56 勇者と魔王の宿命
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
なろう投稿する第2作目です。
魔王宮の王座の前に、魔界の内務大臣であるアスタルトが呼ばれ、魔王ゲールと話し合いをしていた。
娘のザラも同席していた。
「アスタルトよ。これで人間界への大侵攻を望む上級魔族は何名になったのだ。」
「はい。魔王様、後3人でございます。」
「そうか。その3人がザラとともに人間界への大侵攻を開始した時、勇者は防げるか。」
「いいえ、完全に無理でございます。魔界の上級魔族の序列第1位は炎人バーン、第2位は魔神グリゲイトですが、3位から5位の3人の実力はほとんどこの2人と差がありません。いやむしろ、3人が500年ほど若く精神的にまだ未熟だということが恐いのです。」
「父様。私は勇者の候補であるランスロの婚約者だぞ。なぜ、私がランスロと戦うことを選んで人間界に大侵攻するのだ。」
「今日はザラに大切なことを話さなければならない。1000年魔王の宿命は知っているな。」
「1000年周期で魔王になる者は、人間界への大侵攻を行わなければならない。行わなければ、古くからの掟に従い、王族ではなくなり死罪になる。ところが、父様は大侵攻を絶対に拒否する私のために、古来から続いてきたこの掟を廃してくれた。」
「そのとおりだ。私はザラのために精一杯のことをした。――しかし、どうしても避けられない宿命があるのだ。それは、『魔王の剣』業火だ。業火はもう少しでザラの前に姿を現わし、ザラはその剣を使うことになるだろう。必ず。人間界への大侵攻に。」
「父様のお言葉だが、私は業火を人間界への大侵攻には絶対に使わない。人間界へ大侵攻をするということは、婚約者である勇者ランスロと戦うということだぞ。」
「『魔王の剣』業火は魔王と一体となり、魔王の心を完全に支配してしまう。そして業火が究極的な目標とするのは、人間界を守る勇者が使う『勇者の剣』希望と剣を交えるということだ。だから、戦いをできるだけ大がかりにして勇者と魔王との一騎討ちを起そうとする。」
「それでは私は業火などいらない。手に握りたくない。誰かにくれてやろう。」
「ザラよ。それは不可能なんだ。はるか昔からザラのように考えた1000年周期の魔王は何人もいたのだが、全く無駄だった。業火が魔王の心を完全に支配してしまう力は驚異的だ。抗うことは絶対にできないのだ。」
「………………」
「ザラに少しでも幸せな時間を残してあげたいと思い。勇者の候補であるランスロをザラの婚約者であると魔界中に宣言した。これまで私にできたのはそれだけだ。それと今からもできる限りのことをしようと思う。アスタルト、説明してくれ。」
「はい、魔王様。ザラ様が人間界に大侵攻を開始した時、ザラ様に付き従う上級魔族をできる限り減らそうとしています。逆に上級魔族の力で、人間界への大侵攻を魔界内で止めるのです。1位の炎人バーンと2位の魔神グリケイトは既にこの考えに賛成していただいております。」
「まだ大侵攻をしたいと思っている3人の上級魔族の中で、少なくても1人は人間界への大侵攻に反対になってもらう必要がある。アスタルトよ、可能性が高いのは誰だ。」
「たぶん。序列第3位の竜人ドランでしょう。あの者は強くなることのみを目的として、魔界や人間界の中、できる限りの高みの登ることを求めています。人間界最高の実力者である勇者と戦うことさえできれば、大侵攻は必要ではないと考えるでしょう。」
「それではなんとか、うまい方法でドランをランスロ君と戦わせよう。ランスロ君もかなり苦戦すると思うが、たぶん勝てるだろ。」
次の日、魔王ゲールは魔王宮に竜人ドランを呼んだ。
魔王の横にはザラも控えていた。
そして告げた。
「ドランよ。人間界に赴き勇者の候補であるランスロと戦うことぞ許すぞ。」
それを聞いたドランは魔王の横に控えているザラを見て言った。
「ランスロはザラ様の婚約者であると聞いておりますが、戦ってもよろしいのでしょうか。」
「戦ってほしい理由があるのだ。ランスロは我が娘ザラの婚約者であるが、実はなんとゴード王国のグネビア王女の婚約者にもなっているのだ。」
「え――っ。それはひどい。許せないです。」
ドランは魔王の横のザラをちらっと見た。
「それと勇者の候補ランスロはばかですか! こんなに完璧にお美しいザラ様という婚約者がいながら、さらに人間の中に婚約者をいるなんて許せません。」
ザラがドランをなだめるように言った。
「ドランよ。グネビア王女を見ればよくわかる。」
魔王が条件を告げた。
「一つ条件がある。すまないが人間界に行ったら、竜人の姿ではなく人間の姿になって勇者の候補ランスロに決闘を挑んでくれ。人間対魔族の戦いであることを公にしたくないのでな。」
「わかりました。勇者の候補ランスロは、魔王様、炎人様、魔神様と対等かそれ以上に戦うことができる実力の持ち主であると聞いています。ザラ様。私の全力で戦ってよろしいでしょうか。場合によってはランスロの命を奪ってしまう可能性もありますが、いかがですか? 」
ザラは答えた。
「全力で戦ってもよいぞ。ランスロがドランに破れるとしたら、それまでの弱い勇者の候補だったということだ。」
ザラは思っていた。
(敗れることは絶対にあり得ないのだけどな。)
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