第四十一話
テストの結果、石鹸の方も良好だった。今までの石鹸より低刺激で肌がすべすべになって、香りが良いと、ユーカが絶賛していた。一度使ったら元の石鹸には戻れないらしい。これは女性陣の口コミ効果に期待したい。
参考書については、値段が安すぎるとの声が出たが、このまま行くつもりだ。特に魔力操作の参考書は、授業で習ってない魔力量の伸ばし方が『賢者の叡智』に含まれていたので、それだけでも買う価値があると言う。
通常魔力操作は緻密な操作を繰り返す事で魔量の総量を上げるのが学院式だ。これに対し、『賢者の叡智』では、寝る前にベッドに横になった状態で魔量を使い切り気絶するだけで、翌朝には魔力量が1~2ほど増えていると言う、お手軽方式である。両方を併用するだけで、月に50は魔力量を増やす事が可能だ。1年で600になる計算だが、流石にそう上手くは行かない。魔力量が上がれば使い切るのが難しくなるからだ、1年生が終わる頃に400になっていれば優秀だろう。そして5年の卒業時に1000になっていればユーリの参考書は成功と言えるだろう。現在の卒業時の平均魔力量が300と言うのを考えれば卒業平均が1000になれば3倍強となる、これは凄い発見だ。
「この参考書を買うか買わないかで人生変わるんじゃないかな?」
ルーカスが大げさな事を言う。
「私は早速昨日からやってるわよ。まあ、私たちの場合、ユーリ君に魔力量いじって貰ったから、今更感はあるけどね。」
「でも、入学早々にこれを知ってるのと知らないのでは、2年に上がる時に大きな差が出ますよね。」
「出来れば入学前にこの参考書が欲しかったよ。」
「それよ!学院に入学を希望している子供達にも売れるんじゃない?」
「着眼点は面白いけど、何処で販売する?」
「「「アトマス商会!!」」」
「おいおい、だったらイルミの商会でも売れるんじゃない?」
イルミの目がキラリと光った。
本気ですかイルミさん・・・
こうして、議論は白熱し、石鹸とシャンプーは明日から女性陣2人が口コミ開始、参考書は男性陣が学食で販売開始と決定した。
翌日、ユーリとルーカスは早めに学食へ行き、長テーブルと椅子を用意して、参考書を100冊ずつ並べ、テーブルには垂れ幕を張り、『参考書販売』の文字を入れた。
ユーカとイルミはひたすら口コミ作戦をしている。マジックバッグに商品を持たせてあるのでどれくらい売れるか楽しみだ。ちなみに、こちらも一律銅貨5枚にした。これは計算が面倒だと言うユーリが押し切った。
結果として、初日の売り上げはあまり振るわなかった。参考書が5冊、シャンプーが3つの石鹸が4つだ。
まあ、勝負はこれからだろう。実際に使った者の口コミがどれだけの効果を及ぼすかがポイントだ。
2日目、ユーリとルーカスは昨日と同じスタンバイをする。が、ここで異変。何やら待ってる人が居る。
「あの、魔力操作の参考書が銅貨5枚って本当ですか?」
1人の女子生徒が聞いて来た。
「はい、こちらがその参考書です。銅貨5枚で販売してます。」
実際に本を持ち上げて見せる。もう一冊の座学の参考書も見せて宣伝する。
「こちらは座学の参考書で過去100年のテスト問題から出題傾向を割り出し試験に出やすい部分をわかり易く解説してます。」
「えっと、魔力操作の参考書を買います!」
「お買い上げありがとうございます!」
これが呼び水になったのか、学食へ来ていた学生たちがこちらに関心を持ち始めた。
「魔力操作の参考書って何が載ってるの?」
「5年間で教わる魔力操作の解りやすい手順とその応用方法等が載っています。もし魔力量があまり上がらなくて悩んでいるなら是非買ってみて下さい。」
「この厚さの本がたったの銅貨5枚ですよ。羊皮紙だったら金貨2枚はしますよ~」
ルーカスも負けずに売り込みをかける。金貨2枚、日本円でおよそ20万円それが500円で買えると言うのだ。貴族ならお小遣いで2冊くらい余裕で買えるだろう。そこを売りにするとは流石に商会の息子は伊達じゃない。
売り込みが功を奏したのか、参考書を見てくれる生徒がちらほらと集まって来た。中には2冊同時に購入してくれる者も居る。平民の子などは1冊ずつ買って交互に回し読みする様だ。今日の売り上げは32冊と言った所だ。まあまあだろう。
一方ユーカとイルミの女性陣は大変な目に会っていた。学内の最大派閥に囲まれ根掘り葉掘り様々な事を聞かれて居たのだ。主にユーリの事を。しかし、そこは商会の子女、転んでもただでは起きない。シャンプーと石鹸を買う事と交換条件でユーリの話をする。どうやら、グループ内にユーリの事を狙っている子が居るらしい。このシャンプーと石鹸もユーリが作ったと説明したら飛ぶ様に売れた。本日の売り上げシャンプー30個に石鹸35個。
放課後合流して、お互いに情報を交換し合う。今回は女性陣の勝ちって事らしい。何時から勝負になったんだ?
「やっぱり商売って面白いね。」
「ユーリ君は貴族なのに商人気質なのね。」
「ん~、3男だし、6歳の時から商売には関わっているからね。将来は商人って漠然と決めていたし。」
「あれだけ魔法を使えるのに商人になるんですか?」
「魔法が使えるから商人になりたいんだよ。」
「ご両親は王宮魔術師を勧めるでしょうね。」
どうだろう?うちの両親は自分のやりたい事をやれって言いそうだな。




