第三十四話
弁当作戦初日。売れたのはたったの10個だった。しかしユーリはめげてない。口コミの凄さを知っているからだ。今日の弁当はハンバーグをメインにポテトフライとサラダを添えてある。テーブルパンが3つ付いて銅貨2枚である。普通なら完全に原価割れである。
「しかし、アトマス商会の秘密、これは他の商会は勝てないわね。」
イルミがショックを受けている。まさか魔法で全てを賄っているとは完全に予想の範囲外だった。これなら原価は0円、何を売っても儲けが出る。実を言うとアトマス商会では職人を育てる為にあえて、全てをユーリが行わないで出来る部分は職人にやらせると言う方法へシフトしている。最近では商会も食堂も半分位は職人の手による製品が出ている。
他の2人も同様の様でうんうんと頷いてイルミの発言に納得している。
「まあ、反則技だけどね。皆も魔法を習えば出来るようになるかもよ。」
「そうかな?そういう次元の話じゃない様な気がするけど。」
イルミのジト目が怖い。
「と言うか、なんでユーリ君は魔法を使えるんでしょうか?」
鋭い指摘がユーカから突き刺さる。
「いや、素質があったと言うか、姉がね、ここの卒業生で色々教えてもらったし。」
「魔力量の問題はどうなんでしょう?こんな凄い魔法、魔力量相当要りますよね?」
いや、ユーカさん今日はグイグイ来ますね。
「そうね。知れば知るほど、ユーリさんの謎が深まりますわ。」
「その上アイテムボックス持ちですからね。これは商会の令嬢が殺到するんじゃないですか?」
ルーカスが特大の爆弾を投下する。
「確かに、アイテムボックス持ちで、商売が上手くて、新しい商品のアイデアを沢山持っている。これは知られたら最後、争奪戦が繰り広げられますわ。」
「いや、商売は好きだけど、商人になるって決めた訳じゃないから~!!」
「ユーリを手にした者が、王都の商会の頂点になれるって事か。」
「いやいや、そんな大げさな事じゃ無いからね!」
イルミとユーカの目が肉食獣のそれに変化した事にユーリは気が付いていなかった。
翌日も弁当作戦は続行だ。今日は21個出た。昨日の弁当を食べた者の口コミとリピーターだ。
そして、その翌日は50個、4日目には100個を超えた。
こうなると噂が噂を呼んで、5日目には実に350個超を記録する。この学園は1年から5年まで各200名の生徒が居る。全校生徒を集めると1000名だ。1000名の学校で350個は学食の利用数に迫る数字だ。
「やっぱ、ユーリ君の商才は半端ないね。」
「ですね、もちろんお弁当が美味しいのもあるけど。」
騒ぎを聞きつけて翌日にはなんと教師陣も数名買いに来ていた。販売数は400個超、完全に学食を超えた。
「さて、これからどうしようか?」
「どうするって、お弁当販売を辞めるんですの?」
「いや、そうじゃなくて、学食にこのお弁当を譲ろうかと。」
「「「え?」」」
「いや、そもそもの目的は学食で美味しい食事が出来る様になる事だから。」
4人は学食へ向かい、責任者と長い話し合いをした。結果、日替わり定食をユーリのメニューにする事が決定し。早速宣伝のポスターがあちこちに貼られるのであった。学食は以前に増して利用者が増え、美味しいと評判になり、貴族の子供達も徐々に利用し始めるのであった。
「今回、完全にタダ働きだったけど、良いの?」
「まあ、目的は達成したからね。今回は商売じゃないし。」
「あんたって、やっぱ変わってるわ。」
イルミはそう嫌味を言うが、顔は笑っている。ルーカスとユーカもやり切った感がにじみ出ている。
「次は何をするの?」
「いや、魔法を覚えないと。そろそろ実践授業に入るんじゃないですか?」
「あ~、予習しないと~!」
こうして嵐の様な1週間が終わり、魔法学院は平常授業に戻って行くのであった。
魔法の実践授業。最初の授業は魔力測定からだった。
体育館へ行くと、教師が魔力測定の魔道具を用意して待っていた。出席番号順に魔力を測定して行く。1週間座学で魔力を伸ばす方法をレクチャーされていたので、ちゃんと練習していた者は、それなりの数値を出す。それでも15,6だ。貴族の子供の中には学園に来る前から家庭教師を付けて練習していた者も居たようで20をたたき出した者が現在のトップである。ちなみにイルミは16、ルーカスとユーカは15だった。明かに練習をさぼったとみられる者は12,3と振るわない。ユーリは隠蔽魔法を使って17と言う数字にして置いた。これはクラスの平均点より1多い数値だ。
この数値を見て、平民3人組がジト目で睨んで来るがユーリはどこ吹く風だ。こんな所で800万なんて数値を叩き出したら、王城へ連行されるに決まってる。
本格的な魔法の訓練は明日かららしい。それぞれ得意な属性があるらしく、最初は全ての魔法を均等に使ってみて、自分の使いやすい魔法を伸ばして行くのだそうだ。
ユーリは6歳から魔法を使っているが属性魔法を使うのは初めてだ。楽しみでニヤケ顔が止まらない。
一方で、他の生徒たちはこれからの授業で魔法使いになれるかどうかのふるいにかけられる訳で、皆一様に緊張している。




