64 勇者の剣と魔王の剣5
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
完結が近づいてきました。
どんなに才能があり努力していても、うまくいかない場合がある。
ゴード王国史上突出した才能をもつ最高の鍛冶師、ゾイゼン一族のコンラードはもう2か月近くほとんど眠らず剣を打ち続けていた。
竜人ドランが彼に密かに渡した純度の高い鉄の鉱石は、これまでにない品質と形状に打ち上がってきているように見えたが、コンラードは満足していなかった。
(自分が今まで打った剣の中で最も良いできばえだけど、歴史上2つとない剣でなければ、ランスロさんが使う「勇者の剣」希望にはなれない。最後の一つ、何かが足りないような気がする。)
その時、工房の職人がコンラードに来訪者があることを告げた。
(ぼっちゃん、勇者の候補ランスロさんと前ここに来たことのある騎士が会いに来られました。)
「そうですか。今、外に出ますとお伝えください。」
待たせてはいけないとコンラードが急いで外にでると、2人とも背がとても高かった。
くせっ毛で大きな目と、ストレートの長髪を後ろでたばねた細い目がとても対照的で、コンラードはこっそり一瞬だけ微笑んだ。
「コンラード君。僕のために新しい剣を打っていただいてありがとうございます。今日は決してせかしにきた訳ではありません。でも結果的にはそうなってしまうかも……魔族の大侵攻が開始されました。人間界との連結空間を通ってくるのも時間の問題です。」
「御心配かけてすいません。実は剣はほとんど打ち上がっているのです。僕にとってはこれまでにない品質と形状で、ランスロさんの戦いの役には立つと思います。しかし、勇者が使う「勇者の剣」希望になれるかどうかというと、少し足りないような気がするのです。」
「ゾイゼン一族の若き鍛冶師様、大丈夫ですよ。あなたが打った剣は、私とあなたが一番尊敬する騎士が背負う重い義務を果たすことを十分に助けてくれるでしょう。」
ドランがそう言ったのを聞いて、コンラードは一礼した。
「騎士様、前におっしゃっていたとおり、人から一番の尊敬を勝ち取れる騎士は何人もいなかったですね。また、お会いできました。この世に二つとない鉄の鉱石をいただいたおかげで、自分がすばらしいと思う剣ができました。」
「コンラード君。よかったら見せてくれませんか。」
「わかりました。今、持ってきます。」
コンラードは工房の中に入り、鞘に収まったロングソードを持ってきた。
鞘はきれいな緑色をしていたが、抜いた剣も緑色を基調としていた。
「すばらしいと思います。」
ランスロが賞賛の声をあげた。
「何か特別な力を感じますね。」
ドランも感想を述べた。
「あっ、これは何ですか」
ランスロが剣のつかの紋章に気がついた。
「四葉のクローバをモチーフとした紋章です。実は、ゾイゼン一族の本家に伝わる口伝によると、これまで人間界に現れた『勇者の剣』希望は全て四葉のクローバの紋章が刻まれていたそうです。どういう意味かは僕にはわかりませんが。」
「僕には、なんとなくわかるような気がします。四葉のクローバは幸運のしるし、勇者の戦いはいつもぎりぎりで、ほんのわずかの幸運の助けがなければ勝利することはできないということですね。もちらん、僕もそのような戦いになることは覚悟しています。」
「厳しいのですね。」
「コンラード君。今から僕にこの剣を使わせてください。この剣は完成されています。僕はこの剣を身に帯びて、『勇者の候補』ではなく『勇者』として魔族の大侵攻の前に出て戦います。」
「良いのですか。僕の感覚だと何かほんの少し、この剣には足りないような気がして、このままランスロさんに手渡すには少し気が引けるのですが。」
「専門家のコンラード君の言うことだから間違いないと思うけれど、僕はこの剣を今すぐ身に帯びることで勇者になれるような気がするのです。」
「それではお渡しします。ランスロさんが勇者として、この剣を使って大切な指命を果たすことができるよう心からお祈りしています。」
人間界への連結空間が開く魔界の特異ポイントの前に炎人バーンは立っていた。
その横には、1億の魔族との戦いに勝利した魔神グリゲイドが消耗しきってしまい、気を失い倒れていた。
炎人には次の戦いがわかっていた。
「今度は2倍、いや3倍か! 」
先に1億の魔族の軍勢を魔神グリゲイドに全滅させられた1000年魔王ザラが、今度は3億の魔族の軍勢を2人に向かって進軍させていた。
魔神はもう動けないので、炎人だけで3億の魔族と戦わなければならなかった。
「はるかなる昔から、グリゲイドと私は魔界序列第1位の地位をめぐってきた争ってきた。いつもほんとにわずかな差で勝ったり負けたりした。ところが、グリゲイドの3倍の魔族と戦わなければならないとは、ザラ様に実力を相当評価されているのだな。」
炎人は心の底から笑った。
実は彼はザラの幼い頃からのおもり役であり、今でもザラは炎人のことを「おじさま」と呼んでいた。
「私の目的にしたとおり、ザラ様は美しく強い戦士になられたが、心が全て『魔王の剣』業火に支配されていまわれたな――いや! 彼がいる。勇者の候補、いやもう勇者になっているだろう。それにしても亡くなられた魔王ゲール様はいちはやく彼をザラ様の婚約者としたのか――お目が高い! 」
3億人の魔族の姿が炎人の目に映り始めた。
炎人バーンの心には全く恐怖心がなかった。
ただ魔界と人間界のために、徹底的に戦おうと決意していた。
お読みいただき心から感謝致します。
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年末年始はできる限り更新をがんばります。




