51 邪悪妖精2
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
なろう投稿する第2作目です。
「それでは司令官、行って参ります。」
「気をつけて。ランスロ君、街道周辺の町には、大きな氷のかたまりのひょうが絶え間なく降っているそうだから。体を守るためフルフェイスの甲冑を着て行くんだよ。」
「わかりました。」
ランスロは砦からさらに南下して、積雪が深い街道沿いの町を目指した。
その町に近づくと空が全て雪雲に覆われ、太陽の光りが完全に遮断されている光景が遠くに見えた。
それはあきらかに自然現象ではなく、魔術によって生み出されたものに違いなかった。
「中に入ってみよう。」
(まさか、ザラさんがこの異常気象を生み出していたらどうしよう。僕の婚約者なのに、人間の町に被害を及ぼすようなことをするだろうか――いや、そんなことは絶対ない。信じている。)
馬が可哀想だったので岩につなぎ、そこから徒歩で異常気象の中にある町に入った。
入った途端、ものすごい冷気だった。
灼熱の砂漠の温度から、極寒の雪原の温度に急に変わりランスロは驚いた。
それに、大きな氷のかたまりのひょうが絶え間なく降って、彼の甲冑に当たった。
(この異常気象を起しているエネルギーにもっと近づこう。)
彼は町の中心部に歩いて行った。
その途中にはつぶれた家々ばかりで、中には逃げ遅れた人々の亡骸もたくさんあった。
彼はそれぞれに、丁寧に手を合わせながら通り過ぎた。
彼が中心部にある広場に出た時、以外な出会いが待っていた。
「ザラさん!!! 」
士官学校の3年次の時、とても悲しい別れをした彼女だった。
そこに立っている彼女は、あれから5年以上が過ぎて背がとても高くなり、絵のような姿だった。
そしてたぶん、これから何年も年をとらないだろう大人びた完璧に美しい顔で、ランスロに微笑みかけていた。
「ランスロさん。お久し振りですね。何年ぶりでしょうか。今日は何でここに? 」
「……そうですね。士官学校の卒業式以来ですから3年ぶりですか。ところでザラさんは、人間界のここにいるのですか。」
「御迷惑をかけるわ。魔界から氷雪系の魔族が掟破りをして、人間界に住みたいと逃げ出したので捜しているのです。ランスロさんはまだ知らないかもしれないけれど、私は氷雪系の属性がありその系統の魔族を従えているのよ。」
「魔界の掟はとても厳しいことをよく知っています。ザラさんは逃げ出した氷雪系の魔族を見つけたらどうするつもりですか。」
「当然厳しく拘束し、掟に従い魔界の定めに委ねるわ。」
「そうすると命を奪われることは必然ですね。」
「仕方がないわ。」
「ザラさんには氷雪系の属性があるのですか、そうすると氷球を造って攻撃することもできるのですね。たとえば、炎人バーン様が放出した火球を打ち消すこともできるのですね。」
「だめだめ、上級魔族炎人バーンの打ち出した火球を、私の氷球で打ち消すことなど絶対にできません。私の氷球の威力は結構あるけど無駄です。」
「うれしいな。僕はずっと会いたかったザラさんと今話している。ザラさん。また僕が作ったパンを御馳走しますね。」
「えっ、ランスロさん。いつの間にパン作りができるようになったの。――――ランスロさん、なぜ泣いているの。」
ザラがそう言った瞬間、その姿が変わった。
黒い羽、口の両側には牙が生えており、その細長い目は邪悪につり上がっていた。
「弱い人間だな。それでも勇者の候補なのか。まあいい、今ここで消えるのだからな。私、上級魔族序列第6位のノイが人間界への侵攻の口火を切るのだ。」
空の上には、同じ邪悪妖精の下級魔族が無数に取り囲んでいた。
ノイは指先をランスロに向けた。
無数の下級魔族も同じ動作をした。
そして、指先から邪悪の気を丸めて作られた指弾が発射された。
無数の指弾はランスロの姿が見えなくなるくらい集まって、彼の体中に命中しようとした。
ところが、
彼の回りに見えない壁があるかのように、そこで止りポロポロと下に落ちた。
「なんだ。何が起きたのだ。」
邪悪妖精ノイはパニックになった。
泣き腫らした顔でランスロが言った。
「僕を守る神聖の力の覇気で体を覆ったのです。ただし、上級魔族のあなたの攻撃を防ぐ強度にするためには、事前に数秒必要でした。」
「私の攻撃を予知して、事前に用意したのか。騙されたふりをしてずいぶん狡猾な人間だな。」
「それをあなたが言う資格があるのですか!!! 」
邪悪妖精の姿が急に変わった。
人間の世界の野山にも多くいる精霊の可愛らしい姿になった。
「ごめんなさい、ランスロさん。私より強い上級魔族に無理矢理やらされたのです。」
邪悪妖精の言葉を完全無視して、彼はゾイゼンの剣を抜いた。
そして、勇者の覇気をその刃先に集中させた。
無言で彼は剣を一閃させた。
その光りは邪悪妖精を飲み込み見えなくなった。
そして、光りが消えた時、邪悪妖精の姿は全て消えていた。
いつの間にか、周囲を覆っていた雪雲は消えていた。
ランスロの口からひとり言が出た。
「ザラさん。もう少ししたらお会いしましょう。絶対にあなたと戦う未来は訪れません。」
彼は空を見た。
ぎらぎらした辺境デザートの太陽が照らしていた。
でも彼は別の空を見ていた。
(冬の空、星々がとてもきれいだった。でも僕は涙をこらえることで精一杯だった。)
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