エルカーンを狩れ!
私たち3人の先を、フリクトンさんが歩いていく。
といっても相当な速さで、気をゆるめたら置いて行かれそうだ。
出発前、カイ様がフリクトンさんに
「この3人に、指南をしてあげてもらえませんか」
と頼んだ手前、やってくれているのだろうけど。
木の根につまづいて、メイドさんが倒れこんだ。私はハッとして立ち止まる。
「大丈夫ですか?!」
従者さんがとっさに支えになってくれ、ケガはなかったみたいだ。
ただ……フリクトンさんの姿はない。
そして、獲物の気配。何かが羽ばたくような音だ。
「ウッド・ターキだな。でかいぞ」
従者さんがつぶやいて、羽ばたきの気配のほうへ近づいていく。
だいぶ距離があるみたいだけど、従者さんはクロスボウを引き絞り、放った。
ヒュオッ……!
残念。あと少しのところで、外したみたい。
と思っていると__クアアッ、とけたたましい鳥の声がした。
駆け寄ると、大きなウッド・ターキが腹を見せ、動かなくなっている。1本の弓で、見事に射貫かれていた。感心していたら、フリクトンさんが木々の間から顔を出した。
「……運搬、頼んでいいか」
メイドさんが笑顔でうなづく。けっこう、大きな獲物だ。持ち帰るのも一苦労と思っていたら、メイドさんがアイテムボックスの呪文を詠唱。開いた空間にひょい、と仕舞い込んだ。
思わず手を叩いたら、従者さんとフリクトンさんから
「シーーー!(獲物が逃げる)」
と同時に言われ、ちょっと凹んだ。
私も何かしたいけど、森で火の魔法を使うのは、火事になりそうだ。
その後は、フリクトンさんにくっついて、10匹以上の獲物を得られた。
野ウサギや鳥が主だ。それに、川魚も。
いくら大ぶりの魚でも、狙いを定めるのはかなり難しいハズ。さらに、水中では矢の威力が消されやすい。それを、さらりとやってのけるのだ。フリクトンさんにしかできない高度なワザ。
見て学ぶようにと言われたけど、真似ができる可能性があるのは、この中だとクロスボウ使いの従者さんくらいじゃないかな。
……その従者さんは、何かをあきらめたのか川釣りに切り替えてるみたいだけど。5匹はゲットしてるから、釣りの腕前はある。
「ナガメさん、そっちに行きましたよ!(小声)」
「は、はーい!(小声)」
メイドさんは風魔法の使い手らしい。本人が言うには、中級にとどかないくらいの。
……のわりには、けっこうビュンビュン大風ふいてるんだけど。
私がフライパンで追い立てたところに、メイドさんの風魔法で操られた金属のニードルが命中。
追っていたアナグマ風味の動物は、その場で動かなくなった。
「やったっ!」
「よかったですね」
これで2匹目!本当に嬉しい。思ってたより、楽しいかもしれない、狩り。
「ふむ。では、戻ろうか」
とフリクトンさんが言い出し、一行が野営地へと戻り始めた時だった。
……フリクトンさん、いまの狩り見ててくれたみたいだけど、突っ込まないでくれるの優しい。遅っそ~い!とか、ムダな動きが多すぎる~、とか。
そのとき、少し遠くから悲鳴が聞こえてきた。
「……けて、助けてくれぇぇぇー!」
従者さんが反射のように走り出し、私たちもあとを追った。
声の主は、どうやらもう1人の従者さんだ。……ということは。
「アイリー、アイリーはどこ?」
嫌な予感しかない。声の方向に近づくにつれて、ひづめの音と、大きな振動も感じる。
「これは、いかんっ……!」
と、フリクトンさんが口走り、これまでで1番の早さで駆け抜けていく。
そして、その勢いとともに木の幹を駆けのぼる。ものすごい、身体能力。
日没が近いせいか、土ぼこりで隠されているのか。何が起きているのか、よく分からない。焦りがつのる。
フリクトンさんが額に汗をかきながら、弓を引き絞った。
その先には___。
2メートル近くある、枝分かれした大角のエルカーンに追いかけられ、必死の形相で走るアイリーの姿。
私は、思わず走り出した。
と同時に、矢が放たれ、エルカーンの胴体に命中した。
よろけて足取りをゆるめるエルカーン。
だけど、どうやら1発では仕留められないみたいだ。少しだけよろけながら、アイリーのほうへ向かっていく。
今度はクロスボウの矢が飛ぶ____これは、大きな角に弾かれ、折れて地面へ落ちた。
「ア……アイアン・スプラッシュ!」
私は必死の思いで走りながら呼んだフライパンを、エルカーンに振りかぶる。しかし、エルカーンが方向転換をして、大きく外れた。
ただ、私の声に驚いたのか、エルカーンのダッシュが少し遅くなる。
ビューーーーーーン!
勢いよく放たれた矢が、今度はしっかりとエルカーンの胸部深くを捉えた。
エルカーンは、苦し気にうめく。その場で足がもつれるようにグルグルと旋回したあと、地面へと崩れ落ちた。
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