↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『二千年後の時を経て運命に導かれし聖魔の継承者』  作者: 黒夜
第1章 目覚めし聖魔の継承者
PR
22/32

第21話 北の集落に広がる異常

西の採掘場で発見された黒い結晶。


その調査を通じて、カイゼルたちは、魔力を変化させる仕組みが複数の場所で使われている可能性を知った。


そんな中、街の北側にある集落から、新たな異常の報告が届く。


魔道具の停止。魔物の異常行動。そして、集落の外れで発見された黒い粉末。


これまでの事件との関連を確かめるため、カイゼルたちは北へ向かう。


そこでは、住民たちが原因の分からない現象に怯えていた。

「北の集落までは、歩いて半日くらいかかるみたいね」


ギルドを出たリリアは、依頼書を確認しながら言った。


「途中に森を通る必要があるそうです。魔物の様子も変わっている可能性がありますから、気をつけましょう」


セレスは荷物の中を確認し、回復用の道具を整えていた。


カイゼルは二人の準備が整ったことを確かめると、北門へ向かって歩き出した。


今回の目的は、集落で起きている異常の調査だ。


すでに魔道具が止まり、魔物も普段とは違う動きを見せているという。


西の採掘場で見つかった黒い結晶との関係も気になるが、まずは現地の状況を確かめる必要があった。


「そういえば、今回の依頼書には、住民が見たことのない現象が起きているって書いてあったわよね」


リリアが思い出したように言った。


「黒い粉末が見つかったこと以外にも、何かあるのかな?」


「詳しいことは、現地で聞いてみないと分からないね」


カイゼルはそう答えた。


「ただ、黒い粉末が見つかった場所と、魔道具が止まった場所は確認しておきたい。異常が起きた順番も重要だと思う」


「はい。原因を調べるには、いつ、どこで何が起きたのかを整理する必要がありますね」


セレスも同意した。


三人は街を出て、北へ続く街道を進んだ。


◇ ◇ ◇


街道を進むにつれ、周囲の景色は少しずつ変わっていった。


整備された道は次第に細くなり、両側には背の高い木々が増えていく。


森の入口に差しかかったとき、カイゼルはふと足を止めた。


「……魔力の流れがおかしい」


「また、黒い欠片の影響?」


リリアが周囲を見回す。


「まだ分からない。でも、周囲の魔力が一方向に引っ張られているように感じる」


カイゼルは意識を集中させた。


森全体が異常を起こしているわけではない。


しかし、北側の一角に向かって、かすかな魔力の流れが生じている。


自然に生まれる魔力の循環とは違い、何かに引き寄せられているような、不自然な動きだった。


「集落の方向ですね……」


セレスが北を見つめた。


「ああ。まずは集落へ向かおう」


三人は警戒を強め、森の中へ入った。


しばらく進むと、木々の間から獣の鳴き声が聞こえてきた。


「グルルル……!」


茂みが揺れ、灰色の毛並みを持つ狼型の魔物が姿を現す。


一匹ではない。


左右の茂みから、さらに二匹が飛び出してきた。


「来たわね!」


リリアは短剣を抜き、すぐに構えた。


しかし、魔物たちの動きはどこか不自然だった。


