第四十話
「参考書は方向性決まったから、次は美容関連だね。どんな物が欲しいのかな?」
「まだ学生だから化粧品は早いと思うわ。」
「そうね、私は髪を艶々にするオイルとか欲しいかも。」
この世界にも石鹸はある。しかし、あまり質が良いとは言えず、特に髪を洗うとぱさぱさになってしまい、オイルが必需品になっているらしい。
「ん~、オイルも良いけどさ、根本的に髪を洗う石鹸を変えたらどうかな?」
「え?どういう事?」
「髪を洗う専用の石鹸を作るのさ。ぱさぱさしない奴をね。」
「そんな事できるの?」
リンスインシャンプーなら髪を傷めずに洗う事が出来て、リンスの手間も要らない、ユーリはこれならヒットするんじゃないかと言う予感がある。
「その前に根本的な質問なんだけど、庶民の風呂事情ってどうなの?」
「お風呂は普及率10%って所かな、大きな商会なら持ってる家もあるけど、普通は銭湯へ行くか、お湯で体を拭く程度かな?生活魔法もあるからお風呂は入らないって人も多いわよ。」
「なるほど、って事は、洗髪するのは貴族がメインって事で良いのかな?」
「そうね、貴族は髪を洗った後にどれだけ良い香りのする油を付けるかで競ってるわね。」
風呂文化はちゃんとある様だ。だとすれば石鹸も売れるかも。石鹸とシャンプー、あとはフレグランスなんかも売れるかもしれない。
「ちなみにユーカとイルミの家にはお風呂あるの?」
「あるわよ。」
「あります。」
「そっか、じゃあこれ使ってみてよ。」
そう言ってリンスインシャンプーを2人に渡す。
「これで髪を洗ってみて。泡立たない場合は2度洗いしてね。で、洗った後はオイルは付けないで様子を見て、後で報告して下さい。」
「これが、髪を洗う専用の石鹸?」
「そうだよ、『シャンプー』と言う名前です。売れるかどうか、しっかりと確かめてね。」
「「解った!」」
「僕には?」
「ルーカスも髪の毛気にするの?」
「そりゃあ、周りは貴族だらけだからね、僕だって髪の匂いは気になるよ。」
「OK、じゃあルーカスにも1本!」
こうして、リンスインシャンプーのテストが始まるのである。ユーリは参考書作りに忙しい。参考書は教科書がA4版位なのでB5版で作る事にした。座学に関しては『賢者の叡智』で過去100年のテストデータを洗い出し、良く出る問題を上位から解り易く図解入りで作成した。これはモノクロで300ページ近い物が出来上がった。見た目はゲームの攻略本だ。実技に関しての参考書はサイズは同じB5版だが、オールカラーで写真を多用し、目で見て魔法をイメージできるように作った。こちらは200ページほどの物が出来上がった。とりあえず、この2冊を売りに出してみようと思う。売れるようなら、初級魔法編や中級魔法編の参考書を作ろうと思う。
翌朝、学院へやってきたユーリは吃驚した。ユーカとイルミの髪型が何時もと違うからだ。2人ともふわりとした髪の毛を自然と流した感じに仕上げている。何時もと雰囲気の違う2人に周りの生徒達も何やら噂をしている。
「ユーリ君おはよう!これは売れるわよ。」
「うんうん、私もそう思う!」
ユーカとイルミは昨日早速使ってみて、売れると確信した様だ。そう言えばルーカスの姿が見えない?
「あれ?ルーカスは?」
「そう言えば、まだ来てないわね。」
噂をしていると、ルーカスが遅刻ギリギリでやって来る。
「どうしたんだルーカス。何時も早いのに。」
「いや、髪の毛の事で家族や使用人に色々聞かれてさ、誤魔化すのに時間がかかったんだよ。」
そう言うルーカスの髪の毛も何時もよりふっくらとしていて艶がある。
「なるほどね。ああ、そう言えば参考書の試作品が出来たから後で渡すよ。」
「もう出来たの?」
「とりあえず2冊だけどね。」
「それでも早すぎない?」
放課後、訓練場に集まった4人は早速、シャンプーや参考書の話で盛り上がるのであった。ユーリは、石鹸を3つ取り出し3人に渡す。
「今度はこれを試してくれない?普段使ってる石鹸とは違うと思うよ。」
「なんか凄く良い香りがする。」
「本当だ!これってバラの香り?」
この世界の石鹸は廃油を使ってるので良い香りはしない。バラの香りの石鹸は余程珍しいと見える。
「また、使った感想を頼むよ。あと、売れるかどうかもね。」
「それから、値段や、売る場所の事も考えないとね。」
「ああ、売る場所は考えていなかったな。購買って訳にはいかないよね?」
「口コミ販売も良いけれど、学食で販売させて貰えないかな?」
「学食かぁ、それは考えていなかったな。」
商品が現実味を帯びて来たので3人組が積極的だ。ユーリはやはり商人との話し合いは面白いと感じるのであった。
「参考書は学食や図書室で販売しても面白いかもね。」
「シャンプーや石鹸は?」
「その2つは口コミ販売にしようと思う。ユーカとイルミを見れば口コミも上手くいきそうだからね。」
とりあえず、石鹸と参考書を家に持って帰って貰い、じっくりと売れるかどうかの判断をして貰うって事で今日の締めにした。その感想次第で販売日を決めようと思う。
平民3人組はバッグに入っている石鹸と参考書が気になってしょうがない様で、急いで帰路についた。
一方ユーリは、商会の方へと歩いて向かうのであった。




