第19話 返事なしにスタンプ一個ポンってどういう考えしてるわけ?
「君の返信、いつも雑じゃない?」
伝えるの忘れる前に言っておくけどさ、と付け加える。
忘れるくらいのことだったら、そこまで重要ではないのでは?
「雑かな」
「いや雑だって」
こちらに拒否権はないみたい。
彼女はスマホをこちらに見せる。
「まず今回、私が出掛けようって言ったよね?」
やっば、確認してくる感じか。
これは長くなるぞ…
そうだね、と頷く。
「で、そのあとにどこに行きたいって君に聞いたよね?」
「聞いたね」
「そのとき君なんて言った?」
「えーっと…」
自分のスマホで彼女とのやり取りをスクロールして確認する。
「えっと、『どこでもいいよ』って言ってるね」
「そんなことある?」
これ、友だちと出かける感じじゃないからね? と付け加える。
「そのあと、日にち、場所、時間、何聞いても『なんでもいいよ』ってどういうつもり?」
君、生成AIじゃないよね? と尋ねられた。
友だちからは機械よりの人間って言われることが多いけど。
「行きたいところがあるんだったら、それに合わせようかなって」
「君の行きたいところの話をずっとしてたのに、私のせいにするの?」
「いや、そういう意味じゃなくって…」
ちょっとヒートアップしてきたな。
生成AIだったら冷却が必要そう。
「じゃあ次はちゃんと行きたいところいうから」
「1回提案したら満足するつもりでしょ」
「…」
何も言い返せなかった。
図星です。
「まぁ、最悪それは流すとして」
「うん」
「最後の返信が一番悪いよね?」
「そうかな」
「だから悪いんだって」
やっぱり拒否権ナシ。
本当かな、と思ってそのやり取りを確認してみる。
「返事なしにスタンプ一個ポンってどういう考えしてるわけ?」
せめて返事に添える感じでスタンプでしょ、と彼女は付け加える。
「これじゃスタンプがメインディッシュのハンバーガーになってるじゃん」
ハンバーガーチェーン店でメインディッシュのフライドポテトです、って言われたらどう思う? と尋ねられた。
さっきハンバーガー食べたから分かりやすい例えだね。
「ほら、このスタンプのウサギの横に『ありがとう!』っていう文字あるじゃん」
「いや、それ四捨五入したら文字じゃないから」
このスタンプ、どう見てもウサギメインでしょ、と彼女。
「でもスタンプの割には『ありがとう』のフォント強調されてるよ?」
「そういう話をしてるんじゃないんだけど」
彼女はそう言って溜め息を吐く。
「てかさ、前にもそんなことなかった?」
スマホをスクロールし始めた。
そんな前のこと掘り返す?
「…あった、私の『今日は電話できる?』っていうのに君、スタンプ1個だけ」
ウサギが泣きながら土下座してるスタンプだった。
「ちゃんと土下座しながら送信しましたよ、っていうのを最も効果的に表現できるっていうか…」
「スタンプ1個送っただけでしょ」
全然申し訳なさ感じなかったんだけど、と付け加える。
「ちゃんとさ、文章で返事してくれない?」
「ちゃんと文章で返事すればいいんだよね?」
「そうだけど、何その確認の仕方」
めっちゃ気になるんだけど、と言って疑いの目を向ける。
「断るときはこういう感じにするから!」
そう言って文章の案を読み上げる。
『
いつも大変お世話になっております。
お電話の件につきまして、検討いたしましたが、スケジュールの都合により対応が難しい状況となりましたため、ご連絡申し上げます。
ご期待に添えず恐縮ではございますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
』
「文章で書いてるし、申し訳なさもちゃんと出てるよね!」
「彼女に送る文章じゃないでしょ」
『いつも大変お世話になっております』じゃないって、と彼女。
大変お世話になってるんだけどな。
ここで言ってるのはお世辞じゃないんだけど。
「ていうか断るとき、途中の文章ちょっと変えるくらいしかしないでしょ」
結局手抜きになってるじゃん、と言って彼女は溜め息を吐いた。
特別なあなたへ。
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これからもよろしくお願いします。
夏野恵