通常なら、三人の人数や構えを見て距離を取ることもある。


ところが、魔物たちは周囲を気にする様子もなく、一直線に襲いかかってきた。


「様子がおかしい。無理に倒さなくていい、動きを止めよう!」


カイゼルが声を上げる。


一匹がリリアへ飛びかかった。


彼女は身体強化の魔法を使い、横へ素早く回避する。すれ違いざまに短剣の柄で魔物の肩を打ち、体勢を崩させた。


残る二匹は、セレスとカイゼルへ向かう。


セレスが防御魔法を展開し、牙による攻撃を受け止めた。


その間に、カイゼルは魔物の魔力へ意識を向ける。


「……やっぱり、乱れている」


魔物たちの魔力は、本来の流れから大きく逸れていた。


だが、西の採掘場で見つけた結晶とまったく同じ反応ではない。


魔力が一方的に増幅されているというより、流れの一部が不自然に刺激され、衝動的な行動を引き起こしているようだった。


カイゼルは聖性を働かせ、魔物の魔力の乱れに干渉した。


乱れた部分を探り、過剰な反応を少しずつ鎮めていく。


魔物の動きが鈍くなった。


「リリア、今だ!」


「任せて!」


リリアは素早く距離を詰め、魔物の前脚を狙って短剣の柄を打ち込む。


魔物は地面に倒れ込み、残る二匹も同じように動きを弱めていった。


やがて、三匹は唸り声を収め、警戒するように三人を見た。


「……落ち着いた?」


リリアが距離を取りながら尋ねる。


「少なくとも、さっきのような異常な反応は弱まった。でも、原因が消えたわけじゃない」


カイゼルは魔物たちを観察した。


魔物たちはしばらくその場に留まっていたが、やがて森の奥へと去っていった。


セレスは安堵の息をついた。


「無事に済んでよかったです。でも、どうしてこんなに急に凶暴になったのでしょう……」


「それを確かめるために来たんだ」


カイゼルは森の奥へ視線を向けた。


魔力の流れは、依然として北へ引っ張られていた。


◇ ◇ ◇


森を抜けると、小さな集落が見えてきた。


木造の家が十数軒ほど並び、周囲には畑や家畜小屋がある。


街から離れているためか、集落の人々は自給自足に近い生活を送っているようだった。


しかし、集落の中は落ち着かない様子だった。


家の外に取り付けられた照明魔道具は消えたまま。


井戸のそばでは、何人かの住民が動かなくなった水くみ用の装置を調べている。


「本当に、あちこち止まっているのね……」


リリアが周囲を見回した。


三人が集落の中央へ進むと、年配の男性が近づいてきた。


「もしかして、ギルドから来てくださった冒険者の方ですか?」


「そうです。俺たちは、今回の異常を調べに来ました」


カイゼルが答える。


「私は、この集落の代表を務めているマルクです。来てくださって、本当に助かります」


マルクは疲れた表情で頭を下げた。


「ここ数日、魔道具が次々に動かなくなりましてね。最初は古くなったせいかと思ったのですが、修理しても、しばらくするとまた止まってしまうんです」


「魔物の異常も起きていると聞きました」


セレスが尋ねた。


「ええ。森に住んでいる魔物が、突然こちらへ襲いかかってくるようになりました。以前は、こちらから近づかなければ、向こうもむやみに襲ってくることはなかったんですが……」


