第二十七話 最後の円陣
引退試合まで、あと一週間になった。
本当にこれで終わってしまう。
私は一瞬一瞬を噛み締めながら過ごしていた。
大切にしたかった。
だけど、なんだか身体がだるい。
おかしいなと思って熱を測ると、38.2℃あった。
えっ。
びっくりした。
なんでこんな大事な時に。
だけど、休んでなんかいられなかった。
この時間を無駄にしたくない。
そう思ってしまった。
私は具合が悪い事を誰にも言わず、いつも通り部活へ向かった。
熱があっても、意外と動ける。
そんな事を考えていた。
とにかく休みたくなかった。
だけど、無理は続かなかった。
結局私は吐いてしまい、一日休む羽目になった。
お母さんにも、無理しすぎだと怒られてしまった。
だけど私は、休んでいても落ち着かなかった。
練習に行けないのが嫌だった。
みんな今頃どんな練習をしているんだろう。
そんな事ばかり考えていた。
次の日、少し回復した私はまた体育館へ向かった。
それだけで嬉しかった。
本当に私は、バレーの事で頭がいっぱいだった。
試合までの数日。
悔いが残らないように、目一杯練習した。
みんなで体育館に響き渡るほどの声を出して、やれるだけの事はやった。
だけど、頑張れば頑張るほど切なさも増していく。
これが最後なんだ。
そう思う度に、胸が苦しくなった。
寂しかった。
そして、最後の試合の日がやってきた。
ここまでやってこられて良かった。
このユニフォームを着る事ができて良かった。
そう思った。
みんなで心を一つにして、最後の円陣を組む。
色々あった。
だけど、このメンバーでこの日を迎えられたのは奇跡だったのかもしれない。
「勝とう」
キャプテンの言葉に、胸が熱くなった。
そして私達はコートに並ぶ。
静まり返った会場に、笛の音が鳴り響いた。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
引退前のこの時期は、本当に毎日が特別でした。
練習が終わる度に、「あと何回こうやってみんなと練習できるんだろう」と考えてしまっていました。
だから熱を出した時も、休むのが怖かったです。
今思えばちゃんと休めば良かったんですが、当時の私は「一日でも無駄にしたくない」という気持ちでいっぱいでした。
そして迎えた最後の大会。
ここまで本当に色々ありました。
怪我、人間関係、悩み、苦しさ。
だけど最後にみんなで円陣を組んだ時、「このメンバーでここまで来られて良かった」と心から思えました。
あの時の体育館の空気と、試合開始の笛の音は今でも忘れられません。




