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第三十一話

 今日もアトマス商会の砂糖販売は好調だ。実を言うと、砂糖を扱っている他の商会からギルドを通じて抗議があるのではないかとユーリは予想していた。

 しかし、他の商会はアトマス商会の砂糖販売は一過性で長くは続かないと予想した様だ。しかも、他の商会は取引相手が貴族なので、相変わらず質の悪い砂糖を高値で販売し続けている。貴族側もそれを疑問に思っていない様だ。


 砂糖は貴重品である。それは取れる量が少ないからだ、つまり、アトマス商会が砂糖を販売し続けるのには限界がある。そう思われている様だ。高い砂糖を安く放出すれば赤字がかさみ、そのうち自滅するだろうと言うのが大方の予想の様だ。


 アトマス商会の砂糖はユーリが魔法で無限に提供出来る。他の商会が気付いた頃には取り返しのつかない状況になっているだろう。早めに危機感を持って対処出来た商会だけが生き残れるのだ。アトマス商会は砂糖を握った。いずれ他の商会もアトマス商会から砂糖を仕入れる様になるだろう。そうなれば価格も下がる。まさにユーリの狙い通りである。


 砂糖はこれから大量に出回る。しかし、砂糖の使い方を正確に把握している者は少ない。貴族の砂糖菓子の様な使い方をされたら最悪だ。これからは砂糖の正しい使い方も流布して行かなければならないだろう。








 砂糖を販売し始めて1週間。ユーリの予想通り販売数は落ち着いて来ている。販売開始2日目がピークでそれから徐々に販売数が落ちて行き、現在では7000個程度で安定している。ユーリの予想では5000個程度だったのだが、思ったより地方に情報が早く流れ、地方からの需要が旅商人を呼んでいる。


 王都の人口は50万人超と言われている。しかし、地方からの旅人や旅商人等を加えると昼間の王都は60万人規模になる。これをユーリは計算に入れていなかったのだ。


 アトマス商会は砂糖販売を新人店員3人に任せ、通常業務も復活させた。『大地の実亭』も、客が安定して来たので定休日を設けた。これによりユーリとアトマスは新しい事業として冷蔵庫を投入するのであった。


 冷蔵庫は非常に簡単な構造だ。扉のついた木の箱に氷の魔石を取り付け、冷気を緩やかに流すように魔法陣を組んであるだけだ。冷気は微量なので小さな魔石で1年は持つ。まあ、人が入れるほど大きいと魔石もそれなりの大きさになるので値段は上がる。ユーリが魔法で作るので魔石の大きさは関係ないのだが、大きさで差を付けないと商会が儲からない。

 ユーリは見本で大小2つの冷蔵庫を作り壁際に展示した。これはあくまでも見本で、基本オーダーメイドで各店舗に合わせて冷蔵庫を作り設置する方式を採用した。


 一方オーバルバイン伯爵家では、ユーリが持ち込む異世界料理に料理人達が日々試行錯誤を繰り返し、他の貴族とは一線を画す食事を毎日楽しんでいる。調味料や材料も全てユーリが賄っているので、材料費は只だ。冷蔵庫も完備され、アイテムボックスを付与したストッカーもある。家中の鏡は良く映る鏡に替えられ、グラスも全て透明な物になっている。また、一部分ではあるが透明な窓ガラスも導入されている。伯爵家を訪れる客は一堂に吃驚するのであった。


 また、母上は美味しい軽食やケーキを持参するので、お茶会に呼ばれまくって大変だとボヤいている。

 父上や兄達は、王城で注目の的となっている。なんとか伯爵家の秘密を聞き出そうと今まで寄って来なかった貴族までが声を掛けて来る様になったそうだ。

 姉上は学校で人気者になっているらしい。まだ、13歳だと言うのに結婚を申し込む貴族の息子も居るそうだ。

 

 他にもオーバルバイン家に仕えたいと言うメイドや使用人が多数押しかけているらしい。これは、オーバルバイン家のメイドや使用人の待遇が他より遥かに良いと言う噂が原因らしい。


 急に騒がしくなったオーバルバイン家だが、ユーリの存在はまだバレていない。これは普段ユーリが家に居る事が少ないのと、7歳のユーリが事の中心だとは誰も思わないからだ。

 実際、ユーリは商会では伯爵家の名前を出していないし、貴族である事も黙っている。アトマス商会の中でユーリの素性を知っているのは会長のアトマスだけだ。









 




 そして月日は過ぎ、ユーリは12歳になる。そう、学院へ行く事になるのだ。学院へ行ってもアトマス商会の仕事は続けて行く予定だが、今までの様には時間が取れなくなる。早朝と学院が終わった後、これだけの時間で商会と関りを持ち続ける為ユーリは、この5年間を準備段階として費やして来たのである。

 学院は楽しみと同時に不安もある。あまりに詰まらない様であれば、辞めて商売に専念すると言う手もあるが、魔法は是非覚えたい。期待と不安の入り混じった感情を抑えつつ学園に行く日を待つユーリであった。


 ユーリが学院へ行く事になればアトマスが商会の主導を握らないといけない。そこで、アトマスをオーナー兼会長、ユーリを顧問とする事を決めた。

 これからは、売り上げの30%がユーリの手元へ来る事になる。今まではおよそ95%がユーリの手元へ入っていたので莫大な貯金がある。しかし、アトマス商会の売り上げはまだまだ右肩上がりで上がって行くだろう。ユーリに入るお金は増え続ける一方である。

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