マルクは不安そうに森を振り返った。


「それに、夜になると、集落の外れで妙な光が見えることがあるんです」


「光?」


リリアが聞き返した。


「青白い光です。地面の近くで、ぼんやりと光っている。近づこうとすると消えてしまうので、誰も原因を確かめられていません」


カイゼルは静かに考え込んだ。


魔道具の停止。


魔物の異常。


地面の近くに現れる光。


それらが同じ原因によって引き起こされているのかは、まだ分からない。


「その光が見える場所へ案内してもらえますか?」


「もちろんです。ただ、日が暮れるまで待っていただいたほうが……」


「いえ、まずは黒い粉末が見つかった場所を確認したい。そこなら、今でも調べられるはずです」


マルクは少し考えてから、うなずいた。


「分かりました。こちらへどうぞ」


◇ ◇ ◇


集落の外れは、森に近い小さな空き地になっていた。


周囲には古い木箱や使われなくなった農具が置かれ、地面には踏み固められた跡が残っている。


マルクは空き地の端を指さした。


「黒い粉末が見つかったのは、あの木の根元です」


カイゼルは近づき、地面を注意深く観察した。


木の根元には、黒い粉末がわずかに残っていた。


西の採掘場で見つけたものとよく似ている。


しかし、今回の粉末は粒が細かく、地面の表面に薄く広がっていた。


「触らないほうがいいですね」


セレスが言った。


「ああ。まずは魔力の反応を確認する」


カイゼルは少し離れた場所から意識を集中させた。


粉末そのものが発する魔力は弱い。


だが、その周囲には不自然な流れが残っていた。


何かを吸い寄せた後のような、歪んだ魔力の痕跡。


「……魔力を集めていた可能性がある」


「採掘場の結晶と同じ?」


リリアが尋ねる。


「似ているけれど、同じとは限らない。今回の粉末は、魔力を集める働きが弱いように感じる」


カイゼルは魔法収納から小さな容器を取り出し、粉末を少量だけ回収した。


その瞬間。


地面の奥から、微かな振動が伝わってきた。


「……今の、何?」


リリアが身構える。


セレスも周囲を見回した。


カイゼルは地面に手をかざし、魔力の流れを探った。


振動は一度きりではなかった。


ごく弱い反応が、地面の下から断続的に伝わってくる。


「この下に、何かあるのかもしれない」


「地下に空洞があるんでしょうか?」


セレスが尋ねた。


「その可能性もある。でも、自然にできた空洞なのか、誰かが作ったものなのかは分からない」


カイゼルは周囲を調べた。


木の根元から少し離れた場所に、地面が不自然に盛り上がっている箇所がある。


その表面には、細い線がいくつも走っていた。


土や草に覆われていて、遠目には分からない。


しかし、近くで見ると、線の一部は円形に連なっていた。


カイゼルは目を細めた。


「……刻印か」


「また、あの模様?」


リリアがしゃがみ込む。


地面に刻まれた線は、採掘場や古い遺跡で見つけたものと、よく似た構造をしていた。


ただし、今回は地面そのものに刻まれているのではなく、何枚かの薄い金属板が埋め込まれ、その上に土がかぶさっているようだった。


「誰かが、ここに装置を埋めたのかもしれない」


カイゼルは慎重に周囲を観察した。


金属板の中央から、かすかな魔力が漏れ出している。


その流れは集落の方向へ伸び、さらに森の奥へと続いていた。


まるで、地下に埋められた装置が、周囲の魔力を集めているかのようだった。


「マルクさん。この場所に、何かを埋めた覚えはありますか?」


カイゼルは代表者に尋ねた。


マルクは首を横に振った。


「いえ、私の知る限りではありません。ここは昔から、ただの空き地だったはずです」


「最近、誰かがこの辺りを掘っていたという話は?」


「……そういえば、数日前の夜に、見慣れない人影を見たという住民がいました」


三人の視線が集まった。


「どんな人物だったんですか?」


セレスが尋ねる。


「遠くから見ただけなので、詳しいことは分からないそうです。ただ、森の入口から大きな荷物を運んでいたように見えた、と」


カイゼルは地面の刻印を見つめた。


誰かが黒い粉末を残した。


地下には、刻印のある金属板が埋められている。


そして、数日前には、見慣れない人物が荷物を運んでいた。


これらの出来事が無関係だとは考えにくかった。


「……もう少し、詳しく調べる必要があるな」


◇ ◇ ◇


三人は集落の人々に聞き込みを行いながら、周囲の魔道具を調べていった。


水くみ用の装置は、魔力の流れが途中で乱れていた。


照明魔道具も同じように、内部の魔力が不安定になっている。


どちらも完全に壊れているわけではなかった。


