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魔王物語  作者: ragana
21/40

第二十一話 -狂人は狂人を呼ぶ-

お気に入り人数が100になりました。

皆さんありがとうございます。

これからもヌルヌルと書いていけるように努めたいと思います。

 ――そういえば俺はエドルにベヒス嬢に会えという旨が書かれているらしい紙を貰っていた。

 結果的に言うとその状態は満たしたのだが、おそらく俺が修行するような事を言っての別れの際に渡されたのでベヒス嬢から何かを教われという事だったのだろうか。

 確かにベヒス嬢と戦闘――殺し合いだが――を行うことで幾らか学ぶものはあったと思う。

 だが、よく考えてみると、エドルがあの状態になると先読みできるはずが無いのである。

 できるのならそれは人間の所業ではない。

 詰まり、別の何か学べると思えるものがエドル的にはあったのだろう。

 思い当たるものは無くは無い。

 ベヒス嬢の剣術辺りではないだろうか。

 あれは、中々に実践的な剣術であると思う。

 俺の師匠たちは専ら豪快であったのでベヒス嬢のような小型の剣はあまり使用しなかった。

 だからその辺りの専門性は欠けていたのである。

 そんな彼らに教わった俺も当然その辺りの専門性に欠ける。

 ある程度学べはしたがその程度止まりである。

 万能なものではなくどこか欠如・欠点がある特化せいのものばかりであったからある程度学べたのかもしれない。

 ベヒス嬢のそれは欠如した、というか苦手というか。

 そういう欠けた部分を補うのに最適であるように思えるだろう。

 だが、ベヒス嬢のそれは実践的であるが故に今すぐ身につけるのは難しいのではないだろうか。

 あくまで、先の仮説の通りであるならばであるけれども。

 ベヒス嬢のそれはそれだけで実践的たる汎用性や効果があるのである。

 言ってしまえば万能の部類。

 俺が身につけたそれらとは全く違うものである。

 エドルには悪いが会得するかは見送ることにする。

 もしかすると、それ以外の何かに目をつけての紹介であるかもしれないので目は光らせておくべきだろうけれども。

「――スニント国でエドルに逢えず、行き先も掴めなければどうしますか?」

 食事を終えたベヒス嬢は一息ついたところでそう切り出した。

 ベヒス嬢のその質問は非常に痛いところを付いていた。

 俺もその事態は想定していない訳ではない。

 寧ろ、その可能性が高いだろう。

 ベヒス嬢の件で、というか、俺の件もだけれど、騒動が起きていなければある程度動ける為調べればその辺りはなんとかなるだろう。

 だが、現状騒動が起きているか、騒動が起きていたとしても他国に伝わるほど大きくなっていないか。

 それらが一切合財わからないのである。

 今から考えると、ほぼ人と関わらないような生活を俺はここで続けてきたわけだが、もう少し関わってある程度情報を得られるパイプを作っておくべきだったと後悔した。

 まあ、指名手配されていたら大概のパイプは使用できなくなっているだろうけれども。

 それにしても指名手配されているとわかる分今よりマシであるのだけれど。

 もし、指名手配されていたら理由は恐らく勇者の一人を倒したっつー事だろうな。

 運が悪ければベヒス嬢誘拐とか言うあらぬ嫌疑をかけられている可能性も無くは無い。

 一応、ベヒス嬢は自主的に出てきて、仕事引継ぎ的な処置もしてきたとの事だが基本的に無断である。

 そうとられてもおかしくは無い。

 寧ろ無難だろう。

 いや、わかっていてもベヒス嬢を取り戻したいが為に敢えてそう言い張ってくるかもしれない。

 事実の改変にちょうど良い材料が転がっているのである。

 利用してくる可能性は大いにあると考えていいだろう。

 俺なら間違いなく利用するだろうし。

 さて、そう考えると俺も気楽に構えていられないだろう。

