく言うと……いや、これは検証してみた方が早いか。

 早速、もう一本ほど爪楊枝を作り始める。


 ごしごし……ごしごし……。

 おお、何となくさっきよりも早く削れているような気がする。

 しかも、無駄なく力が加わっている。

 どこを削れば、どの角度で削ればより早く削れるのかも何となく分かる。

 もしかしたら〈木工製造・基礎〉経験値1の効果かもしれないけど、とにかくさっきよりも簡単に楽に効率良く爪楊枝が作れる事は確かだ。


 そして、爪楊枝が完成した。


 まぁ爪楊枝が上手に作れたとかそういうのはどうでもいい。

 ぶっちゃけ、効率良く作れたという事実もあまり関心はない。

 そりゃ嬉しいけどね。

 でも俺が知りたかったのは別の結果だった。


「……よし! 経験値が3になっている!」


 俺が知りたかったのは、物を効率良く作れるかどうかではなかった。

 何かを経験した際に得られる経験値の量が増えること――いわば、経験に伴う技術の取得効率があがるかどうかだった。


 RPGなどのゲームをしたことのある者なら誰でも一度は思った事があるだろう。

 どうすればもっと効率良く多くの経験値を取得出来るのかを。


 また、とあるゲームをプレイした際に、キャラによっては〈エリート〉だとか〈早熟〉だとかいう特別な技能を持っているために、敵を倒した際に得られる経験値がそのキャラだけ倍だったりする場合がある。

 何故? どうして? どうやって? という疑問を思い浮かべた事はないだろうか。


 言わばこの効率という才能は、それに類する能力だと考える事が出来る。


 経験をすれば、経験値が手に入る。

 これが、効率という才能を持つ事によって……。

 効率良く経験する事で、より多くの経験値を効率的に手に入れる事が出来る。

 ……という風になる。


 ほとんど半信半疑だったが、どうやら天は俺に味方したようだ。

 早速、この才能のLvをあげまくる。




『才能:効率Lv2を取得しました』

『才能:効率Lv3を取得しました』

『才能:効率Lv4を取得しました』

『才能:効率Lv5を取得しました』




 Lv2の才能を取るためには2ポイントが必要になる。

 同じように、Lv3の才能を取るためには3ポイントが必要。

 それをLv5まで取る。


 これで残っている才能ポイントは6。

 製造Lv1を取得するために1ポイントを消費し、効率Lv5を取得するために合計15ポイントを消費したので、22から16を引いて残り6ポイントだ。

 この6ポイントを注ぎ込めば才能:効率Lv6に出来たが、流石にそれはやめておいた。


 流石にそれだと、今現在出来る事がかなり限られてしまい、もしもの事態が起こってしまう前に必要な準備や対策、保険の構築が間に合わない可能性が高い。

 ここは冷静になってLv6にしたい気持ちを抑え込む。


 自分が生粋の効率主義者だとは思わないが、効率好きである事は自覚している。

 女神の警告を聞く前だったら、もしかしたらLv6にする誘惑に勝てなかったかもしれないな。

 それぐらい、この効率という才能は魔性の魅力を持ち合わせていた。


 というわけで、早速3本目の爪楊枝を作成。


 ……ごしごし……ごしごし……あ、石の方が先にダメになった。

 予備の石を一応用意してて良かったな。

 ……ごしごし……ごしごし……。

 うむ、完成だ。


 ただ、思ったよりも作成効率が上がったようには思えない。

 所要時間は2本目の時に毛が生えた程度。

 途中、ヤスリ用?の研磨石がダメになった時間ロスがあったので正確な所は分からないけど。

 うーむ……もしかして、マズったか?


「経験値は……あれ、5……」


 予想では効率Lv1で経験値+1、効率Lv5で経験値+5ぐらいになると思ってたのだが。

 さっきと同じで、爪楊枝を作成した事によって取得出来た経験値は2だけだった。

 もしかして、爪楊枝ごときでは効果が現れないのか。

 難しい作業をする場合には、より高い才能Lvが必要とか、そういうシステムか?


 マジでマズったかもしれないな……。


「……後悔しても始まらない、か。とりあえず今は諦めて、他のをサッサと取ってしまうか」


 製造と効率の検証だけが俺の頭を半月も悩ませていた訳ではない。

 もう一つ、とても気になる才能があった。

 が、それは才能ポイントを使用しすぎたことによってすぐに検証する事は出来なくなった。

 何故なら、その検証には魔法関連の才能が必要だと思われるからだ。


 ただ、そのまま見過ごすという選択肢は俺の頭の中にはない。

 その才能を自力で開花させる事が出来るかどうかも分からないので、気が変わらない内にさっさと取っておく。




『才能:空間操作Lv1を取得しました』




 まぁ、分かるよね?

