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第三十話

 翌日の砂糖販売もユーリの予想通り大盛況だった。ユーリが朝8時前に商会の店舗に着いた時には既に行列がかなり出来ていた。昨日の砂糖販売の噂を聞きつけた者や、砂糖を買った者から話を聞いた者、料理店などで実際に砂糖を見た者は、純白の砂糖に驚愕し、それが安く買える事にもう一度驚愕するのだ。そして、リピーターもかなりの数居るだろう。


 ユーリは朝起きてすぐに伯爵家用の朝昼晩の食事をマジックバッグに用意し、ここへ来て、従業員用の食事を用意する、更に『銀の猫亭』へ行き、ケーキとアイスを卸す。そして、食堂で大量の料理を出すのだ。正直魔力に問題は無いが、疲労は溜まる。そろそろ食堂も軌道に乗って来たので定休日が欲しい所だ。


 『銀の猫亭』に着くとルーネさんに相談された。


「ユーリ君、私も砂糖を買いに列に並びたいんだけど、店があるからね。丁度、店の時間帯と砂糖の販売時間が被っていてね。そういう人結構いるみたいよ。従業員でもいれば任せられるんだけど、並ぶと1時間以上は待たされるでしょ?」


「ああ、それは考えていませんでしたね。解りました。幾つ位必要ですか?ご近所さんにも配るんでしょ?」


「話早くて助かるわぁ~。10個、後払いで!」


 ルーネさんは拝むようなポーズをとっている。ユーリはカウンターに10個の砂糖を5個ずつ2列に積み上げる。


「無くなったらまた声かけて下さい。喫茶店に砂糖は必需品ですからね。」


「本当に綺麗なお砂糖ね。これを大銅貨1枚で大丈夫なの?」


「大丈夫ですよ。と言うか、儲かりすぎて笑いが止まらない位です。」


  












 食堂に着くと、まだ準備中だった。『大地の恵亭』は10時開店なので、皆、朝は遅めだ。食事を取っている者も居る。まあ、その分夜が遅いので文句は言わない。


「昨日は冷やし中華どうだった?」


「えっと、50杯位は出ましたよ。だんだん増えて来てます。暑くなって来たからでしょうか?」


「そうだね、それにだいぶ麺類が認知されて来てるのもあるね。」


 リリスとそんな会話をしていると、料理人のマッシュが声を掛けて来た。


「オーナー、店の連中もだいぶ慣れて来て、空き時間が少しは取れる様になって来ました。そこで、試作品作りを再開しても良いですか?」


「ああ、構わないよ。って言うかどんどんやって。それが目的で2人は居るんだから。ジョエルも鍛えてやってね。」


「解りました。とりあえず、この店のメニュー全部作れるように頑張ります。」


 材料はアイテムボックス化したストッカーに揃っている。レシピも渡してある。多分、半年もすれば一通りの料理は出来るようになるはずだ。そうなれば、ユーリも自由な時間が出来ると言う寸法だ。そうなれば毎朝各店舗を回って足りない物を補充するだけでユーリの仕事は終わる。あと数年で学院へ行く事になるユーリにとっては一つの目標だ。


 新商品の冷蔵庫はまだ商会が砂糖の販売で手一杯なので販売開始していない。将棋についてはユーリの時間が出来次第『銀の猫亭』でテストをする予定だ。

 やる事は沢山あるが、時間が足りない。まあ、焦る必要は無いのだが、ユーリは真面目な性格なのでついつい焦ってしまう。


 そうこうしてるうちに開店時間が来る。開店直後は常連さんタイムだ。軽食販売で異世界料理の味を知った中毒者が毎日違うメニューを注文する。メニューを全部制覇する気らしい。

 常連タイムが過ぎると冒険者&主婦タイムだ。この時間帯は早めの昼食を取る冒険者と、数人連れの主婦が訪れて会話しながら軽い物と飲み物を楽しむ。

 12時を過ぎると急いで食事をして行く職人や、冒険者が増える。回転が速いので店員も忙しい。

 昼食タイムが終わると早めに仕事を終えた者や、アルコール目当ての客が徐々にやってくる。この時間帯が一番楽だ。

 夕食タイム。この時間帯が一番の地獄。食事も大量に出る上に一品メニューやアルコール類で、オーダーが細かい。ウエイトレスの2人が特にキツイ。


 そんな夕食タイムが終わる頃、アトマスさんがやってきた。


「ユーリ様、今日も1万越えでした。予想通りですね。」


「うん。まあ、明日から徐々に減って行くから大変なのは今日までだよ。」


「そうなんですか?」


「まあ、1週間位で1日5千人位に落ち着くと思うよ。」


「そうなったら通常業務に戻すんですか?」


「だね。冷蔵庫も売りたいしね。」


 ユーリはオーダーを出しながらアトマスと会話している。器用な物だ。昨日に引き続きアルコール類と軽食を渡して、アトマスを商会へ戻らせる。

 夕食タイムが終われば後は一品料理とアルコールがメインだ。たまに麺類が出るが、多くは無い。


 『大地の恵亭』のメイン客層は冒険者と職人だ。たまに主婦やファミリーも見かけるが、子供の数は多くない。子供が食べるには若干値段が高いのかもしれない。

 ユーリの中では、子供に行き渡ってようやく食生活の浸透と言う考えがある。そういう意味では、まだまだ頑張らなくてはいけない。砂糖も1か月でかなり低所得者まで行き渡ると考えているが、子供のおやつにまでは行き渡らないだろう。これが次のユーリの課題であった。


 砂糖以外の調味料も広まるには時間がかかるだろう。また、レシピについても、この世界で本は高価だ、羊皮紙のそれなりの厚さのある本は金貨1枚程する。ユーリは現代日本のムック本を参考に紙の本を作成し、安価で販売する予定だ。


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