 生憎と、指名手配になった事は何度もあるが、そのまま逃げ切った経験は一度も無い。

 別段逃げる理由が無かったから逃げなかったというのもあるのだが、無いものは無いのである。

 経験が無いだけでなく知識もないといっていいだろう。

 あったとしてもこの世界は以前の世界で言う警察のような体系が無い様に思う。

 一応、軍がそれらしいものであるけれど、同じように機能するかと問われれば恐らくそれは無いだろう。

 俺は寧ろ猟兵に依頼が出て動くのではないだろうかと睨んでいる。

 ベヒス嬢が従えていた騎士達を見る限り猟兵のほうが実力があるものがいるだろう。

 数を視野に入れれば明らかに騎士が総合的に勝るだろうが、今はたった二人の捜索、そして片方の捕獲である。

 それだけの作業であるならば人数は要らないため猟兵のほうが優れた機能を示すだろう。

 エドルは同じように国の任務に既に着いているためエドルに白羽の矢が断つことは無いだろう事が幸いである。

 ベヒス嬢が絡んでいる内容であるので恐らく強者が来る事は間違いない。

 少なくとも、ベヒス嬢の捜索、又は勇者の一人を何らかの方法で結果的に倒し、ベヒス嬢を拉致した疑いがある存在の捕縛となるとそれは当然だろう。

 そんなヤツを相手にする可能性があるわけだが、俺はこのままで対処できるだろうか。

 答えは否と答えておいた方がいいだろう。

 身体の変化に気が付いたとはいえ、所詮気が付いた程度である。

 ある程度修練を行わなければそれに馴染む事は無い。

 そもそも、それだけではない。

 この世界には魔法が存在するのである。

 幾ら俺がその方面に対して神の恩恵があるとは言っても無敵ではない。

 当然弱点はある。

 まず、あの魔道書を展開している際にしか膨大な知識を使用することが出来ない。

 幸い、経験は蓄積されたままなのだけれど。

 それを克服するには、常時ばれない様に魔道書を展開するか、そもそもそんなものが必要ないぐらいに魔法に精通するかであろう。

 前者はどう考えても無理があるし、後者も俺が暗記科目が苦手であることを語れば悟ることが出来るだろう。

 一度成功すればある程度恩恵によって感覚的に使用できるようになる。

 今までの様に初期の初期のような魔法であるならばごり押しで瞬間的に魔法を会得できるだろうが、強者に通用するほどの魔法となると一朝一夕での会得は難しいというか、事実上不可能である。

 最優先はこの身体に慣れる事だが、次にいろいろな方向で魔法について考慮しておいた方がいいだろう。

 そうしないと実際に相対することになった際に対応できないだろう。

「多分、すぐに人里を離れて様子見だろうな」

 最悪そうやって距離をとって時間を稼いで対応できる状態まで持っていく。

 そうなるだろう。

「何故、と聞いてもいいですか?」

「ん? ああ、多分だけど先の件で俺は国家指名手配的な感じになってるかもしれないからな。それが当たっているか否かが判るまでか、もしくは実際に命令によって来るやつ等に対応できる状態になるまでかどちらかになるまでは隠れるつもりだよ」

 ベヒス嬢はその考えに至っていなかったのか驚いた表情をして見せた。

 すぐにその表情は消え、考える素振りを見せ始めたので俺も思考へと意識を向けた。

 実際にそうであるなら今も危険と紙一重であるといえる。

 下手をすれば今奇襲を受けてやられる。

 戦闘次第では死に至るかもしれない。

 この世界に来てすぐの俺なら、んな訳ねーよと一笑するだろうが、エドルたちを見た後だとそう笑うことなど出来ない。

 代わりに顔色を悪くする事はできるようになった。

 全く嬉しくない。

 今から多少対策を講じておいた方がよさそうだ。

 と、言ってもそう大それた事はできないししようとも思わない。

「ちょっと食後の運動してくるわ」

 そう難しい顔をしたベヒス嬢に伝えその場を離れた。

 少し進むと多少拓けた場所に出た。

形状実装(リード)

