第二十八話 -扉は開き収束を見せる-
-yuuto side-
「あちちっ。んもー、火の用心って言葉知らないの?」
と、炎の中から声が聴こえた。
兵士は全員意識を失っている。
声を出せる人物は僕とフィニーアだけのはずだ。
だが、炎の中にいるのは僕でもフィニーアでもない。
――ゴショウジマ ウミネコだけだ。
「アタシ熱いの苦手だしこれ消すよー?」
上級魔法の炎に飲まれているというこの状況でも彼女の軽さは一向になくならない。
彼女の軽さは単なる軽さではなく余裕という奴なのだろうか。
フィニーアの最大魔法の一つを防ぐ・回避するという様な生存するという結果を出せるのは勇者でも不可能だ。
魔族も例外じゃない。
それ程の魔力と知識と技量をフィニーアは持っているのだ。
――突如突風が不自然に巻き起こる。
突風というのは甘い表現かもしれない。
言うならば嵐に近い。
突風と呼べる程の風が幾度となく肌を刺激する。
威力としては大したことはない。
下級魔法以下の威力でしか無い。
通常は何ら危惧する事じゃない。
通常は、だ。
見るとフィニーアの炎は例外なく消滅していた。
おそらくこの風によって打ち消されたのだろう。
この弱い風に打ち消されたのは良い。
何か仕組みがあるんだろう。
問題は、その発生源が魔法ではないという事だった。
勇者としての恩恵を受け取る僕でさえ辛うじてそれらしいものが見えるという程の速度でゴショウジマ ウミネコは両手を振るっていた。
それでこの風を発生させているらしい。
言ってしまえば彼女は素手でフィニーアの魔法を打ち消したということになる。
それも勇者でも何でも無く、日本人であるだろう彼女が、だ。
規格外にもほどがあるし信じられない。
日本人の形をした別の何かなのではないかという考えが出る。
「こーれじゃ、大した事ないなぁ。山火事に巻き込まれた時の方が焦ったよー」
腕を振るい終えた彼女はそう言った。
フィニーアのあの魔法が大したことがないと言ってのけた。
「っく! 我、力を求め――」
フィニーアが再度呪文の詠唱を始める。
先程のような強力な魔法は望めない。
魔法は上位になればなるほど詠唱が長くなる傾向にあるのだ。
「フィニーア! 上位魔法を使ってくれ! その間は僕が持たせる!」
何か言おうと口を開いたフィニーアだが、ソレを飲み込み、口は詠唱のために働かせ始めた。
後は僕が守るだけだ。
一度出来た。
次も出来ないという道理はない。
「単一の上算!」
だが、甘い相手ではない。
それは痛いほど理解しているつもりだ。
先程の防衛は実の所奇跡の産物。
だが、僕は全力をつくすまでだ。
「!」
彼女は何かを感じたのか、悠々と立っていたが瞬間移動の如く後方へと移動し距離を開けた。
「そっれはマジモンだねー。危ない危ない。てきとーにやってちゃ負けちゃうなぁ。なにそれ魔法? いいよねソレ便利じゃん便利ー」
軽い口調とは裏腹に彼女の顔は引き締まっていった。
相変わらずこの状況では不気味としか取れない笑みは浮かべたままだったが。
「一回戻ってなきゃ不味かったよー」
と訳のわからない事をつぶやきながら彼女は袖を捲った。
そこに見えるのは腕輪――?
