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第七十一話

 イルミと買い物デートに行って色々買ったが、時間が足りなくて大きな物しか買って無い。小物や他に必要な物は執事のフロッシュさんに任せよう。シャンプーや石鹸。タオル等はその都度出して置いたので必要ないと分かっているだろう。


 そう言えば、グラストフの町の領主館の中身も全然手を付けていない。執事が決まれば任せられるのだが。


 グラストフと言えば、まだ代官に会って無いな。どんな人物なのか確認しないとな。これは明日も学院には行けないかな。


 翌朝用事を済ませてからグラストフへ転移する。いきなり代官邸には行かずに聞き込み調査からだ。まず、古そうな商店を回ってみる。評判は良くも悪くもない。男爵の没落後この町を支えてきたと言う点は評価出来るようだが、特別な政策は何も取って無い様だ。これは困ったぞ。無能なら切り捨てられるし有能なら引き続き代官をして貰うつもりだったが、有能でも無能でもない、いわゆる無難と言う奴だ、これが一番困る。とりあえず本人に会ってみるか。賄賂でも貰って居れば面白いんだがな。


 代官邸はこじんまりしているが清潔感のある建物だった。門番が居ないので扉のノッカーを叩く。すると執事らしき初老の男が現れる。


「代官はご在宅ですか?私はオーバルバイン子爵と申します。」


「オーバルバイン子爵様と言う事は新しい領主様ですか?」


「そうなるね。で、代官は居る?」


「少々お待ちください呼んでまいります。そちらのソファにかけて下さい。お茶をお持ちします。」


 代官邸は入ってすぐが応接間になっている様だ。執事はメイドに何やら指示をして奥の階段を上って行く。


 暫く待つとメイドがお茶とお菓子を持って来てくれた。紅茶はあまり上等では無かったが、お菓子は結構美味しかった。多分砂糖をあまり使えない分甘さが控えめになり食べやすくなったのだろう。


 お菓子に感心していると階段から60代位の小男が下りて来た。


 ユーリが立ち上がろうとすると、それを制して。


「座ったままで構いません。私が代官のセッテンと申します。」


 そう言いながら階段を降り切った。


「オーバルバイン子爵です。この度、グラストフの新領主に任命されました。」


「噂は存じております。エンシェントドラゴンを退治したとか。」


「ほう?そんな噂が流れているのですか?」


「いや、表立っては流れていません。でもドラゴンが退治され、未成年の子爵が誕生すれば、聡い者なら想像がつく筈です。ここは旅商人の多い街です。そう言う噂も一部では流れています。」


 ん?この代官意外と使えるかも。


「ちなみに30年何をしていた?」


「私は代官です。領主に仕えるのを待っていました。」


「30年間ずっと?」


「本来ならこんなに長く領主が決まらない事は無いんです。大抵は数年で領主は決まる。しかし、私はミスを犯してしまいました。」


「ミス?」


「こう言ってはなんですが、前領主はあまり賢い方ではありませんでした。この町の実質的な仕事は私が全て引き受けていました。領主の没落後も同じように町を統治し続けました。その結果、この町は代官に任せて置けば良いと国に判断されてしまいました。私は貴族でも何でもありません。何かが起こった時町を救う事は出来ません。私は考えました。有能でも駄目、無能でも駄目、無難な代官になろうと、そうすれば、国は考え直してくれるのではと。」


「ほう?では、世間の評判は自分の本当の能力では無いと?」


「私の能力は貴方様がご自身で判断して下さい。私はもう若くありません。時代は子爵様の様な若い方を求めているでしょう。私は何時引退しても構わない覚悟です、子爵様が要らないと判断したのなら要らない人材なのでしょう。」


 ユーリは頭の中にグラストフの正確な地図を思い描き紙に転写しテーブルに出す。


「これが今のこの町だ、どう思う?」


「北部を開拓されたのは良い判断だと思います。しかし、この町の本当の生命線は中央の東西に繋がる道です。特に東には王都がありますので町を豊かにするなら東西にも町を広げるべきかと。」


 やはりこの代官は使える、ユーリと同じ事を考えている。


「近い内に東西に5キロずつ町を広げます。出来れば道幅も広げたい。町造りをします。必要な人員を確保して下さい。」


「ちなみに魔法で広げるのですか?」


「そうだよ。」


「解りました。5日下さい。何とかします。」


「じゃあ5日後までに東西を広げておくから、後はよろしくね。」


 こうしてユーリはまた1人優秀な人材を手に入れた。


「あ、ちなみに良い家具屋さん知らない?領主邸の中身がまだ何もなくてね。」


「家具屋ですか?この辺の腕の良い職人は皆王都へ出てしまいますので。」


「そっかぁ。じゃあ王都で揃えるか。この辺の地場産業って無いの?」


「昔は鉄が豊富に取れたので鉄製品が名産だったのですが、今は鉄が尽きてしまって。」


「ふむ、じゃあ何か考えないとね。って、鉄があれば何とかなる?」


「そうですね、昔の職人はもう皆何処かへ行ってしまいましたが、新たに鉱山が発見されたとなれば、また、それを求めて活気が出るでしょうね。」


 鉱山か、製品じゃなくて素材でも良い訳だ。では鉄より高価な金やミスリルなら?これは面白いアイデアかもしれない。


 鉄や金は加工がしやすい、あれ?ミスリルってどうやって加工するんだ?加工できないんじゃ地場産業にならないぞ。

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