 俺に出来る事はただ一つ。

 幼い頃から――ある時期を境にサボり続けていたけれど――ぐうたらを覗いて人生の中で最も行ったであろう修行だけである。

 とはいってもこれは鈍っていないかという様な修行の域に到達しないものであるのだけど。

 手にずしりと存在感を伝えるそれは刀である。

 個人的に使用した武器の中で最も扱いが難しかったのが刀であった。

 安直であるが、この身体で以前同様に刀を扱えるようになれば他も再現できる程度には慣れているだろうと想定したのである。

 あくまで想定であるので実際に刀を扱えたとしてもそれ以外も上手くいくとは限らないのだけれど。

 武術・剣術はそこまで浅くは無い。

 が、それでも全てを一から復習している時間は無いだろう。

 一つや二つ程度であるなら先が見えてくるのだろうが、生憎とそうはいかないし、通常より面倒そうなものもある。

 時間ゆえに賭けに近い行為を選択せざるを得ないこの状況に歯噛みせざるを得ないわけだが致し方ないのである。

 刀が扱えたからといって他が扱えるわけではないと聞いて、最悪刀で戦えばいいと思うかもしれない。

 世の中甘くないのである。

 扱いが、会得が難しいからといって効果があるとは限らないのである。

 単刀直入に言うと、俺の知る刀術は戦闘で率先して扱いたいものではない。

 刀は、切れ味がよく、達人クラスであるなら、素材的に明らかに切断不可能なものを切断することが可能になったりするのだが、それは一定の条件の上でである。

 例え俺が刀で鉄を切るような達人であったとしても、それを戦闘に生かせるかとなれば話は別なのである。

 戦闘でもその本領を発揮しようと思えば、相手の動きを完全に予測しなければならないだろう。

 いや、魔法があるからその辺りは補えるとしよう。

 それでも問題は付きまとう。

 その筆頭が刀の虚弱性である。

 鍔迫り合いをしただけで折れてしまうかもしれない。

 刀は切れ味を追求した故にあの形状であるのだが、両手剣の様に頑丈ではない。

 剣の腹で攻撃を受け止めると、曲がるし、下手に切ると刃こぼれしたり、最悪刀身が折れる。

 俺ならばそんなヒヤヒヤしなければならない扱い慣れた武器より、扱いなれていないけど頑丈な武器を選択するだろう。

 通常なら武器が壊れたら無手で行けばいいと考えるだろうが、今回は、相対するなら間違いなく強者という状況なのである。

 無手で対応できるほど甘い相手では無いことぐらいわかる。

 魔法があるので無手ならば文字通り手が出せない可能性がある。

 尤も、その状況に陥る敵がいるなら武器があろうと変わらない気がしなくもないけれど。

「――――さて、と」

 刀を握り構え、目を瞑る。

 日の光が抑え気味になってきていた風景は瞼の御蔭で完全にシャットアウトされる。

 目に映るのは漆黒のみである。

 が、俺には過去が幻視されている。

 ――刀術。

 刀を扱う達人は幾人か知っているし師匠の一人も刀を愛用していた。

 その師匠――綿名というイカれた野郎は、大概の武器に精通してたらしいのだが、刀しか扱わっていなかった。

 本人曰く、刀が最強らしかった。

 ただ、綿名は人を殺すという事を実感する事が趣味の様な野郎であったので、その最強という意味が戦闘力的になのか、殺害を実感できる面での事なのかは判断できかねるので鵜呑みにはできない現状である。