魔法はてんで使えない僕だ。
見落としている可能性が大いにある。
フィニーアの意見を仰ごうとしたがよく考えると今は詠唱中なので会話は成立しない。
……相当焦ってしまっているらしい。
さっきの彼女の戦いぶりに圧されてしまっている。
完全に飲まれているというヤツだ。
フィニーアを見るも何も反応を示していない。
どうやらハッタリのよう――だ。
「これって曲芸者に渡すべきだと思ってたけど案外使いやすいから気に入っちゃったかもなぁ。戻ったら曲芸者でもやって稼ごうかなぁ」
手には二本のナイフ。
宙には無数のナイフ。
浮いているのではない。
幾つかはジャグリングの様に器用に投げている。
が、大半のナイフに彼女は触れていない。
投げたナイフがナイフへと当たり地面への落下を防いでいるのだ。
一般人から見ればナイフが宙に浮いているようにしか見えないだろう。
彼女の上半身をナイフの円柱が覆っている形だ。
背後のナイフも落下阻止している所を見ると背中に目と手が生えているのではないかと思える程だ。
決して人間が出来ていい所業ではない。
突如、凄まじい熱量が横を通り過ぎた。
見る限りフィニーアが魔法のランクを下げて急遽放った魔法らしい。
「どうした?」
と、声をかけようとしたが出来なかった。
「なに、あれ……?」
ありえない、という顔をフィニーアは浮かべていた。
「格納魔法じゃないのかい? それならフィニーアだって使えるじゃないか」
そう、あの程度ならなんら問題なく格納できるはずだ。
武器庫丸々だって格納してしまうんじゃないかと思っているぐらいだ。
「私には無理よ」
一瞬、冗談かと思ったが、フィニーアの口調に余裕がなかった。
僕には勇者だからか何時も敬語を使っていたのだけど今はそれもない。
「只のナイフなら何千本でも格納できるわよ! でもあれは只のナイフじゃない! 全部が魔法武器よ! それも魔族でも作れない程の魔法――」
叫ぶようにいうその台詞が途切れた。
フィニーアの口は震え身体も同じように震えている。
ゴショウジマ ウミネコの攻撃を受けたのかと思ったがフィニーアは倒れない。
ソレを見る限り攻撃を受けたわけではないようだ。
だが、尋常ではない状態に僕は呆気にとられるばかりだった。
「……それは貴女が作ったの?」
フィニーアは搾り出すかのようにか細く震えた声でそう呟いた。
漏れでたかのように弱々しい。
目は見開き額には汗がにじんでいる。
僕もその様子に釣られて嫌な汗をかいているのを感じた。
「うーん、アタシじゃないよ。アタシ、魔法なんて使えないしー」
このフィニーアの様子を見ても何ら反応を変えない。
相変わらず軽いノリだ。
聞いているだけで軽々しくなりそうな台詞だった。
「言いなさいよ! 誰が作ったって言うのよ!」
「フィニーア! 落ち着くんだ!」
たまらず僕はフィニーアを止めてしまった。
止めてしまった、というからには僕もフィニーアの台詞の続きを聞きたかった――いや、彼女との会話を続けて欲しかったという気持ちがあったのだろう。
「それは言えないなー。余計なこと言うのを許されるのは愚か者と阿呆だけだよねー」
軽い口調で未だにナイフを滞空させ続けるとう人外の動きを続けている。
間違いなく彼女は規格外だ。
規格外なのだが――
「フィニーア、そう慌てないで。彼女をここで倒せば何とかなるだろ?」
そう、規格外は彼女ぐらいなはずだ。
そうであって欲しいと願っているのはわかる。
だが、現実的にあんな例外で規格外な人物がそうそういていいものじゃない。
「ユウト様……、それは多分無いです。彼女さえ倒せないんじゃこの先やっていけない。魔王は倒せても彼女と恐らくいるであろう仲間が敵であるなら勝ち目は間違いなく無いです。彼女は敵ではないと言っていますがそれがいつ覆るかという保証はないですし」
口調が敬語に戻り落ち着きを取り戻したかと思った所だが、今度は僕が穏やかではなくなってしまった。
フィニーアの言葉は一体どういう意味なのだろうか。
比喩にしては理解しかねる内容だ。
幾ら彼女が規格外だと言っても、勇者全員を含める全勢力を向ければ間違いなく倒せる相手ではあるはずだ。
被害は大きいものかもしれないけど決して絶対的に負けるという相手ではないはずだ。
