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戦隊捜査官の事件簿 〜戦隊さん、その事件の犯人、怪人じゃないかもしれません!〜  作者: サイトーアツシ
事件2「夢は頂点のその先にあるのかもしれません」

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事件2-1『野球選手ナンバーワン!』

 ここは、ゴールドファイブの秘密基地・ゴールドベース。


 医療設備、研究室、メンバーが生活する宿舎、トレーニングルーム、更にはカラオケまで完備され、まさに最新鋭の科学技術を結集した地球防衛の(かなめ)である。


 そしてどの部屋も例外なく、壁、床、天井、その全てが金ピカである。もちろんトイレも金ピカだ。


 ゴールドファイブは普段、この基地のメインルームで待機している。


 壁には怪人のデータや監視カメラの映像を映すための巨大モニターがかけられ、中央のとても大きな机も事件現場の地図を広げるのに便利なしろもの。


 机の周りに並べられた椅子は背もたれが無いが、これは何かあったときすぐに動けるようにそうなっている。学校の理科室の椅子と同じ理屈だ。


 非常事態に備えて作られた完璧な空間。そんなメインルームで、今日も私たちは思い思いのときを過ごしていた。


 ゴールドグリーンの丸亀(まるがめ)めぐむは、椅子に座って二つ折りのゲーム機で遊んでいる。


 ゴールドホワイトの観音寺(かんおんじ)すあまちゃんは、その隣の席に座って机の上に積み木を積み上げて遊んでいる。


 私こと綾川(あやがわ)あずきは、すあまちゃんのさらに隣の席で、ここ最近発生した怪人の資料をまとめている。


 ゴールドブルーの坂出(さかいで)いつきは、部屋の隅で体育座りをしながら、デートに誘った女の子全員から拒否されたショックに打ちひしがれている。


 そして、メインルームの巨大なモニターを見ながら、タオルを振り回して大はしゃぎしている者が一人。

 ゴールドイエローこと、琴平(ことひら)いとしである。


「かっとばせー! い・そ・む!」


 画面にはメジャーリーグの試合が映されている。

 私には野球のルールも面白さもまるで分からないが、多分そうとう熱い展開なんだと思う。


 ちなみに事件が無いときにモニターを私用するのはルール違反なのだが、りゅうま隊長がいないときはだいたいみんな勝手にテレビを観る。


 そして、いつもこの時間はりゅうま隊長がトレーニングルームでトレーニングをするので、もうモニターは使い放題。


 ちなみに私は韓流ドラマを観るのが好きだ。


「おおおおおお! 打った! 行ったか? 行ったか? ホームラン!」


 いとしさんがガッツポーズをして飛び跳ねた拍子に、すあまちゃんの積み上げていた積み木が音を立てて崩れてしまった。


「もぉ〜! いとし兄ちゃんうるさい! ちょっと静かにしてよ。私のお城崩れちゃったじゃん!」


 そういって、すあまちゃんがプクッと頬を膨らませる。


「あぁ、すまない。だが、見てくれ! ホームランだぞ! やはり五十夢(いそむ)は日本の誇り! 球界のサムライだとは思わないでござるか!」


「ふん! 知らない!」


 すあまちゃんは不機嫌そうに再び積み木を積み上げ始める。


「ぼくとしても、ちょっと静かにしてほしいかな。これだから野球とかスポーツは暑苦しくて嫌なんだ」


 めぐむも不機嫌そうに文句を言う。

 実際、野球を見ているときのいとしさんはとてもうるさい。仕事の邪魔だ。


 部屋に戻って仕事をすればいいだけなのだが、メインルームと宿舎は離れているため、一々行き来がめんどくさくて、大体みんなメインルームで過ごしている。


「どうしてみんなこの熱さが分からないでござるか! これを見るでござる!」


 そういっていとしさんは、どこからか取り出したタブレットの画面をみんなに見せてきた。

 タブレットに大きなトロフィーを持った一人の野球選手の姿が映っている。


 トロフィーはクリスタルでできていて、透き通ったボールを掴んだ右手のデザインがとても美しい。


「このお方こそ、拙者が心のそこから敬愛する野球選手・(いただき)五十夢(いそむ)! 十六歳の若さでプロ入りし、十七で史上最年少の完全試合達成、十八でメジャー入りしたのち、十九で五十本塁打五十盗塁の最年少記録更新! 投手と野手の二刀流で戦う、野球界ナンバーワンプレーヤーでござるよ!」


 なんか分からないけど、多分すごいんだと思う。


「あずき殿は分かるでござるな! この凄さ!」


「いやー、ちょっと……私も野球はあんまり……」


 私がいとしさんの圧に押されていると、トレーニングに行っていたはずのりゅうま隊長が帰ってきた。


「あれ? りゅうま兄ちゃん、今日は早いね」


 すあまちゃんの言うとおり、いつもならこの時間はまだ一人でトレーニングをしているはずだ。


「あぁ、すまないが緊急の任務が入ってな。俺は別な用事があるから、ゴールドファイブから誰か二人ほど、それと付き添いであずきにも行ってもらいたいんだが」


「任務……? いったいなんですか?」


「実はとある超大物から護衛任務の依頼が来ていてな」


 ゴールドファイブは、本来個人からの護衛任務は受け付けていない。


 あくまで市民を護るヒーローであり、特定の個人の味方をすることは理念に反する。


 それに、そもそも国民の血税で運営されている組織を、個人が動かすのは問題があるからだ。


 しかし、現在の我が国には「VIP特権法」という法律が存在する。


 これは、多大な功績を残したスポーツ選手や世界的な芸術家など、国が「国の宝である」と認めた人間においては特権が認められるというもの。


 特権が与えられた人間は一部納税が免除され、ある程度の範囲なら警察やゴールドファイブなどの一部機関を動かせるのだ。


 法の下の平等に思いっきり反している気がするが、そういう法律ができてしまったのだから仕方ない。ここはそういう世界である。


 しかし超大物とは、いったい誰のことだろう。


「もったい付けずに教えてよ! りゅうま兄ちゃん!」


 すあまちゃんがそういって、りゅうま隊長の体を掴み強く揺する。


「その大物というのが……、あっ、そう彼だ!」


 りゅうま隊長がモニターを指差した。


「?」


 モニターには先ほどから変わらず、メジャーリーグの映像が流れている。


「あの……彼っていうのは……?」


「今メジャーで大活躍している野球選手・(いただき)五十夢(いそむ)だ」


「え?」


「え?」


「え?」


「え?」


 驚いてその場にいた全員がりゅうま隊長の方を見る。

 部屋の隅で落ち込んでいたはずのいつきすら、顔を上げて目を丸くした。


「「「「い、(いただき)五十夢(いそむ)!?」」」」


「あ、あぁ……、どうした? そんなに驚いて」


 りゅうま隊長が状況を飲み込めず、不思議なそうな顔をする。


 そんなりゅうま隊長の目を見て、先ほどまで野球観戦に夢中だったはずのいとしさんがピンと手を挙げた。


「その任務! 拙者が引き受けたでござる!」


〈つづく〉

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