 綿名は師匠の中でも特筆して頭のねじが緩んでいるというか、頭のねじが劣化して破損して紛失しちゃったかの様な奴なのである。

 だが、それでも人が寄ってくる程の実力を兼ね備えていた。

 今、綿名は俺の幻視によって目の前で刀を構えるに至っていた。

 その構えは幾度と見かけた構えであり、俺からすると死の象徴ともいえるものである。

「――狂おしい」

 幻想の綿名はそう呟く。

 浮かべる顔には狂喜しか浮かんでいない。

 俺の脳内にはあのバカ野郎のイカレ具合が染みついているらしく、忠実に再現してくれる。

 口癖だけでなく、あの嫌な嫌な背筋をゾクリとさせるだけしか効力の無い表情も再現しているのである。

 選定を失敗したか――そう思わざるを得ない。

 別段師匠という枠組みに捕われる必要はなかったと後悔するばかりである。

 以前の世界では決して相入れる事はなかったしこれからも相入れる事はないだろう存在である国一も刀使いであったので彼を幻視すればよかった。

 過去の遺恨的に意識的に避けていたのだろうけれど、今となっては過去に戻って分殴りたい思いでいっぱいである。

「ああ、良いな良いぞ。随分良くなった。あの時は無いようなものだったが今はあの時よりも愛おしい。そんなお前を是非とも切らして殺させてくれ」

 そうだったなぁ。

 後悔は正しかった。

 確か、確かにだ。

 この気が違ったようなこいつはこういうノリだった。

 懐かしく思うが、全く嬉しくない。

 出来れば今後関わりたくなかったし、今関わっているという事実を無かった事にしてしまいたいノリである。

 ううむ。

 どうも真剣に過去の自分をどうにかしてブン殴る算段を考えなければならないらしい。

 幸い、ここは俺の想像で成り立つ仮想空間である。

 今は、現実的な世界設定なのでありえない軌道で空中を闊歩したりなどはできないけれども。

「――我ながらここまで忠実に想像しなくても良いと思うけどなぁ」

 もはや妄想癖やら空想癖といった言葉で片付けられるほどの再現率ではないと思う。

 対峙する狂人は刀を構えた。

 様々な武器を扱うにも関わらずその腕前は達人に半分踏み込んだ腕前で、事、刃物や打撃系といった攻撃した際に手応えを十分に実感できる武器はその例に漏れ、達人の域に全身を突っ込んで沈み込んでしまっているのである。