「結論から言います。彼女が持つ武器は魔法ではあり得ないです。その全てが言葉をかりるなら、規格外ですね。あれは魔法ではありません。規格外という言葉では適切ではなかったかもしれませんね。元は私達が扱う魔法だったかもしれませんが既にそれの域を数段超えているようです。今、私達や魔族が新たな魔法を研究していますが、その程度なら児戯にも劣るという程です」
魔法は、魔力を編み数式のように綿密に形成されたものだ。
初期に編み出された魔法はソレほどまで綿密ではなく感覚的なものだったが、研究が進むに連れ此の様に定着してきていた。
そう、フィニーアに僕は聞いた。
ゴショウジマ ウミネコ。
彼女自体規格外だけど、その仲間も並ではないらしい。
「先程格納できないと言いましたが、それはあのナイフ一本一本が信じられない程濃密で繊細な別の体系の、今までの魔法理論等覆すのは容易なほどのモノだからです。そもそもの存在の比重が並ではないのです。格納魔法もですが、現存するあらゆる魔法はその存在の比重に及ぶものにしか影響を与えられません。つまり、彼女が持つナイフの一本は今国にある武器庫を十積んでも及ばない」
僕たち人間だけでなく魔族の武力の大半を魔法が占めている。
それは超常的で絶対的なものだからだ。
それの根底的なものを壊してしまうほどのもの――壊滅的に手も足も出ない。
そんなものが目の前に気軽に存在しているということらしい。
魔族も到達できないその領域に到達している存在。
いや、幾ら何でも今思っているほど進展しているなんてことはないだろう。
現実的ではない。
そもそも、この大陸で長期間見つからずに無断で研究することは難しいはずなのだ。
「ユウト様も気がついているはずです。私達が魔法武器を作る際と同じように、彼女の持つ魔法武器もそれなりの準備が必要になるはずです。媒体はすぐに用意できるとしても、それを作成する魔力は貯蔵しなければならないでしょうし、それの運用も並々ならぬものでしょう。おそらく、一つ作るだけで、魔族数十人、数百人分という膨大な単位の魔力が必要になるはずです。内包されている魔力から察するにこれは間違いないでしょう」
つまり、今あれを破壊してしまえば当分はどうしようもない可能性があるということだろうか。
しかし、それだと気がかりになるものがある。
どこで、いつ作成したのかだ。
気がつかれずにそれ程のことをやるとなると相当な技量と時間が必要になるはずだ。
彼女に聞いてもその真偽は教えてはくれないだろうからここは憶測で進めるしか無い。
難しいだろうから絶対とは言わないが、可能であれば彼女を捕縛して聞き出したいところだ。
この魔法を超えた魔法については絶対的に聞くべきだろう。
それを扱うことが出来るようになれば魔族との戦闘も一段と楽になる。
少なくとも魔法武器を凌駕する魔法武器を作成することが出来れば魔力を殆持たない者や魔法を扱えない者でも十分に魔族と渡り合えるようになるのではないだろうか。
魔法武器は、個々に込められた魔法により特有の効力を秘めているが、それを使用すること自体は誰でも可能なのだ。
つまり、魔法武器が加わればその数だけ戦力が確実に強化されるということになる。
ある意味魔法武器というものは魔法以上に重要性がある。
特に、箱の勇者である組鳥が魔法武器を相当数手に入れることができるならばその戦闘能力は凶悪になるだろう。
そう考えると、正直現実的ではないゴショウジマ ウミネコの捕縛又は打倒よりも、彼女が持つ武器を幾らか奪うという事に主軸をおいたほうがいいかもしれない。
最初は破壊と考えていたのだがそう考えが変わった。
いや、気がついたことにより変えざるを得なかったと言った方が正直だね。
おそらくだけれど、あの魔法武器は破壊できない。
フィニーアのいう事を鵜呑みにするなら、間違いなく存在の密度が異常なほど高いはずだ。
そうなれば破壊することが出来るかさえわからない。
こちらの方が格段に存在の密度が低いかもしれないからだ。
もし、そうでなくても、それ程のものを破壊すればその際に漏れ出る周囲への影響はどれ程のものになるのか想像さえ出来ない。
破壊できないだろうし、破壊できたとしても破壊してはいけない。
