1、文章作法 【自由間接話法】
前回予告した通り、自由間接話法という小説の書き方についての講座となります。
一人称小説、三人称小説では、共に「視点」という言葉が大きな意味を持ちました。
どちらの人称も極めて簡単に記しましたが、実は結構複雑な内容を孕んだ代物です。
その説明も含めて、解説していきます。
そもそも自由間接話法とは、日本生まれの言葉ではないそうです。
英語で represented speech(描出話法)、ドイツ語で erlebte Rede(体験話法)、フランス語で le style indirect libre(自由間接話法)と表現されるもので、日本には親しみの薄い話法だそうです。
というのも、日本語と中国語に関して言えば、言語の構造からして「曖昧」な表現方法を多く内包している為です。
曖昧というより、複雑すぎて曖昧になってしまっている、と言った方が正しいかもしれません。
どういうことか。
英文には必ず「主語と述語動詞」が含まれますが、その中の「述語動詞」が、文章で表現された内容について、それが「いつ」行われたものかを形に表して伝える役割を担います。述語動詞を通じてどのように「いつ」という時間を表現するかの仕組み・発想のことを「時制(tense)」と言います。
そして、日本語の文法では時として主語を抜いた文章表現もあれば、そもそも述語動詞という表現はなく、時制に関してはワンセンテンスに複数存在することもあるわけです。
こうした言語の構造の違いもあって、英語、ドイツ語、フランス語に存在する自由間接話法を日本語の話法表現に当てはめることが困難になっている、ということです。
これがネット上や書籍上の小説の書き方を教える講座にあって、「自由間接話法」という存在があまり紹介されてない理由です。
日本語の文法上だと、はっきりと区分出来ない視点の曖昧な話法であり、辞書にも載っていません。
語源からしてこのような状態なのですから、中身も理解するのも難しいのですが、噛み砕いて説明していきます。
頭を整理する為に、次のページから「自由間接話法とは?」について解説していきましょう。




