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JKとゆく、異世界の歩き方  作者: プリンシプル
第二章『黒き竜の姫』蓮華さん
9/9

赤と黒の竜と姫

 突如現れたフードをかぶったマントのお方。マントを脱ぎ捨てると中から美人さん登場!!


 我が一団のオスどもは歓喜の叫びを上げる。いや、一番喜んでるのはこのチャイナ服の魔女のようだ。


 突然現れ私を『姫』などと呼んだ人は、何かを叫んだと思ったら黒い炎に包まれ、その炎を払うかのようにマントを脱ぎ捨てた。

そして、姿を現したのは黒いセーラー服に黒い刀を持ち、黒い竜を従えた美形女子高生であった。

 あのセーラー服……ははぁっ! さ、櫻宮なのでは!!? あの、全JK憧れのお嬢様学校『櫻宮女学院』じゃないですかーー!!! まさか、こんな所に来てあの制服が拝めるなんて! アリガタヤー。私が拝み倒している間に戦闘が始まる。


 刀を低く構え、走り出す。その速度は速く、炎が残像を残している。瞬く間に相手との距離を詰め一撃。圧倒的な体格差をものともしない一撃、刀が火を噴くように太刀筋に火柱が立つ。その速度に辛うじて反応した青い毛の巨体な狼は、両手のサーベルをクロスさせ防御するが弾かれ、体勢を崩す。

 空へ上がった火柱が舞い戻る。飛び出した燕が旋回する動き、鋭く風を切る。最高到達点に達した刀身が再び相手を斬り裂く。弾かれたサーベルを力尽くで戻し、この攻撃にも耐えた。しかし、今度は巨体ごと反動で後ずさりした。


ひと呼吸。黒いセーラ服の女子高生はもう一度息を吸い、動き出す。


 次は連撃、右へ、左へ、交互に斬りつけ相手を追い詰めていく。刀から吹き出す炎が相手の体を焼き、狼の体を傷つけていく。攻撃を受ける反動で弱っていくのが目に見えて明らかだ。狼の顔が歪み、膝をついた。

 戦いの終幕を察したか攻撃の手をやめ、後ろへ下がり相手との距離をとった。再び息を吸う、力強く足を踏み込み飛び上がる。

 膝をついているとはいえ、巨体であることには変わらない狼の頭を優に越え上空へと飛び上がる。


「黒百合!!」


 意思疎通の行き届いた動きを黒い竜がとる。振り上げられた刀に一際は大きな炎が宿る。

炎が加速装置のように働き、雷が落ちるが如く巨体の狼を一直線に斬り下とす。斬撃が炎を放ち巨体を覆い尽くした。


 大きな炎の塊に背を向け、刀の残り火を振り払う。彼女が背にした大きな炎が徐々に消えていく。


 黒い炎は、巨体を塵一つ残さず燃やし尽くした。そこに狼の姿はない。


 先程まで、美少女登場に沸いていたオス二匹は言葉を失っていた。元気なのは魔女一人。私も唖然としている。急に現れた美少女があんなに強いとは思ってもみなかったからである。

 彼女が纏っていた炎は消え、持っていた刀も炎に包まれ消えた。炎の中に刀を納めた、といった感じだろうか。少女とは呼ぶには、あまりにも大人びてる端正な顔立ちの彼女は、しっかりとした足取りでこちらにやって来た。

 「改めまして、私は一条蓮華。あなたが『赤き竜の姫』、ですよね?」

すらりと長く、白い肌で形作られた綺麗な腕が私の前に差し出される。

「えっ……っと、その、姫ってどういうことですか?」

「えっ? 私と同じくらいの年頃で、学生服を着ていて赤い竜を連れている人が『赤き竜の姫』だと神様から聞いていたのだけど、あなたではないの?」

多分、その特徴からだと私だと思うけど。『姫』っていうのが分からない。

 そして、私は知る。驚愕の事実を。

 彼女が知っている神様は、清楚な格好をした執事風イケメン神様。私の知っている神様は、金髪ロン毛でカラーコンタクトまで付けて、セクハラな発言と行動が目立つチャラ男神様。

 

 アレレ? チョット、ナニコレ? アンマリジャナイ?


