第1話 始まりの時
春。ドラゴニア王国王立中等学校の入学式の日。リリルとファロは講堂を探して彷徨っていた。二人はこの日初めて中等学校に足を踏み入れたのだ。
「ねえ、ここ、どこ?」
「わかんない、広すぎだよ,もう……案内もよくわかんないし」
迷った時のためにと早めにやってきたはずが、気がつけばもう集合の時間が迫っていた。
「あれ、君たち,迷子?」
声の方を見ると,小さな建物から人が出てきていた。最上級の5年生の騎士科の制服を着た男の人だ。
「はい、講堂に行こうとしてて,迷ってしまって」
リリルが泣きそうになりながら説明すると、男性が建物の中の誰かに話しかけた。
「講堂だったら一緒に行ったらどう?そろそろ時間だよ」
リリルとファロが見ていると、出てきたのは女の子だった。二人と同じ新入生の制服を着た、淡い金髪の彼女は、先の男性と何か話してからこちらへやってきた。
「初めまして。あなたたちも新入生ね。一緒にいきましょ。近道があるから案内するわ」
女の子はそこまで言ってから振り返り,
「じゃあ、リカルド、あとでね」
と手を振った。
「ああ、リアも気をつけて」
男性はまたその建物へ戻って行った。
無事に講堂での入学式に間に合い、校長の挨拶を聞いた後、新入生代表の挨拶に移った。
「新入生代表、前へ」
壇上に上がったのはリアだった。型通りの挨拶を述べた後、こう付け加えた。
「願わくば、この世界が幸いにみちたものになりますように。新入生代表、リア・D・フォーレ」
その瞬間、講堂の天井から光の花びらが降り注いだ。