カイゼルが聖性で乱れを整えると、一時的に正常な動きを取り戻した。


しかし、しばらくすると、再び魔力の流れが乱れ始める。


「やっぱり、魔道具そのものが原因じゃない」


カイゼルは、動き始めた照明魔道具を見ながら言った。


「周囲から何かが干渉しているように感じる」


「じゃあ、さっきの地面の装置が関係しているのかな?」


リリアが尋ねた。


「可能性は高いと思う。ただ、あの装置が何をしているのかは、まだ分からない」


セレスは魔道具の表面に手をかざした。


「魔力の流れを整えても、また乱れてしまう……。これでは、集落の人たちも困りますね」


「だからこそ、原因を調べる必要がある」


カイゼルは集落の外れを見つめた。


日が傾き始めている。


マルクの話では、妙な光が見えるのは夜になってからだという。


ならば、夜まで待てば、装置の反応が変化する可能性がある。


「今夜、あの場所をもう一度確認しよう」


「分かった!」


リリアがうなずいた。


「私も準備を整えておきます。夜は足元が見えにくくなりますから、明かりと防御魔法の用意をしておきますね」


セレスも答えた。


カイゼルは二人を見た。


「ただし、危険を感じたらすぐに離れる。装置を無理に動かしたり、壊したりする必要はない」


「了解!」


リリアは元気よく答えた。


その返事を聞き、カイゼルは小さくうなずいた。


三人は集落の人々に協力を求め、夜の調査に備えることにした。


◇ ◇ ◇


夜。


集落の明かりが少なくなり、周囲は静けさに包まれていた。


カイゼルたちは、昼間に黒い粉末を見つけた空き地へ戻ってきた。


セレスが小さな照明魔道具を手に持ち、周囲を照らす。


リリアは短剣を構えながら、森の様子を警戒していた。


「今のところ、何も起きていないわね……」


リリアが小声で言う。


「焦らずに待とう。魔力の流れは、昼よりも強くなっている」


カイゼルは地面に埋められた金属板を見つめていた。


昼間はほとんど感じられなかった反応が、今ははっきりと伝わってくる。


魔力が、地面の下へ集まっている。


そして、その流れが一定の強さに達した瞬間。


金属板の隙間から、青白い光が漏れ始めた。


「……光った!」


リリアが息をのむ。


光は地面の上を細い線となって走り、円形の刻印をゆっくりと描き出した。


同時に、集落の方向から小さな音が聞こえた。


停止していた照明魔道具が、一斉に点滅している。


「魔力の流れが変わった……!」


カイゼルは意識を集中させた。


地面の下にある装置が、周囲の魔力を集めている。


だが、それだけではない。


集められた魔力は装置の内部を通るたびに性質を変えられ、複数の方向へ送り出されていた。


その一部が集落の魔道具へ流れ込み、別の一部は森の奥へ向かっている。


「これは……魔力を分配しているのか?」


カイゼルはつぶやいた。


「分配?」


セレスが聞き返す。


「集めた魔力を、別々の場所へ送っているように見える。ただ、何のためにそうしているのかは分からない」


そのとき、森の奥で枝が折れる音がした。


「グルルル……!」


複数の魔物の鳴き声が響き渡る。


木々の間から、昼間と同じ狼型の魔物たちが姿を現した。


しかし、今度はさらに多くの魔物が集まっている。


その目には、青白い光がかすかに映っていた。


「また、魔物が……!」


リリアが短剣を握り直す。


魔物たちは、三人に向かって一斉に走り出した。


「セレス、後ろを頼む! リリアは無理に前へ出るな!」


「はい!」


「分かった!」


カイゼルは魔物たちの魔力を探った。


昼間よりも、はるかに強い乱れが生じている。


だが、その原因は魔物の内部だけにあるのではなかった。


地面の下に埋められた装置から、細い魔力の流れが伸びている。


その流れが、魔物たちの魔力に干渉していた。


「やっぱり、あの装置が……!」


カイゼルは聖性を働かせ、魔物たちへの干渉を一時的に弱めようとした。


しかし、装置から送り出される魔力は、途切れることなく流れ続けている。


一匹の魔物が、リリアへ飛びかかった。


リリアは横へ飛び退き、攻撃をかわす。


続いて別の魔物が迫るが、セレスの防御魔法がその牙を受け止めた。


カイゼルは周囲の魔力を安定させながら、装置の反応を探った。


壊せば止まるかもしれない。


だが、内部に蓄積された魔力が暴走する可能性もある。


ならば、まずは魔力の流れを切り離す必要がある。


「二人とも、少しだけ時間を稼いでくれ!」


「任せて!」


リリアは身体強化を使い、魔物たちを引きつけながら攻撃をかわした。


セレスは防御魔法を展開し、リリアが囲まれないように援護する。


