第六十話
「知らない人と結婚したくありません。出来れば結婚相手は自分で見つけたいです。」
珍しくユーカがハッキリと物を言う。
「ふむ、時間的にそれが許される状況では無いと?」
「いや、その、出来れば・・・」
「何?協力できる事なら手助けするよ。」
「ユーリ君が貰ってくれないかと・・・」
「え?僕?」
「ユーリ君やイルミたちと離れたくないです。」
どうやらユーカは僕と結婚すれば他のメンバーとも一緒に居られると思っているらしい。
「僕と結婚しても皆と一緒に居られるとは限らないよ。他のメンバーも自分の将来設計があるだろうからね。」
「それでも知らない人に嫁ぐよりは可能性は高いですよね?それにユーリ君とは一緒に居られるし。」
「まあ、確かに。」
「別に正妻じゃなくても良いですよ。側室でも愛人でも構いません。」
あやうく飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。ユーカの口から愛人と言う言葉がでるとは。
「冗談では無さそうだね。タイムリミットは?」
「ギリギリ粘って1年かな。」
「ん~、なんとかユーカの納得できる答えを探してみるよ。」
「それって私を貰ってくれるって事?」
「まだ、約束は出来ないけど、そう言う事になるかな。」
ユーカが顔を真っ赤にして暑い暑いと顔を手で扇いでいる。
さて、こう言う話だと最適なのはイルミだな、うちの男性陣は頼りがい無いからなぁ。
「と言う事なんだけど、どう思う?」
場所は変わってイルミの商会の応接室を使わせてもらっている。ベンマックさんは来客で忙しそうだった。
「ユーリ次第なんじゃない?ユーカの父親もアトマス商会の事は知ってるはずだから、そこの創始者なら反対はしないと思うけど?」
「イルミはそれで良いの?」
「え?」
イルミは目に見えて動揺している。
「例えば、僕がこの商会に婿入りして、第2夫人としてユーカを迎え入れる事は可能かな?」
「それは出来ないわ。商会の店主は幾らお金を持っていても夫人は1人しか持てないわ。2人以上夫人を持てるのは貴族だけよ。って言うか、何気にプロポーズ?」
プロポーズと言う言葉は無視して話を続ける。
「貴族になれば夫人を2人持てるんだね?」
「そうね、下級貴族なら2人まで、上級貴族なら4人まで持てるわ。」
「手っ取り早く貴族になる方法ってあるかな?」
「ユーリ君って3男だよね?お兄さん2人を暗殺する?」
「いや、冗談じゃなくて。」
「一番確実なのは王宮魔術師になる事かな。ユーリ君の実力なら可能だし。」
「タイムリミットが1年しかないんだよ。」
王宮魔術師はユーリも考えたが、なるのに4年以上かかる。
「でも、確実になれる実力があるなら、ユーカの父親は説得出来るんじゃない?」
「ベンマックさんはどう説得するんだい?」
「やっぱプロポーズ?」
「ベンマックさんは嫁にくれるって言ってたよ。」
「人を犬や猫みたいに。」
ベンマックさんはユーリの事を商人だと思っている。貴族になったら態度が変わるのだろうか?
「真面目な話、1年以内に貴族になる方法って無いかな?」
「成人もしてないのに貴族になるなんて無茶な方法・・・あ、1つだけあるわ。」
「なになに?」
「武功を上げるの。」
「武功?」
イルミの話だと、冒険者が国の大事に繋がる様な事件や魔物を解決したり退治したりすると、年齢やランクに限らず、国が貴族に叙爵してくれるのだそうだ。
しかし、そう簡単にそんな事件や魔物は現れない。
「現れなかったら退治に向かったら?ユーリならドラゴン位退治できるでしょ?」
「まあ、ドラゴン程度ならなんとでもなるけど、何もしてない無害なドラゴンを倒して、爵位を貰えるの?」
「じゃあ、ドラゴンを王都まで連れて来て王都を襲って貰いましょう。そこでユーリの出番って言うのは?」
「自作自演かぁ。」
「美女2人が手に入るのよ。悪く無いと思わない?」
確かに作戦自体は悪く無い。ただ、本当にこんな事で爵位が貰えるのだろうか?だが、ユーリには他にこれと言ったアイデアが無い。まあ、時間もある事だしやってみよう。まずは、作戦を立案し、作戦に必要な魔法を作成して行く。久しぶりの魔法創造である。とりあえず、転移の魔法を作成した。これが無いと、ドラゴンを連れて来るのが大変だ。それからドラゴン退治のために氷魔法の上位魔法を改良して行く。炎魔法で消し飛ばしたら褒賞が貰えない。
魔法を作ったら慣れるまで練習だ。その間にドラゴンが居る場所をイルミに探して置いて貰う。ノリで作った冒険者カードが役に立つ。
転移の魔法もだいぶ慣れて来た。これで商会や店の移動も楽になりそうだ。ただ、1度行った事がある場所しか移動できないのが難点と言えば難点だ。それからユーリは『ブリザード』の魔法を改良して、『永久凍土』と言う魔法を作成した。これはこの世界には無い『絶対零度』と言う概念を氷魔法に付与した物だ。この魔法があれば、サラマンダーでも凍らせる事が出来るだろう。
一通り魔法を使ってみて感触をつかんだ頃。イルミがやって来た。手には何やら紙を丸めた物を持っている。
「これは?」
「ああ、地図よ。」
そう言って丸めた紙を広げる。結構大きく。A3位のサイズがある。
「この中央よりやや下にある赤い丸が王都ね。で、北東に180キロ程進んだ。この山が竜が住むと言う『竜の聖地』よ。」
竜の聖地って、そんな所からドラゴンを攫って来て問題にならないのだろうか?
「良い?狙うのは一番大きいブラックドラゴンよ。レッドドラゴン程度だと騎士隊や魔法師団に倒されてしまう可能性がゼロとは言い切れないわ。まあ、王都の部隊は戦争の経験も無いから逃げ出すのが落ちだと思うけど、念には念を入れてね。」
「了解、お姫様!!」
こうして、ユーリのドラゴン退治が始まるのであった。