そんな代物なのだ。
出来れば、彼女には味方に、そして彼女の仲間にも味方になって欲しい。
が、現状を見る限りそう言い関係が築けるようには思えない。
そもそも協力的であるならば最初から魔法を超える魔法をこちらに教えてくれたはずなのだ。
そうでないにしてもここまで本格的に戦闘へとなることはなかっただろう。
――いや、この状況はこちらにも多少比があるし、それに彼女の性だろう。
どちらにしても結果は変わらなかったかも知れないな。
「うーん、これって一瞬で作ってたけどなぁ。そんなに凄いものだったのかぁ。知らなかったわぁ」
なんて言ってくる。
どう考えてもこちらの動揺を促していることは明白だった。
つまり、そろそろ仕掛けてくるということだ。
この世界に流されて数年。
そろそろ手に馴染み始めている神器を強く握り直した。
フィニーアも先の台詞以降、ずっと詠唱を行っている。
相対する彼女は反応からしてフィニーアの詠唱に気がついているはずなのだが今の今まで何も仕掛けてこなかった。
余裕というか慢心というかそういうモノを抱いているのだろうか。
ならばまだ勝ち目は無くなっていないということだろう。
慢心王も慢心で負けてたりしていたしね。
「単一の上算!」
再び僕の秘奥を繰り出す。
今回は先程のように彼女が間合いを開けることはなかった。
逆に、こちらに突撃する形で突っ込んできていた。
空間がねじれ、僕の神器が彼女を切り刻もうと様々な方向からほぼ同時に襲いかかった。
が、全て宙空に滞空するナイフ群によって阻まれる。
信じられないことに、滞空している武器に衝突したにもかかわらず切りつけられたかと錯覚する程に通常の斬撃と同程度の威力が秘められていた。
その威力と速度は勇者にも匹敵、いや、凌駕するものがあった。
正直、どんな原理でこうなっているのか理解出来ない構図だった。
空間湾曲による高速斬撃を全て弾いてみせる。
その表情は余裕綽々といった表情だった。
「あれ? アタシなんでこんなに戦ってんだろ。伝言しに来ただけじゃん!」
そう叫ぶと彼女は突如構えを変えた。
マズイ、そう思う間が辛うじてあるか、という瞬間に僕の身体に衝撃が走った。
だが、ダメージはない。
明らかに手加減された一撃だった。
これが手加減されていないものであれば間違いなく僕は死んでいただろう。
一瞬の間に事実上殺された事を不思議と受け入れられる。
それほどまでに彼女との力量差があるのだ。
この勇者である僕よりもだ。
彼女は勇者であったとしても尋常ではない戦闘能力を秘めている。
それは先程から分かっていたことだったが、改めて実感せざるをえなく、もう否定することは出来ない事実として受け入れざるをえないものだった。
「ファクト・バレル!」
フィニーアは炎属性が効かないと踏んでか無属性上級魔法を放った。
無数の光線状の魔力弾が高速で彼女へと向かうも全てを弾かれ、打ち消されてしまっている。
彼女のあの防御は、魔法武器が云々という様な軽いものじゃあない。
おそらく使用しているものがただのナイフでも同じ結果になっただろう。
あの防御は純粋な彼女の力量によるものなのだ。
「――っく! 我、力を求め――」
フィニーアが防がれたと知ると再び詠唱を零すが、瞬間的に彼女が移動し、フィニーアを蹴り飛ばした。
吹き飛ばされるフィニーアは僕の腹へとめり込んだ。
「――ッ!」
僕とフィニーアは互いに咽つつ彼女へと視線を移した。
ここで襲いかかってこないところを見るとやはり、敵ではないのだろうか。
本当に先程の伝言に来ただけという台詞は撹乱でもなんでもないものなのではないだろうか。
冷静になってきた頭を使ってみるとどうも、僕たちが先走ってしまっている気がしてきた。
「――フィニーア、彼女は本当に伝言を伝えに来ただけかもしれない」
僕がそう言うと、頭がかわいそうになってしまったと言わんばかりの目で僕を見つめた。
なんだか悲しい意味で胸が締め付けられる思いだった。
是非今直ぐその目を止めて欲しい。
「んー、そろそろ良いかなー? 取り敢えず、魔族だっけ? あれが即行攻めてくるから注意しろってさ。アタシ達も適当に動いて何とかすると思うよー」
魔族が?
