貰い火 嘆き・9
問題が山積したまま、次の日が来た。
物資の補給に行く際、少将宛の手紙を預かり、返事をもらってくる。
中将が何かを始めた様だ。
手紙はいい。
こちらの想定の範囲内だ。
俺たちが物資の供給作業を続けていると、大声が聞こえる。
大声の兵士:
「ああ、困った!
16救護・赤い旗の立つテントに!!
明日にでも息を引き取りそうな兵士たちが、24人もいる!!
重体の兵士たちも、何という事だ。
あぁ、私たちが不甲斐ないばかりに!!
誰か、助けてもらえないだろうか!?
助けて、超異世界人!!」
怪しい兵士が、チラリとこちらを見てきた。
今朝から異常事態だ。
自称親切な兵士がやって来る。
陣地の地図をくれて説明をしてくれた。
何度も何度も。
横に10区画で、縦に6列の陣地。
敵前方一番上の区画、一番左が1番で、一番右が10番。
ひとつ下の一番左が11番で、右へ番号が増えていく。
説明係が15分おきに、3人やって来た。
しつこく説明に来る。
それから、これだ!
20分おきに、瀕死の兵士がいる場所をこちらに伝えてきた。
更に1時間ごとに通りすがりの兵士が、居場所を書いた地図を落としていくのだ。
フリスト:
「ナオキちゃん。
アイツら殴ってこようか?」
直樹:
「ほっとけ。
中将の指示で動いているだけだ」
ユミル:
「ナオキ様。
瀕死の兵士はどうします?」
直樹:
「もちろん。
貰っていくぞ」
ユミル:
「明日の話し合いが、不利になりませんか?」
直樹:
「問題ない。
隷属者の家族は、あきらめる事にした。
無い袖は振れない」
フリスト:
「おぉぉ!
ナオキちゃん、冷徹だね」
くだらない話をしながら、作業をした。
14時になり、ひと段落すると。
ショートカットの目がクリっとした女性兵が走ってきた。
俺の手へ強引に、紙をねじ込む。
女性兵:
「頑張ってくださいね!
いってらっしゃい!!」
と言って走り去る。
瀕死・重体兵士の居場所を書いた地図。
最新版だ。
直樹:
「ユミル、フリスト。
めんどくさいが兵士を取りに行くぞ」
瀕死の人間以外に、重体、重傷者の者が含まれていた。
重傷者は取り込まなかったが、それでも3678人を取り込む。
これで死にそうな連中で希望したものは、すべて取り込んだはずだ。
自己紹介を聞くために、隠れ家に行く。
千人ほど聞いて次回に回したが、中にはとんでもない事を言うやつがいた。
軍の方から戦争参加論を煽って来いと、言われた者が1割近くいたのだ。
自己紹介で、自ら白状するとは。
さすが隷属者たち。
しかし、煽らなくても戦争参加論はある。
殺したいんじゃない。
家族や友人を守りたい、という思いはあるのだ。
これについては、いずれ方針を出さなくてはならない。
首都に戻って、さっさと寝てしまう。
朝から、考え事でいっぱいだ。
物資と店の要件を済ませて、仕事をする。
こんなことなら、瀕死の兵士なんか助けなければ良かった。
ため息をつくが、今さら後悔しても始まらない。
面倒なことになったな。
中将から迎えの兵が来る。
俺たちは案内されたテントへと入り席につく。
メグスラシル中将:
「ナオキ殿。
ご側路感謝する」
直樹:
「こちらこそ。
迷惑をかける。
今日は、話し合い……
用件というか、議題というか。
何について話すんだっけ?
教えてもらえると助かる」
メグスラシル中将:
「君の連れている兵士。
4500人についてだ」
直樹:
「そんなにいたかな?
千人では?
遺体を盗んだ件はどうなった?」
メグスラシル中将:
「遺体を盗んだ件は、現在保留中だ。
君の主張では、現在も生きているそうだからな。
それをこれから、君に証明してもらいたい。
兵士は4500人は居るはずだ。
今朝、集計が完了した間違いはない。
行方不明の重体の兵士が、4500人だ。
君の元で、生きているはずだからな」
直樹:
「仮に4500人いたとして。
彼らをどうするつもりだ?」
メグスラシル中将:
「我々には、何もできない。
君がこちらに呼び出さないと。
こちらには、来れないんだろ?」
直樹:
「そうなる」
メグスラシル中将:
「我が軍では彼らに働いてほしいと思っている。
3日毎の交代で、2千人を雇いたい」
直樹:
「雇用の条件は?」
メグスラシル中将:
「彼らは脱走した扱いになるかもしれないからな。
正規の額は出せない。
最高でも半分に減額されるだろう」
直樹:
「うーん。
まず2千人は難しい。
多くても1千人ぐらいだ。
一度外に出ると、もう一度出るのに1週間かかる。
これは奇跡の代償だ。
初めから1千人は無理だ。
やった事がないから、初回は500人で様子を見たい。
問題なければ次回は、1千人出そう。
仕事の内容は、内勤にしてほしい。
せっかく助かった命だ。
危険に、さらしたくない」
メグスラシル中将:
「人数は了解した。
内勤専用となると、手当は減額さえざるを得ない。
3割だ」
直樹:
「3割か……
5%増えないか?
3割の金は、彼らに直接渡してほしい。
5%は俺がほしい」
メグスラシル中将:
「そうか。
いいだろう。
しかし、素直に話に応じたな?
もう少しもめると思ったが……」
直樹:
「俺にも考える時間があった。
今の俺には、戦死保障金は支払えない。
多少なりとも、仕送りをさせてやりたいしな。
それに。
俺は軍との協力関係を続けていきたい。
異世界人の探索を頼んでいるからな」
メグスラシル中将:
「異世界人なら、誰でもいいのか?」
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