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重めの彼女とお話するだけ  作者: 夏野恵


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第78話 やっと正体を現したね、ビビりくん

「じゃあ私帰るけどさ、君、百均で清潔なハサミを買った方がいいんじゃない?」

「今開いてるかな」


スマホで時間を確認すると、微妙な時間帯だった。


「いやそれ以前にこの状態で一人で帰るのは怖いから送ってよ」

「それならまあ」


手早く準備を済ませて玄関から出た。

エレベーターで降りてエントランスを出る。


「やっぱ夜に散歩するっていいね」


しばらく歩いていると、おもむろに彼女が口を開いた。


「散歩っていうか帰宅じゃない?」

「歩いてるから散歩でしょ」

「なるほど」


とりあえずそういうことにしておこう。


10月らしい風が吹く。

湿り気を帯びた涼しい風だった。


「あー百均閉まってるね」


がらんとした駐車場に視線を向けながらつぶやく。


つい数分前に閉店してしまったみたいだ。

明日買うことを決めてから、彼女の夜道をお供することに。


「ていうかさ、ホラー映画見た後に夜道歩くのって怖くないの?」


ふと疑問に思ったので尋ねてみた。


「だってホラー映画って創作じゃん」

「創作だけどさ、普通に怖いでしょ」


なんならトイレに行くのもちょっと怖くなったりする。

彼女は肩をとん、とぶつけてから続けた。


「やっと正体を現したね、ビビりくん」


暗闇で彼女の表情は見えなかったけど、おそらくニヤニヤしているはずだ。


「まあビビりって生存本能に関わってきそうだし」

「でた、謎の理屈で正当化するヤツ」


「普通にダサくない?」と彼女。


「じゃあ今から怖い話とかしてもいい?」

「なに、自信あるの?」

「まあそれなりに」


学生時代は某掲示板の怖いスレを読み漁ってたし。

自信ありげな雰囲気を出していたからか、彼女は興味を示した。


「帰り着くまでに終わる話ならやってみてよ」

「どういう系のジャンルが苦手とかある?」

「まあヒトコワ系が好きかな」

「好きだったら別のジャンルするけど」

「いや怖い話で好きは苦手ってことでしょ」


彼女は当然のように呟いた。


あれ、彼女って怖い話ガチ勢かも。

界隈の常識みたいなのをさらりと出してきたし。


「じゃあヒトコワ系の怖い話なんだけど……」


彼女を怖がらせるため、自分史上屈指で怖い話を始めた。

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