それは聞き捨てならないけれど、彼女の言葉を鵜呑みに出来るものかと考えてしまう。
だけれど、本当である可能性もある。
個人的に言うならその可能性のほうが高いと考えている。
そもそも魔族が早く攻めてくると思って準備を早めること事態にデメリットはそれ程ついてまわらないし、彼女にメリットがあるように思えない。
それ故にこれが事実である可能性が高いと考えたのだ。
準備を早め、勇者達が早めに来るように促す程度のことはしてもいいかもしれない。
「なぜ、僕達にその事を?」
「アタシは敵じゃないってー。ああ、でも何で伝言に来たかと言ったらアタシじゃなくてなー君が協力姿勢だからかなぁ」
なー君というのが誰かは知らないが、言動から考えて、彼女の上に立つ存在のことだろう。
彼女自身は言い方からして敵対意識は抱いてはいないが友好意識も抱いてはいないということだろうか。
その上の存在がいること自身に驚きだけど、その上の存在は僕達――人間に対しての友好なのか、それとも僕達人間の中の誰か限定での友好なのかはわからないけれど――に協力的なのは大きいと言わざるをえないだろうね。
「貴女の言葉を鵜呑みにするとでも思っているの? こちらは貴女に兵を100人以上倒されてしまったのよ」
確かに、その事を軽く見ることは出来ないけれど、それでも尚、その上の存在と穏便に、正式に協力関係を築くほうが建設的だろう。
その事を思うと、フィニーアは冷静に慣れていないのかもしれない。
フィニーアは突発的というか、常軌を逸した出来事に直面すると頭が真っ白になる傾向にあるらしいと以前兵の一人に聞いた覚えがあった。
「んー、まあそれは悪かったかなぁ。でも、一人も殺してないし良いじゃん」
「ふざけないで!」
軽い口調だったからか、フィニーアは叫んだ。
腹に据えかねるというヤツだろう。
フィニーアは勇者の僕とは違って元々彼ら兵と同じ立ち位置にいたので友人などが多かったのだろう。
フィニーアは友人や知人を大切にする人間なのだ。
それ故に冷静さを保っていられなかったと考えるべきかなぁ。
さて、今の問題は、ゴショウジマ ウミネコ次第では友好関係を築けないという可能性があるということか。
もし、何らかのことが気に入らず、怒り、上の存在に友好関係を覆すほどの何かを言ったとなると芳しくは無い。
もちろんそれは望むものじゃない。
「ふざけてないよ。だってさー、今戦争をおっぱじめようって感じでしょ? 戦争になったら敵に倒されて生きてるほうが少ないって。戦争じゃなくて規模の小さい紛争でもそうだったんだしさー」
彼女は軽い口調を保ったままだ。
寧ろ、軽い調子意外は出来ない病気でも患っているんじゃないかと思ってしまうほどだ。
だが、今はそれが良い方向に働いてくれていると信じるしかできない。
おそらく、彼女一人にさえ勇者全員が集まっても勝てないだろう。
もし、彼女のような存在が複数人いるのであればそれはどの軍事力をも凌駕する戦闘力を秘めていることになる。
事実上世界を握っているということになる。
「うん、まぁ伝える事は伝えたからもう行くねー。なー君待ってるしねぇ。ワキワキあんまりできてないしー」
ワキワキというものが何かはいまいちわからないが、この緊張場が終了することが告げられた。
フィニーアもようやく冷静さを取り戻したのかもう叫ぶ事はなかった。
彼女を眺めるだけだ。
どうやら、彼女が敵対意識を抱いていないのは、こちらに悪い印象があるなしではなく、ただ単に興味がないかららしい。
興味の対象以外の事は完全にどうでもいいらしい。
「じゃ、また会うことがあったらよろしくー」
と、友人と別れる際のように元気に手を振り、瞬間的に掻き消えた。
出入り口の扉が揺れている事から、高速で立ち去ったらしい。
「・・・・・・どうするんですか?」
フィニーアが声をかけてきたことで僕が険しい顔をしているらしいことに気が付いた。
その顔を崩し僕は命令を下す。
「今すぐ、戦力を集結させよう」
彼女が伝えた言葉は信用に値するだろう。
こちらとしてもデメリットはそうある訳ではない。
決戦の場はそう――遠くは無い。
個人的理由により今まで通り定期的な更新ができなくなるおそれが出てきました。
更新を待ってくれている方がいましたら申し訳ない思いです。
催促などがありましたら、更なる善処を図りたいとは思いますが、無くてもある程度善処はしようと思います。




