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第百十一話

 借りた家は思った以上に大きかった。そしてボロかった。平屋だが横に長く厩舎まで付いている。庭もかなりの面積があるだろう。


「2人で住むには十分な大きさだな。」


 エリシアがカギを開けて中を覗いて言う。そのまま入りそうになったので止める。


「ちょっと待って下さい。このままじゃ床を踏み抜きますよ。」


 そう言ってクリーンとリペアを家全体に掛ける。


 埃臭さが消えて、壁や床が補修される。


「これで多分。大丈夫でしょう。」


「やはり君は便利だな。」


 中へ入ると家具などがそのまま残っている。使えそうな物は使わせてもらおう。購入するのは最低限で良いだろう。


「キッチンにリビング、寝室が2つとトイレか、1つずつが大きいから窮屈じゃ無いのが良いな。」


「そう言えばお風呂って普通の家庭には無いんですか?」


「風呂を持っているのは貴族か金持ちの商人位だな。庶民は大衆浴場へ行く。」


「大衆浴場があるんですか?」


「あるぞ、この国は温泉が湧くからな。」


 大衆浴場でも良いから風呂に入りたい。前は毎日入ってたからなぁ。


 寝室を覗くと巨大なベッドが1つ置いてある。もう一つの寝室も同様だ。どう言う家族構成だったんだろう?


「このベッドなら2人で寝ても狭く無いな。」


 エリシアが当然一緒に寝る様な言い方をする。


「いや、寝室は2つありますし、相部屋にする必要は無いのでは?」


「私と寝るのはそんなに嫌か?」


「いや、そうではありませんが、宿屋では部屋が足りなかったから仕方なく相部屋になっただけですし、旅の間は別々に寝てた訳ですから、これだけ広い家なのに一緒に寝る意味があるのかなと。」


「ふむ、では一つ寝室を潰して風呂でも作るか?」


「そんなに一緒に寝たいんですか?」


「部屋を一緒に使えば節約なるだろう?」


「お金には困って無いんじゃないですか?」


「いや、困って無いのと節約は別だろう?」


「とりあえず、明るい内に買い物に行きましょう。最低限必要な物だけは買って置かないと今晩困りますよ。」


「そうだな。そうしよう。」


 商店街の方へ向かい歩きながら、2人であれが足りない、これが欲しいなど必要な物をリストアップしながら進むと、20分程で商店街に着く。意外に悪く無い立地みたいだ。


 着替えが無かったので古着を数着購入する。それから、キッチン用品を一通り揃えて、食材と調味料を購入した。調味料は塩と数種類のハーブのみだった。


「ちなみにエリシアは料理できるの?」


「あー、出来ると言えば出来るかな。食っても腹を壊す事は無い。」


 炊事当番は僕がやろう。


 それからシーツや毛布は新しい物を2枚ずつ購入した。


「買い忘れは無い?」


「そうだな、とりあえずはこんな物だろう。折角ここまで出て来たのだから、夕食を食べてから帰らないか?」


「構いませんが。何処か目当ての店があるんですか?」


「いや、そうでは無いのだが、向こうから良い匂いがするのでな。」


 と、エリシアが指を指す。エリシアの隣まで近づくと確かに良い匂いがする。2人で匂いのする方向へ歩いて行く。


 匂いの先にあったのは小さな食堂だった。中へ入ると結構な人数が居る。繁盛しているらしい。


「2名様ですか?カウンターへどうぞ。」


 そう店員に言われたのでカウンター席に着く。


「おすすめとエールを2杯頼む。」


 ここでもエリシアさんは同じ注文の仕方をする。これってお約束なのかな?


 少し待つと熱々に熱せられた鉄板に乗った何かの内臓が出て来た。ここってホルモン屋か?エリシアさんは躊躇なく口に運んでいる。僕は2人分のエールを冷やしてからホルモンに喰いついた。丁寧に下処理してあるのか臭みも無く美味い。ん~、この世界でも探せば美味い物ってあるんだな。


 エリシアは美味いホルモンと冷えたエールの組み合わせに満足している様だ。既にお替りをしている。僕は美味さの秘密を探りつつ食べているのでペースが遅い。そう言えば、この店ではパンが出て来ないな。肉だけで満足するのかな?そう思って居るとグラタンの様な物が出て来た。