 私の中で何かが音を立てて壊れていく、気がした。落ち着け、私。とりあえず、とりあえず! 聞いておかなくてはいけないことがある。


「あのー、あなたは私の『敵』だったりします?」

「何故そうなるの?」

 えっ、だって、昔赤い竜と黒い竜は敵対していたって聞いていたし、現在進行形かと。それにさっきデッカイ狼を容赦なく燃やしてたし……。

 私の言い分は特に間違ったところはない、と思うんだけど。なんだろ、この微妙な反応は。なんか、私がとても残念な子に見られているような気がする。

「あれは違います! 確かに少しくらい火傷はしますけど、決して殺めてはいません! 私の意を汲んで、あの炎は相手を焼かずに転送するようになってるんです。何処に飛ぶかはわかりませんが……、多分あの方は近くの海にでも飛ばされたと思います」

 あれだけの力を持ちながら、力の誇示はしない彼女。戦闘中の鋭い気迫や雰囲気から彼女のことを少し誤解していた、彼女も私と同じ年頃の普通の女の子なのだ。彼女にもその感覚はちゃんと残っているようだ。


「それにしても、本当に何も聞かされていないんですね……。それなら、色々説明しておきましょう。といっても、私の知っている範囲だけですが」

 先ほど中断された握手を再び求めてきた。

「まずは、あなたの名前が知りたいわ」

私は……。未だ、自分に付けられた仮の名前を素直に受け止めきれておらず躊躇してしまう。


「ハイ! ハ~イ! 私はリンリンでーーす!! ピッチピチの百十七歳で~す!!」

急に割り込んできて、差し出さてた手を握り締め力いっぱい上下に振るリンリン。

「それでー、この子が『私の』ギコちゃん!」

リンリンさん、今なんか無駄な一言が入ってた気がするんですけど。

「ちょっと待てリンリン! ギコを拾ったのも、名前を付けたのもはオイラだ! だからオイラのものだ!」

いや、それも間違ってる。そもそも私、『モノ』じゃないし!


 目の前で繰り広げられるよく分からない論争で戸惑う彼女。見かねた先生が動き出す。

「すまない、騒がしいヤツラだがが悪いヤツらではないんだ」

ペコリと頭を下げる先生。しかし、本題は次であったようだ。

「ところで、さっきの太刀筋は『サムライドウ』か? それとも『ニンジャサッポウ』か?」

職業、剣士として気になるのはわかるけど、サムライとかニンジャとかどこで仕入れてきたのやら……。

 

 皆、それぞれ自由な愉快な仲間たち。どうやら彼女も巻き込まなくてはいけないようです、この奇妙な集団に。


「あああ!!! 船! 船が行っちゃう!」

 私は彼女の手を引く。私たちの後をリンリンが追いかける、そこにセンパイと先生が続く。黒いスカートのプリーツが揺れる、白く長い脚が覗く。勿論私の足ではない。モデルのように背の高い彼女の足取り、革靴の軽やかな足音が私の後ろをついてくる。



 船内の大部屋。二匹の竜が空に浮きながらなにか会話をしている。この会話については何を言っているかは分からない。

 この子と会話ができるのは、相手に意思を伝えたいと思った時のみ、その時は私の心に直接言葉が届く。よって現在は、なにやら話しているみたいだ。くらいにしか見えない。動物同士が会話しているように見えるが内容はわからない、となんら代わりはないってのが普通なんだけど……。標準が喋る動物で溢れている世界にいるせいで、種族関係なく話せるとか思っている。少し感覚がおかしくなっているかな?


 「えーっと、改めまして。私は、そのー、『ギコ』って呼んでくれていいです。私、自分の名前を覚えてないので。いい加減な神様のせいなんだけど」

 アイツの顔を思い出すだけで、今も腹が立ってきます! 私を担当した神様はヒドイっとアピール、これは実際に会った時の為だ。ボロクソ言っておけば、実際はそれなりにマシとか思ってくれるんじゃないかと。