 今、その迷惑な狂人は刀を構えている。

 当然、それは刃物であるので達人の域の腕前なのは明白だが、刀はそれを超越している。

 使い方次第で素晴らしく切れるそれを狂人は気に入ってしまったらしいのである。

 だからこそなのかは知らないが、兎に角、危険であると言っておこう。

「無駄口を叩くな。そんな暇があるのならさっさと掛かって来い! 殺し合おう。死を実感し合おう! いやいや、嫌なら拙者様だけ堪能させてもらうさ!」

 ゆらゆらと、構える血の匂いがしそうな刀や、身に纏う群青色の所々破れた着物を揺らし、ギラギラと嫌らしい笑みと目を向ける。

 慣れていなかったら今直ぐ俺のズボンはびしょぬれになっていただろう。

 何度か見ているので慣れざるを得ない状況であるのでそれはなかったが、手足は痙攣しているのか思えるほど震えている。

 これが、武者震いであるなら格好がつく――いやいや、死を実感するのを喜んでいたらあいつと同じく狂人で変態じゃないか。

 そういう訳で、武者震いだと変人である。

 なので、俺のこれはただ単に震えているだけである。

 怯えていると言ってもいい。

 あー、ううーむ。

 この想像という闘技場は昔の感覚を今の身体に馴染ませる為だけのものであったのだが、選定失敗につきそれを超越した場になってしまったようである。

 ヤバイと感じたらこの瞑想に近い妄想を中断するとしよう。

 あれ以来全くこんな狂気じみた奴にも状況にも遭遇していなかったのだが、ブランク明けというか調整には良い事象かもしれない。

 あの頃を容易に思い出せる。

 俺の口が歪んだように感じたが生憎ここには鏡はないし、想像の中なので作り出せるのだろうけれどそのつもりはない。

 だから、俺のこの口の歪みが本当に歪んでいるからこその感覚なのか、それとも勘違いなのか。

 事実、歪んでいたとしてもそれが喜びか恐れか――それとも狂気なのかは目の前で構える狂人しか知らないし知るつもりもない。

 俺は狂っていないことを切に願って殺し合いに挑むとしよう。





 ――あれから一時間ほど。

 俺の想像の中の時間であるので、実際はほぼ一瞬の時間だったのではないだろうか。

 兎に角、その間、俺はあの狂人と戦っていた。

 勝敗が決したので想像を止めたのではなく、あの狂人に耐えられなくなって止めた。

 言ってしまえば敗北なのだろうけれども。

「もう二度とあの変態変人を選ぶのは止めよう」

 あいつとは何度も会っていたのに何でアイツを選んだろう本当に。

 後悔しても仕切れない……。

 そんな俺はやつれてしまっている。

 見なくてもわかる程である。

「大丈夫ですか?」

 と、ベヒス嬢が心配する程に。

「ああ、大丈夫だ。――多分」

 正直、自信なんてものはない。

 ベヒス嬢も同じ心境なのか、心配そうな顔は耐えない。

 うむ。

 やっぱりアイツをチョイスすべきじゃないな。

 何があってもやらないようにしよう。

 というか、師匠全員が宜しくないような気がするけれど気のせいだろうか。

 いや、綿名みたいにイカれた奴はそうそういないけれど。

 綿名とはまた別の方向でオカシな奴らの集まりが俺の師匠なのである。

 師匠は最初一人だったのだが、その師匠が失敗であった。

 知らぬ間に師匠が増えていた。

 何時の間にか弟子扱いになっていたのである。

 初めて会って挨拶する以前に弟子登録されていた事もある。

「どうした?」

 ベヒス嬢が何やら気がついた様子である。

 おいおい、一体全体本当にどうしたというのだろうか。

 ベヒス嬢はどういう訳か携えていた剣に手をかけている。

「ナーク、今思い出したのですがここは『神隠しの深緑』と呼ばれている森です」

 そんなに有名な森なのか。

 確かに、コレほど大きければ有名になるのも頷ける。

「いえ、この森はそれ程大きくはありません。地図上は、ですけれど」

 引っかかる口ぶりである。

「この森の中心部付近が魔力の溜まり場になっていて、空間が乱れているのです。それ故に通常以上に空間が広く感じるのです。それに、外界からこの湾曲空間を視認することは出来ませんし、魔力による感知も、この場所に蓄積された魔力とその乱れで行えません」

 ここにいれば安全だと言いたいのだろうか。

 だが、それでも剣にかけた手の説明がつかない。

 いや、待てよ。

 もしや、ここに巻き起こる魔力力場の乱れで魔力探知だけでなく、気配察知も出来ないのだろうか。

 そして、ベヒス嬢は何らかの索敵方法を持っていて、察知した、と。

 ――追手が来たということか。

 それならば納得が行く。

 ならば察知は出来ないようだけど周囲の警戒をすることにしよう。

「――ナーク私と戦いましょう」

 と、言いつつベヒス嬢は俺へと剣を突いてきた。

 危うく突き刺さるところであった。

 残念ながら俺はまだ串焼きにはなりたくないのでそれを辛うじて回避する。

 そんな俺の頭は混乱の極みであった。

「どうしたどうした」

 まさか、魔法で操られているのだろうか。

 魔法の知識は皆無と言えるので俺が気がつかないのも仕方がない。

 ベヒス嬢が魔法の餌食になったのは理解しかねるが、もしかするとあの黄金色のあれに関して詳しいだけかもしれない。

 そう考えると有り得なくはないことである。

「いえ、そういう訳ではありません。ここは、外界と遮断された領域と言って差し支えありません。それに魔力感知も出来ない。一種の結界に近い場所なのです」

 ああ、そういう事か――。

 出来れば断りたい。

「いえいえ、今後の事を考えるとその方が効率的でしょう。大丈夫です。前回のように戦略性のない戦いはしませんから」

 だったら尚更危険である。

 確かに、俺が身体に慣れるには良いかもしれないが、下手をすればどちらかが怪我をする――いや、死にかねない。特に俺。

 上から黄金色の円柱のようなものが降ってきた。

 客観的に見ると、唐突に上空から黄金色の光線が放たれたように見えただろう。

 円柱の長さ的にそう見えてもおかしくないのだけれども。

 ……どうやらベヒス嬢は本気のようである。

 確かに、俺達が戦い合えばベヒス嬢も訓練になるだろうし、俺も身体を動かすことになるので慣れていくだろう。

 だけれど、俺は一撃でも喰らえば蒸発死なのである。

 ベヒス嬢は俺が致死性の低い動きのみに徹すれば何とかなるだろうけれども。

「致死性の高い技もどんどん使ってください。――師が言っていました。死と隣り合わせである程強くなると」

 と、言われても俺は全然乗り気になれないのだけれど。

 ――仕方ない。

 回避に専念してベヒス嬢が諦めるまでそれを続けるか、致死性のない動きで戦闘不能へと持ち込むか、諦めるほどの実力差を見せつけるかだ。

 三つめの選択肢はまず無理だから諦めるとして、残り二つの選択肢である。

 ――回避に専念しよう。

 最悪、受け流しに移行するぐらいの気持ちでいこう。

 俺は手にあった刀を構える。

「どうやらやる気になったようですね」

 無表情で感情のある声をかけられるとゾクリとする。

 恐怖的な意味で。

 ベヒス嬢ってたまに変なスイッチでも入るのだろうか。

「私も心置きなくいけますね」

 ベヒス嬢が増えた!

 なんて在り来りなものではなかった。

 人形の黄金色の何かって触れたら蒸発しちゃうのだろうか。

徐々に主人公を強くしていっているのですが、やりすぎでしょうか。

それとももっと露骨に強くすべきでしょうか。

その辺りなど、それ以外でもどしどしご意見下さい。

参考にさせていただきたく存じます。

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