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ドラゴンの国と深淵へのクエスト ~異世界転移したおっさんが、戦場を彷徨う~  作者: 社畜とキメラ
第一章 異世界転移したおっさんが、壊れた魔導書と旅に出る。
9/124

壊れた異世界人 激高

2020/09/04 誤字脱字

コンコンコンコン。

扉をたたいて、しばらく待つが返事はない。

いつものことか。



不明:

「はい」



扉が内側から、開かれる。



ユミル:

「フリストどうした?」


フリスト:

「勇者様がお待ちです」



ベッドを見ると、上半身を起こしている人物が見えた。

酷くやつれていて、その姿は老人のようだ。

全身が熱くなるのを感じる。


ついに……

何事もなかったかのように、ベッドの脇へと進んだ。



ユミル:

「はじめまして。

 情報部伍長、ユミルと申します」


異世界人:

「知っている」


ユミル:

「席に座ってもよろしいでしょうか?」


異世界人:

「ああ」



沈黙が続き、時間が無駄に過ぎていく。

なかなか話を切り出せない。



ユミル:

「何か飲み物を持って来ましょうか?

 ご希望があれば、おっしゃってください」


異世界人:

「あぁ。


 では、毒が欲しい。

 楽に死ねるやつがいい。

 あと刃物も頼む。

 よく切れるやつをな」


ギシッ

椅子の音が、静寂の中響いている


異世界人:

「どうした……

 俺の力になるんだろ?」



嫌な沈黙が続く。



異世界人:

「さぁ。

 早くしてくれ……」


ユミル:

「いや。

 しかし……」



断るべきだとわかっている。

でも僕は力になると、彼に伝えた。

ここで断れば今後……

僕の言葉は何の価値も持たないだろう。



ユミル:

「わかり……ました。

 毒と刃物を、用意するには条件があり時間も掛かります」


異世界人:

「どういう事だ?」


ユミル:

「勇者様、

 あなたは軍にとって重要人物で……

 命は、最優先に保護されています」


異世界人:

「俺には関係ない事だ」



フリストが、心配そうにこちらを見ている



異世界人:

「早く、持って来い。

 俺には、関係ない」



沈黙が流れる



異世界人:

「俺には、何もない。

 もう、何もないんだ……」



か弱い力だがシーツを、強く握りしめていた。

歯を食いしばり。

小さな。

とても小さな声で、うなっている。



ユミル:

「家族は?

 ご家族はどうするんですか!?」



異世界人:

「貴様が……

 それを!

 貴様らが、それを言うのか!?」


.

黒い霧が、何処からともなく現れる。



異世界人:

「俺は、お前たちに頼んだ。

 家族を探してほしいと。

 何度も何度も。


 お前たちは、俺に言ったじゃないか。

 アイツラが生かしておくはずがない。

 死んでるはずだって。


 でも、俺は諦められなかった。

 何度も食い下がった。

 俺は何でもやる、どんな事でもするって!

 だから、家族を探してくれって!


 お前たちは、何と言った……


 異世界人を探すには、金も時間もかかる。

 家族探し?、やってられるか。

 お前のような奴は、

 ただ黙っていう事を、聞いていればいい。

 お前は何様だ!

 家族も守れない奴が、偉そうにいうな!

 そんなに言うなら、何処に居るか言ってみろ!」



椅子から立ち上がり、逃げ出そうとするが、

霧が足にまとわりついて動けない。



異世界人:

「記憶のない、この俺に。


 お前たちは、俺に説明したな……

 魔術と薬漬けで、俺の記憶は奪われていると。

 異世界人を都合よく操るためにやる、奴らの常套手段だと。


 貴様らは、何と言った……

 お前は、頭がおかしい。

 お前は、嘘つきだ。


 家族?、そんなものは妄想だと。

 はじめから、いなかったと。

 お前は、イカれている。

 もしかしたら、お前が殺しているんじゃないか?

 俺が殺したのか?

 本当に、俺が殺したというのか?


 貴様ら!、貴様ら!、貴様ら!

 お前たちは!!」



身代わりの腕輪が、粉々になる。



ユミル:

「待ってください!」


異世界人:

「何を。

 待つんだ……」



残り一つの腕輪も粉々になり、腕が潰れた。

霧が体の自由を奪う。



ユミル:

「待ってくれ!

 僕は、この国の人間じゃない!」


死にたくない。


ユミル:

「僕じゃない!

 そいつらに!

 そいつらに言うべきだ!」


異世界人:

「そいつらなら……

 全員死んだぞ!!」


死にたくない、死にたくない。


ユミル:

「家族は、生きている。

 生きているはずだ!


 あなたは、なぜ生きている?

 何度も、死のうとしたんじゃないのか!?

 それでもすぐに、助けられたはずだ!


 異世界人は、貴重なんだ!

 軍にとって大切な存在なんだ!

 本人の意思と関係なく、生かされるはずなんだ!


 あなたが、一番、良く知っているでしょ?」



異世界人:

「……」


ユミル:

「嫌だ。

 嫌だ、死にたくない。


 僕には、家族がいる。

 妹がいるんだ。

 僕が死んだら、エイルは生きていけない。

 死んでたまるか!

 エイル、エイル!


 生きてやる。

 どんなことを、したっ……」



右足が吹き飛び、意識を失った。




異世界人:

「その男を助けろ!

 どんな事をしてもだ!


 俺は、

 なんてことを……

 クッソ!

 こんな子供に!!

 俺はいったい、何をしているんだ……」

感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。

おかしい部分や修正点、加筆部分なんかを知りたいです。

よろしくお願いします。

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都市名があるのですが地図がないと、把握が難しいので。 地図
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