その間に、カイゼルは装置へ意識を集中させた。


聖性で魔力の乱れを抑え、魔性で装置から流れ出す魔力の性質を変える。


二つの力を切り替えながら、流れを少しずつ弱めていく。


だが、装置の中心から、これまで感じたことのない強い反応が返ってきた。


カイゼルの手が止まる。


装置の奥には、まだ別の仕組みが隠されている。


そして、その仕組みが動き始めようとしていた。


「……これは、ただの魔力分配装置じゃない」


青白い光が強まり、地面の下から低い音が響く。


装置の中心に、円形の刻印とは別の模様が浮かび上がった。


カイゼルは目を見開いた。


それは、これまで見つけた刻印とは異なる形をしていた。


そして、その模様が光った瞬間、森の奥から、今までとは比べものにならないほど強い魔力が流れ込んできた。


「何だ……?」


カイゼルがつぶやく。


地面が大きく揺れた。


リリアとセレスも、思わず足を止める。


装置の中心から、青白い光が空へ向かって伸びていく。


その光は一瞬だけ強く輝き、やがて地面の下へ吸い込まれるように消えた。


同時に、魔物たちの動きが止まった。


彼らはしばらくその場に立ち尽くしていたが、やがて力が抜けたように座り込み、唸り声を収めた。


カイゼルはすぐに周囲を確認した。


装置から流れ出していた魔力は弱まっている。


だが、完全に停止したわけではなかった。


「……今の反応は何だったんだ」


彼は地面を見つめた。


装置の中心に浮かび上がった模様。


森の奥から流れ込んだ、強い魔力。


そして、突然停止した魔物たち。


それらの意味は、まだ分からない。


しかし、今回の異常は、これまでの黒い欠片とは違う段階に進んでいるように感じられた。


◇ ◇ ◇


夜明け前。


カイゼルたちは、集落の人々に協力を求めながら、装置の周囲を安全な状態に保っていた。


魔物たちは森へ戻り、集落への襲撃もひとまず収まっている。


ただし、地面の下に埋められた装置は、依然として弱い魔力を発し続けていた。


「今のところ、魔道具の反応は落ち着いていますね」


セレスが集落の照明魔道具を確認しながら言った。


「ああ。でも、装置そのものを停止させられたわけじゃない。エルドさんに調べてもらう必要がある」


カイゼルは、地面に埋められた金属板を見つめた。


今回の装置は、これまで見つけた黒い欠片とは違い、周囲の魔力を集めて複数の方向へ送り出していた。


さらに、装置の中心には別の仕組みが隠されているようだった。


「また新しい謎が増えちゃったわね……」


リリアがため息をつく。


「でも、少なくとも集落の人たちを守ることはできた。今はそれで十分だと思う」


カイゼルは静かに答えた。


「そうですね。原因が分からないままでは、また同じことが起きるかもしれません。でも、今回の記録があれば、少しずつ解明できるはずです」


セレスはうなずいた。


カイゼルは、地面に刻まれた模様をもう一度見た。


あの瞬間、装置の奥で何が起きたのか。


森の奥から流れ込んだ魔力は、どこから来たのか。


そして、誰がこんな装置を集落の外れに埋めたのか。


答えはまだ見つからない。


だが、確かなことが一つあった。


黒い結晶に関する異常は、単独の場所で起きているわけではない。


複数の場所に、異なる仕組みが設置されている。


そして、それらは何らかの形でつながっている可能性がある。


「エルドさんに報告しよう。今回の装置は、これまでのものと違う」


カイゼルは立ち上がった。


「それから、地面の下にある装置は、専門の調査員が来るまで触らないように伝えておく」


「分かった!」


リリアがうなずく。


「私も、集落の人たちに説明してきますね」


セレスも立ち上がった。


三人はそれぞれ準備を整え、集落の代表であるマルクへ報告に向かった。


集落を襲っていた異常は、ひとまず落ち着いた。


しかし、地面の下に残された装置は、今も微かな魔力を発し続けている。


そして、森のさらに奥。


誰も足を踏み入れていない場所で、一つの小さな結晶が、静かに明滅していた。

第21話を読んでくれてありがとう!


今回は、北の集落で起きていた魔道具の停止と魔物の異常行動を調査しました。


集落の外れには、黒い粉末とともに、地面の下へ埋められた装置が存在していました。その装置は周囲の魔力を集め、複数の方向へ送り出していたようです。


さらに、夜になると装置が反応し、森の奥から強い魔力が流れ込むという不可解な現象も起きました。


これまでの黒い欠片と似ている部分はあるものの、今回の装置には別の仕組みが隠されているようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。