 あの魔法とか、あの魔法とか、もしかしたらあんな事も出来るかもしれない才能である。

 取っておいて損はない。

 ただ、残念ながらこの才能を覚えてもすぐには何も知識は得られなかった。

 それらしい感覚もない。

 たぶん、才能:魔法とかと関係しているのだろう。


 最低限欲しい才能は取った。

 残った才能ポイントは、今後の方針に従って消費していく。




『才能:細工Lv1を取得しました』

『才能:加工Lv1を取得しました』

『才能:錬成Lv1を取得しました』




 これにより、〈石細工・基礎〉〈革細工・基礎〉〈裁縫・基礎〉〈錬金術・基礎〉〈薬草学・基礎〉などのクラフト系のスキルがまたどっさりと増えた。

 物作りするなら色々と覚えておかないとな。


 特に裁縫は重要だ。

 いつまでもボロボロの服を着ていたくない。

 特に女の子達。

 女の子なら、もっと着飾っていて欲しいしな。

 流石にちょっとあの小汚い格好は、現代人っ子として見ていられない。


 それと……まさか薬草学のスキルまで手に入るとは思わなかった。

 もしや複数の才能を取得する事で手に入る技術なのだろうか。

 それらしい才能がなかったので、その可能性もあるのだろう。

 この教会の子供達は川から汲んできた水をそのまま使って生活をしてるので、寄生虫やら何やらに侵されている可能性も低くない。

 何より、薬は高価で貴重だという。

 商売するつもりはないが、何かと今後役に立つことだろう。

 ――ただ、そもそもこの近くで素材が採れるかどうかもまだ分かっていないが。


 残っている才能ポイントは2。

 微妙な数値だ……。

 物作りすると決めたので〈器用〉とか〈直感〉〈閃き〉〈鬼才〉とか取ってもいいのだが、戦闘系の才能がまるでないのもちょっと困る。

 かといって、たった一つだけ戦闘系の才能を取っても仕方がない。

 それに、才能は時間を掛けて努力し続ける事により手に入れられると分かっている。

 なので、誰でも持っていそうな才能をわざわざ取る必要もない。

 どうせ取るなら、レア才能や一風変わった才能の方が良い。


 となると……この辺とか意外に面白い結果を出してくれるかもしれないな。




『才能:支援効果Lv1を取得しました』




 支援効果って才能なのだろうか……という疑問は、この際考えない事にする。

 この才能で、ユキさんの料理の腕とか上がらないかなぁ。

 川で汲んできた水をユキさんが【火】属性魔法で煮沸して飲めるようにしてくれるのは良いのだが、やっぱり問題は食材も燃やしてしまうあの火加減。

 ああでも、支援効果のせいで火がもっと強くなったらどうしよう。

 ちょっと怖いから、暫くユキさんには料理をさせないようにしよっと。


 さて、これでラストだ。

 残っている才能ポイントは1。

 この使い道はもう決めている。


 こいつは、こうだ!




『才能:女神様に全ポイント献上!を実行しました』


『神様クエスト《最初に出会った人に、絶対に優しくする》を達成しました。

 クエスト達成の報酬として、

 献上した才能ポイント × 《徳》100

 を取得しました』




 ああ、やっぱり。

 何となくそんな気がしていた。


 《徳》が少ないとクエストが発生しないという。

 だけど俺のような異世界から招かれた者は《徳》を持ってない。

 だから、何かしらの救済措置があるのではと思っていた。


 この世界にいる人達は、産まれた時に親から《徳》を分けてもらうという。

 親が《徳》を持っていない場合は悲しい事が起こるが、成人するまでは《徳》に関わらずクエストが発生するのだともウルス村の村長から聞いた。

 また、長生きして孫や曾孫がいる場合には、死んだ際に《徳》の一部を分け与える事も出来るという。


 しかし、推定22歳である俺には、そのどれにも該当しない。

 この世界に招かれた前任者達も恐らくそうだろう。


 だからこその、救済措置。

 女神の話ではこの世界にも神々がいるという事なので、その神々も一応は俺を気に掛けてくれていたという事なのだろうな。


 兎に角、これで俺の《徳》は99になった。

 昼間に村長宅で子犬のビックスに意地悪してしまったため、ちょっと際どい数値だが。

 まぁ、何とかなるだろう。


 もうすぐ月が昇る。

 才能ポイントを振るという仕事も終えた。

 後は待つばかり。


 それまでは……爪楊枝作りでもして、経験値稼ぎでもしようかなっ!

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