――なんで私がアイツに気を回さなくてはいけないんだろ、バカバカしい。


 「それで、一条さんの制服って『櫻宮女学院』のですね!」

「そう、だけど。なにか変?」

「そうじゃなくて! 櫻宮は全女子高生の憧れの学校であってその制服は、コスプレでもいいから一度は袖を通してみたい制服ナンバーワンなんだよ!!」

 鼻息荒く力説するが、全く私の気持ちが伝わる様子はない。コレガモノホンノ御嬢様カ! なんて素敵なんだろ。

「あの、ギコ。私のこと、名前で呼んでくれない?」

いいの? でも、なんか恐れ多いな……。

「じゃあ、蓮華さん。いや蓮華ちゃん、かな?」

なんだかもじもじしてしまう。我ながら気持ち悪い。

「蓮ちゃん!! だね!」

横から割り込んできたリンリンが叫ぶ。

 その呼ばれ方は初めてかも。頬を染め、柔らかく微笑む彼女に幼い可愛さが現れる。


「わたしは、魔女のリンリン。よろしくね! それでは~、早速!」

あ、それやるんだ。恒例行事みたいになってるのかな……ハッ!! 

「リンリン!! 待って、私が最初!!」

えー、と文句を言いながら黒いセーラー服をくまなく触っていくリンリン。

「あ、あの、なんですか? 私の服になにかついていますか?」

「ふむふむ……よし! ではでは~いっきま~す!」

 よしきた!! 私は立ち上がり少し離れて準備する。リンリンがごにょごにょと詠唱して魔法をかける。


 私の紺のブレザーは、黒いセーラー服へと変貌する。彼女が着用しているものそのもののサイズで。


「ぷぷーー! ギコちゃん、足短すぎーーー!!」

腹を抱えて笑うリンリン。勿論、その後ろでセンパイと先生も笑っている。

「ちょっ! サイズも合わしてよ!」

「無理だってー、私は同じものしか作れないっていったじゃん」

ああもう! 蓮ちゃんまで笑っている!

「ごめんなさい、突然だったから、つい」

笑いながらも謝る蓮ちゃんは目尻に涙を浮かべている。一度は着てみたいとはいったけど、私じゃあんまり似合わないって、そんなこと最初からわかってたから! いいけど!

 はいは~い、次リンリンいきまーす! 私のお粗末なセーラー姿はさっさと戻され、リンリン選手と交代である。詠唱、タイミングを合わせその場で回転しながら姿を変える。


 いぇーい! っとブイサインで決めるリンリン。

身長が蓮ちゃんと大体一緒なので、私のような無様なことにはならない。しかし、いえ、やはりとでもいうのか、胸のサイズが違いすぎる! またまた登場、再びやって来ましたよ! 『へそフォルテッシモ』全開フルオープンである!!

 

 ただでさえ目立つ私たちに、更に注目が集まる。まったくもう、困ったものだ。そう思いながらも、皆の迷惑を顧みずはしゃぐリンリンを見守る。それは、オスの皆さんが喜んでいるからではない。蓮ちゃんが楽しそうに笑っているからだ。

 先ほどの怖さも消えている。こうして笑っていれば、彼女も普通に少女なのだと感じさせる。


 船は行く、私たちを乗せて。



 濃い霧が私たちを出迎えてくれる。港街。

朝霧なんてぬるいものではない。ホワイトアウトしている。

「ねえ、ここって『霧の都』みたいに呼ばれる街なの?」

「海沿いの港街だから霧が出ることはあるけど、ここまでなるなんて聞いたことない」

 この世界の住人ですら戸惑うほどの霧。私たちの行き先を遮るように立ちふさがる。


 船から降りたち、街への一歩を踏み出す。

静かな街だ、廃れている様子はないが人の姿が見えない。霧のせいかもしれないが……。

 突然足元を白い影が横切る。あの動き、蛇だ、白蛇だ。一瞬しか見えなかったが間違いない、と思う。

白蛇が消えた方向に目を向けると、何かが光った。濃い霧で太陽の光など届くはずもないのに。光ったものを確かめようと近づく、そこには窓がある。何の変哲もない窓だ。


「ねぇ、この窓なにか写ってない?」

私の指した窓にうっすら写る人影。それは、私たちと同じく『制服』を着た少女であった。



さて、合流してすぐまた次! 駆け足ですが、とりあえず仲間集めは最優先事項かと思ってます。

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