 フォークで突いてみるとどうやらパンにシチューを掛けて焼いた物の様だ。なるほど、パンを浸して食べるなら最初から入れてしまえと言う発想だな。これはこれでアリだ。


 横を見るとエリシアも美味そうに食べている。この世界の材料で美味い料理か、この発想は無かったな。


 この辺りももしかしたら僕が亜神になった原因の一つかもしれないとリュートは考えた。


 食事を終えて満足して家に向かい歩き出す。


「そう言えば広い庭って何に使うんですか?」


「剣術の稽古だな。」


「それは僕のですよね?」


「いや、私も時間がある時は稽古をしているぞ。君は剣術の稽古はした事が無いのか?」


「言われてみれば、記憶を失ってから稽古してませんね。」


「剣術は常に稽古をしておかないと鈍るぞ。」


「って言うか、僕は剣術を習った記憶も無いんですけど?」


「それは大問題だな。」


 家に着くとライトの魔法で部屋を明るくし、買って来たものをリビングで広げる。キッチンの物と寝室の物、その他と分けて、各部屋へ持って行く。エリシアはエールを呑み過ぎた様で若干酔っているが、寝室で荷物を広げていた。リュートはキッチン周りを担当する。


「片付いた様だな。ではそろそろ眠るとしよう明日は早めに起きて稽古だぞ。」


 エリシアはそう言ってリュートの手を引き寝室へ向かう。僕は2人とベッドにクリーンを掛けてから。ベッドに入った。って言うか、自然の流れで2人で寝る事になってるし。


 突っ込む気力もないので、そのまま眠りに就いた。


 朝起きるとエリシアはまだ寝ていた。動くと起きそうなのでじっとしている。しかしどう言う子なんだろう?17歳と言ってたが無防備すぎる。僕のユーリの時の年齢は14歳だったが、この体は何歳なんだろう?多分15,6歳だと思うが、どちらにしろエリシアよりは年下だ。年下だと思って安心しているのだろうか?でも見た目はユーカやイルミより年下に見えるんだよな。


 そんな事を考えているとエリシアが起きる。


「さあ、朝だ食事取って稽古をするぞ。」


 寝起きからテンション高いな。


 朝食は昨日食堂で買った物で済ませた。この世界の人は朝からガッツリ食べるので肉でも問題無いだろう。基本エリシアは食べ物に文句は言わない。


 食事を済ませると防具に着替えろと言い。リビングで脱ぎだすエリシア。流石に突っ込むのは諦めた。なるべく見ない様に自分も着替える。


「さて、剣術の稽古だが、まず木刀で模擬戦を行う。これはリュートの実力を見る為だ。」


 エリシアも木刀を持っている。両手剣だ。エリシアの普段の獲物はバトルアックスだが、両手剣も使える様だ。


 対するリュートは片手剣、これは空いている手で魔法を行使する戦法だからだ。


「魔法を使っても構わんが、基本は剣術の稽古だと言う事を忘れるな。」


 そう言って構えるエリシア。流石に隙が無い。騎士の家系と言って居たのでそこで習った剣だろう。


 リュートは身体強化でスピードと腕力を上げ、飛び出すと共にバインドの魔法を放つ。エリシアは魔法の発動を感知できる。当然避けると思って居たが、なんと魔法を切った。


 え?魔法って切れるの?その一瞬が隙となり、簡単に足をすくわれ1本取られる。


 剣術舐めてましたごめんなさい。すぐに起き上がり2本目に突入。今度はエアバレットを広範囲にばら撒き回り込む戦法。数が多ければ切るのは難しいはず。


 だが、今度は切らずに避けた。まるで見えるかの様にばら撒いたエアバレットを避ける。リュートの動きは見切られていて、回り込もうとしていた先に剣を置かれて自爆して終わった。


「30点と言った所だな。動きは良いが剣が素人だ。簡単に読める。」


「どうすれば良いのでしょう?」


「これは模擬戦だ。死ぬ事は無い。色々な事を試してみると良い。」


 そうは言われても手詰まりだ。こちらの武器が通用しない。どうすれば良いんだ?

 

 リュートは考え込む。その姿に何かを思ったのだろう。エリシアがアドバイスをくれる。


「君のレベルは私より高い。ならばステータスも私より上のはずだ。数値の上では君の方が強い。なのに何故勝てない?」


 僕の方が強い?経験の差?技?


「勘違いをしている様だな。技や経験はステータスを補う物に過ぎない。本質を考えろ。」


 本質?。僕の武器はスピードと魔法。ならば!


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