55 ナイトメア(悪夢)4
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
なろう投稿する第2作目です。
「やられた。」
上級魔族ナイトメアゼロは魔界でつぶやいた。
悪夢の檻の閉じ込め、悲劇の無限ループを見せ続けていたグネビア王女がそれを破った。
「なんて心が強い王女なんだ。10回ループの後、私の悪夢の深淵に落ちていくのではなく否定するとは、尋常じゃない強さだ。分身を使い命を奪おうとしたら植物系魔族のマリ達に妨害されていまった。まあいい。これで勇者の候補を悪夢に閉じ込めるのに専念するだけだ。」
騎士ランスロは既に20回目のループを終えていた。
そして彼は、かなり深い悪夢の深淵に落されていた。
完全な絶望に、心を全て支配されそうになっていた。
ランスロは馬を走らせ王都イスタンに向かっていた。
体の調子が悪くふらふらして、馬から落ちないのが不思議なくらいだった。
順調に行程は進み、午後には王都に通じる大街道に出ることができた。
「後はこの街道をひたすら前に進むだけ、休まず行こう。」
彼はしばらく馬を進めて王都まであとわずかな距離まで進んだ時、反対側からかなりの速さで走ってくる早馬があった。
(人にぶつかるとあぶないなあ。なぜ、そんなに急ぐのだろう。)
その早馬はだんだん彼との距離が近づくと、なぜか馬の速さをゆるめ始めた。
馬の乗り手がランスロを見て、とても驚いて大きな声をあげた。
「ランスロ!!! 」
彼は違和感に気がついた。
「フィリップ!!! また………………」
王宮前の広場に、王都イスタンに住む多くの住民達が集まっていた。
その数は10万に及ぶのではないかと言われていた。
やがて大観衆の目が、広場を見渡せる王宮のバルコニーに注がれた。
信じられないほどの大歓声が起きた。
重病と言われ1か月ほど姿を見せなかったグネビア王女が、王宮の中からバルコニーに歩いて姿を見せたからだった。
心の奥底までの優しさと強さを秘めたきれいな青い瞳で微笑む、輝くように美しい王女の顔は、遠くの住民達にもはっきり見えた。
バルコニーの端には、警護役の騎士が警戒を徹底していた。
騎士の名前はフィリップ。ランスロとは士官学校の同級生で、ずっと寄宿舎の同室で暮らした貴族序列第1位のコンラート公爵家の次期当主だった。
フィリップは今、王宮直属の近衛騎士団の騎士になっていた。
しばらくして、グネビア王女はバルコニーから再び王宮の中に戻った。
騎士フィリップは抜かりなく警護を徹底して、後ろに続いた。
王宮に入ってから、グネビア王女がフィリップに言った。
「フィリップ。警護ありがとうございました。ところで、トランスファー城の騎士ランスロのことで何か知っていますか。あなたは士官学校の同級生で寄宿舎のルームメイトなのですね。ランスロのことで何か胸騒ぎがします。」
「王女様。ランスロとは士官学校を卒業為て以来、もう1年近く会っていませんが、この頃夢の中に良く出てくるのです。彼はとても苦しそうな顔で何かを悩んでいるようなのです。」
「そうですか。もしかしたら、夢の中でランスロと会っているのかもしれませんね。もし可能でしたら、『私は元気になりました。』と伝えていただけますか。」
「わかりました。」
とても懐かしい再会だったが、フィリップはとても険しい表情だった。
ところが一瞬、彼が見ている映像が心の底から微笑んでいる顔のフィリップと転換し、また元に戻った。
大街道の途中でランスロに出会ったことに、非常に驚いているようだった。
「どうしてそんなに急いでいるんですか。その答えはあまり聞きたくないのだけど。」
「トランスファー城に行こうとしていたんだ。大切なことを知らせるために、馬を走らせてきたんだ。ずっと君のことを考えながら――――」
「僕のことを………………まさか! 」
その後また、彼が見ている映像が心の底から微笑んでいる顔のフィリップと転換し、また元に戻ったりを繰り返した。
そして最後には、心の底から微笑んでいる顔のフィリップになった。
「グネビア王女様は数日前に元気になられ、昨日も王宮のバルコニーに立たれ広場に集まった10万人の人々にお姿を見せられたよ。それからランスロへの言付けがあるんだ。『私は元気になりました。』と伝えてほしいと言われたんだ。」
「えっ!!! よかった!!! フィリップ。ありがとう――」
「ランスロ。よく寝て。起きたらまた会おう――」
2人は近づいて肘タッチをした。
そして、心から愉快な2人の若者の笑い声が周囲に響いた。
心が大変元気になった勇者の候補から神聖の力の覇気があふれ出し、上級魔族ナイトメアゾロの力で作られた悪夢を完全に消滅させた。
魔界にいながら魔術鏡でランスロを監視していたゼロが言った。
「私の悪夢を完全に消してしまった。これが勇者の候補の力なのか。それにしても、私が悪夢に登場させた人物が、実際の本人の意識と成り代わってしまうなんて、こんな非常識なことが起きるのか。勇者の候補とその人物との結びつきはそんなに強いのか。」
その後、煙のような姿のゼロがポツリと言った。
「まあ、もういい。元々私は毎日いろいろなことを経験している人間の夢の一部を悪夢にして楽しんでいる魔族だ。それに、人間が悪夢を払拭して元気になるのを見るのもきらいではない。」
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