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10話 違和感

10話 違和感

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

~元公爵令嬢の暇で平和な軟禁生活~


「サクラ」


「はい、お嬢様」


「これどこのかしら?」


「これは……東の地域で採れた新芽だったかと」


「へぇ、こんな美味しい紅茶は初めて飲んだわ。後で行ってみたいわね」


「落ち着いたら行ってみましょうか。私、そこの出身ですので色々とご案内できますよ」


「そう? 嬉しいわ」

「あれ、でもサクラの家って領地南の方じゃなかったかしら」


「お嬢様の記憶違いでは?」


「あれ? そうかしら」

「でも、サクラってちょっと見栄っ張りでわかりやすい嘘付くし、あやしいなぁ」

「ほら、昔……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ……おかしい。


 心の準備のためとか言って、逐一作戦の進捗状況をチェックしています。

 ほら、作戦の最終段階には私にも大仕事が待っているわけですし、気になるには何も不事前なことではありません。

 ほぼ軟禁状態の私が外に情報を漏らす心配も皆無ですしね。


 それで思ったことなのですが、いくらなんでも順調に行き過ぎです。

 確認するたびに、どこどこ領の占領に成功しましたとか、まるまる伯爵の確保に成功しましたとか、かなり大きな戦果の報告をしてきます。

 私はこの部屋からほぼ出れないので国が今どんな状態かこの目で見れてはいないのですが、もし私に上がってくる報告が本当なら後数ヶ月もしないうちに私の出番が回ってくるやもしれません。


 私の出番が回ってくるということはつまり、後数ヵ月で王国が堕とされるということになります。

 いくらメーンベルトが事前に綿密な作戦を立てていたとしても、いくら現国王側に帝国との戦争や第一王子派閥と第二王子派閥の権力闘争を初めとする問題があったとしても、この速度は異常です。


 これでは、まるでメーンベルトが王国よりも強大な力を有しているかのようではありませんか。


 流石にこんな話を頭から信じられるほどバカではありません。

 しかし、私はこの作戦の要でもありおいそれと部屋から出してもらえません。

 この政争、メーンベルトは私を掲げて争っていいるので国王の死が勝利条件ならば私の死は敗北条件です。


 もう占領した領地なら安全なのでしょ?

 安全でないのならそれはまだ占領したとは言えないと思うけど?


 とにかく理屈をつけて視察の名目で堕としたと報告で上がってきた領地に行きました。

 今回のやりとりで、いくつもは流石にいけないことぐらい理解したので最も信じがたい王国の主要拠点スグリフ伯爵領に視察先を決めました。

 スグリフ伯爵は公爵ではありませんが公爵に次ぐあるいは抜くのではないかと言われるほどの力を持つ貴族で、スグリフ伯爵領は広大な平地を持ち一大穀倉地帯として王国の食糧事情のかなりを担っています。


 いうまでもなく、王国の主要地です。

 王国軍は常駐していますし、伯爵の私軍もあり、伯爵の本家のある都市は要塞化されています。

 たとえ大群を用意しようともそうやすやすと落とせるような場所ではないはずなのですが……


 私はそんな伯爵領内を、領民に手を振りながらメーンベルトのトップとして公に視察しています。


 まさか本当に陥落してしまっていたなんて……

 争った形跡はあまりありませんでしたが、いくつかの貴族の屋敷が燃え落ちてしまっていました。

 正面から軍で攻めたのではなく、領民の武装蜂起を煽って支援した形でしょう。

 貴族の屋敷が燃やされてるところから言って、メーンベルトの進歩者達が中心になって無事思惑通りに民衆を御しきったようです。


 そして街の至る所にはメーンベルトの旗が立ち、私に会えたことで感動して涙を流している人もいます。


 本当に陥落していたのですか、それもたいした抵抗も出来ずに。

 私は以前まであまり実感したことはありませんでしたが、それほどまでに既に根は張っていたということでしょう。

 ここまで国民に浸透してしまっていたなんて……

 国民にはウケの良い言葉であり思想であり、それをうまく操れるだけの参謀がいる。

 本当に恐ろしい組織です。


 王都内にあれほど巨大な拠点を持てるわけです。

 既に国民の大半が掌握された状態になっていたということでしょう。

 これは本当に王政を打倒してしまうかもしれません。

 ですがそこは私にはどうしようも、むしろ私に飛び付かせた分だけ準備が不十分な状態で作戦が始まってくれたと思うしかありませんね。


 これだけの組織が私に飛びついたというのも、やはり帝国との戦争その危機感ゆえの


 ……


 ちょっと、待ってください。

 なぜメーンベルトは帝国と王国の戦争の現状を把握していたんでしょう。

 いえ、それは冤罪を被せられれば調べるのは当然ですし、調べる前に冤罪をかけた時点で多少予想はつくというものです。


 では、王国はなぜメーンベルトに冤罪なんてかけたのでしょう。

 そんなことしたら現状を、帝国との戦闘において苦戦を強いられていることをメーンベルトに把握されるに決まっているのに。


 国民には秘密にしたかった、だから情報を伏せて負けて奪われた領土を別の犯罪組織のせいにしたそのはずです。

 しかも貴族の子息にすら伝えない、いえ学園内で噂すらなかったところから言って軍部で完全に情報を止めていたはずです。


 そんな徹底していたのに、なぜメーンベルトに?

 王政打倒を狙う犯罪者組織に、弱みを握られる形になるのにそれを理解していたのでしょうか。

 国民にこれほど支持者がいる団体が、王政の打倒を狙う団体が、そんなことを知って王政の理になることなんて何もあるはずはないのに。

 そこまでバカじゃないと信じたいです。


 でも、だとしたら?


 メーンベルトには隠す必要がないと判断しという訳ではなく、メーンベルトによって占領されたということにした理由……

 初めから知っていると踏んでいた?

 それとも、本当はそれが真実だった?


 そういえば、随分と作戦の進行が順調みたいだけどメーンベルトの支持団体はどこなのでしょうか?

 国民?

 それももちろんですが、金と武器と情報を流している存在が……


 あれ? どこの支援を受けていればこんなことが可能なのでしょうか。

 公爵家にだって公にせずにこんな大量の支援は不可能ですし、そもそも公爵家がバックにいるのなら私なんてリスクは必要ありません。

 私に価値観を感じるということは、王家の血から遠くて王家に匹敵もしくは上回るほどの力を持つ存在……


 まさか、


 いや、でもメーンベルトは王国のためを思って行動しているはずです。

 組織としての思想も、構成員の考え方も、

 その方向が正しいかどうかは置いておけば、メーンベルトは私やカローイ様と同じく王国の未来を見ているはずです。

 仮にも、


 いえ、人の話なんて当てにならない。

 それは私が一番理解していたはずです。

 私は現在進行形でメーンベルトを欺き利用している立場ですし、

 魔女は、フローラのことは信頼できる人だと思っていて王子と共に3人で王国を導いていくつもりでした。


 人の思いなんて会話から計れやしません。


 末端の人々は、武装蜂起したここの領民は、純粋に国を憂いているのかもしれません。

 だが上は?

 彼らに全てを誘導されてしまえば、計算や文字の読み書きもできない彼らに気付けるとは思えません。


 もしメーンベルトがそうだとしたなら、

 だとしたら、今の私って……


 売国奴?

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