第五十四話
授業中もキルケの発言が気になって集中できないユーリであった。1年生を部員に入れる事も考えたが、この販売部はユーリの存在で成り立っている。ユーリが卒業した後、存続は難しいだろう。そうなると下級生の入部は難しい。
色々考えたが落としどころが見つからない。下級生には店舗で買ってもらうか、友達に頼むかしてもらうしか無いのだろうか。そう言えば1年生の時平民3人組が隅っこで目立たない様にしていたのを思い出した。まあ、Aクラスだからかもしれない、他のクラスはもう少し平民の数が多いから孤立する事は無いのかな?とりあえず、この問題は課題として心に留めて置こう。
放課後、売り上げや要望を聞き、商品の補充をして解散にする。ユーリはアトマス商会に向かった。
アトマス商会では相変わらず砂糖が一定数出ている。他の商品も時々デザインを変えたりしているので販売数は落ちていない。
「アトマスさん今日の売り上げの状況はどう?」
「相変わらず繁盛してますよ。それより、ユーリ様の方の新商売が気になります。商会では販売の予定は無いんですか?」
「ん~、購買層が違うから、商会じゃなくて店舗にしたんだけど。商会にはまた違う商品を考えるよ。」
「頼みますよ。ああ、それから頼まれていた店員候補が2人明日面接に来ますよ。」
「アトマスさんの方でまず面接して、合格だったらここへ来るように指示して下さい。」
そう言って『賢者の叡智』で作成した地図を2枚渡す。
「時間は16時半でお願いします。商業ギルドの紹介ですから余程の事が無い限りまともな人が来るでしょう。」
「解りました。うちで働けると言う基準で面接して置きます。」
「お願いします。条件も商会と一緒で構いません。住み込みで金貨1枚。って事で話を進めて下さい。」
アトマスとの打ち合わせが終わると、商会の皆に声を掛けてから帰宅する。
翌日学院へ行くとイルミが商業ギルドでの登録を済ませたと報告して来たので丁度良いと、今日の4時半から店員の面接がある事を伝える。
「来れる人だけで良いので4時に店舗に集合ね。」
放課後皆より一足先に店舗へ向かい、店の体裁を整えて行く。入って左側に本のスペース、その奥にシャンプーと石鹸を並べる。中央のショーウインドウの中には手鏡、ポーチ、リップスティック、口紅、コロン等の小物を2段に分けて陳列する。そして、右側にはカーテンで仕切りを作り、下着売り場を作成する。下半身だけのマネキンを作り下着を穿かせ、売れ筋の物を展示し、その他は棚に2サイズずつ綺麗に並べて行く。下着なので試着室は無い。
店舗が完成して、一休みしているとメンバーたちがやって来た。
「へぇ。店が出来上がってるね。」
「本当。商品が入るとイメージが違うわね。」
「面接まで30分位時間があるから、今日の報告と面接の注意点を確認して置こう。」
「ポーチと手鏡の新デザインは好評よ。お金に余裕のある子は買って行くわ。」
「下着も結構な数出ました。まだまだ売れ続けると思います。」
「本も良い感じだよ。貸し借りしてる奴も少しは居るけど、やはり読み返したくなるので購入する人の方が多いね。」
「OK、補充は大丈夫かな?それは明日の朝でも良いか。面接に関してだけど、特にこれだけは聞きたいって事はあるかな?」
誰も発言が無い。多分面接自体初めてするので要領が解らないのであろう。
「じゃあ、面接は僕とイルミでやるので他のメンバーは見ててね。気になる事があれば発言しても良いし。」
まだ16時半まで少し時間があると思った時に、面接の2人がやって来た。
「雑貨屋イルミの面接はこちらで良いのでしょうか?」
「はい、そうです。中へどうぞ。」
まずは販売する商品を見て貰う。2人とも初めて見る商品が多いので一つずつ説明して回る。特に本と下着に吃驚していた。
その後バックヤードに移動して、面接を始める。全員にメロンソーダを配りテーブルにも4つ置く。
「どーぞ、飲んでリラックスして下さい。アトマス商会の面接はパスしてるのでここで落ちる事はまず無いと思いますよ。」
面接に来たのはアロマと言う金髪翡翠眼の20歳位の女性と、リーズと言う茶髪で茶色の目をした16,7の子だ。2人とも小柄で見た目は清潔感があって好感が持てる。
「まず、条件は聞いていると思いますが、住み込みで月に金貨1枚となります。店は朝10時開店で夕方の5時に閉店です。休みは週に1日これは交代では無く2人一緒に休んで下さい。それから、これは店の都合なのですが、お風呂は毎日入って下さい。石鹸とシャンプーは店の商品を使用する様に。また、食事は出来るだけ自炊でお願いします。何か質問等ありますか?」
「店の商品はさっき見せて頂いた物で全部でしょうか?」
「いや、これからも商品は増えると考えて下さい。店の商品は一通り差し上げますので自分で色々試してみて販売に生かして下さい。」
「休みは自分たちで決めて良いのですか?」
「はい、週に1日であれば何時休みにしても構いません。2人で話し合って決めて下さい。」
「かなりの好条件だと思うので是非雇って頂きたいのですが、この店はずっと続くのでしょうか?」
「はい、一応ずっと続ける予定ですが、もし途中で閉める事になってもアトマス商会の方で引き受けますのでご安心下さい。」
「では、よろしくお願いします。」
「皆はどうかな?お2人に任せて良いかな?」
他のメンバーに振ってみるが全員頷いている。
「では、お二人とも採用させて頂きます。なるべく早めにこちらに住んで店を開けて下さい。それから、僕の隣に座っているのがオーナーのイルミさんです、覚えて置いて下さい。」
「イルミです。若輩者ですが、よろしくお願い致します。」
「ありがとうございます。一所懸命働かせて頂きますので、こちらこそよろしくお願い致します。」
こうして、『雑貨屋イルミ』は順調に開店に向けて進んで行くのであった。




