TIFFANY BLUE
3月の第1日曜日
銀座4丁目交差点
三越のライオン前で
史哉と待ち合わせて
歩行者天国で賑わう通りを
ティファニーまで歩いた
誕生日とホワイトデーを
かねて
前から欲しがっていた
バタフライペンダントを
プレゼントしてくれた
白いサテンのリボンをかけた
TIFFANY BLUE BOX…
「婚約指輪は他のところになると思うよ」
「ええ
もう充分うれしいわ」
3月までは
歩行者天国は5時に終る
時間が近づくと
終りを告げる婦人警官の
アナウンスに
それでも
急かされるでもなく
外国人観光客が
街並みを撮り続けていた
みゆき通りに面したビルの
4階にある割烹の
夜の部が始まる5時に
史哉の父親と待ち合わせていた
個室に通され
プレゼントされたばかりの
ネックレスを
早速つけていると
「待たせたかな?」
と言って
ツィードのジャケット姿の
史哉の父親が現れた
慌てて立ち上がろうとして
広げていたティファニーの箱をゆかに落とすと
ゆったりとした動作で
拾って手渡され
「はじめまして
やあ 綺麗なお嬢さんだ」
とても近い距離で
挨拶された
胸のなかで
ザワリ…
と 風のような
音を聞いた
「はじめまして
白戸朱音です」
真っ直ぐに
目の前の男性の目をみた
穏やかな木陰のよう…
どことなく、自分の父親に
似ているのかもしれない
史哉は母親に似たのだろう
もっとシャープな輪郭をしているから…
海鮮を中心にした
料理を頂きながら
隣に座る史哉の存在は
今や遠のいて
生きていれば
おそらく同じくらいの
年齢であろう亡父を重ね
仕草を
話し声を
シャツのボタンを二つ外した胸元を
身体全体で吸収するように
見つめた
「朱音?少し酔ったの?」
史哉の言葉に
ようやく覚醒すると
うまくまとまらない
頭のなかが
少し混乱した
「ううん 大丈夫
ちょっと失礼します」
化粧室の鏡の前で
自分を見つめる
頬がほんのりと
上気している
備え付けのマウスウォッシュで口をすすぎ
口紅をなおした
人が入ってくる気配を感じたので 二つある個室の片方に入った
パンストとパンティを膝まで下げて
便座に座ると
暖かさに気持ちが緩んだ
膝を少し広げて
クロッチ部分を見ると
とろりと艶のある液体が
布に染み込まずに浮いていた
トイレットペーパーで
拭き取ると
ビデのボタンを押して
勢いのある
温かな湯を
腰を少しずらしながら
陰部に当て続けた




