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第百四話

 ゴブリンを5匹討伐したので帰っても良いのだが、時間はまだ十分ある。そこでリュートは少し奥へ進んでみる事にする。手に余るようなら帰れば良いと言う考えだ。


 サーチを掛けながら10分程歩いていると、たまに魔物の反応があるが、あまり大型の物は居ない。この森は魔物が多いと聞いていた、しかし、実際はあまり反応が無い。何かがおかしいとリュートの脳裏に危険信号が鳴る。


 引き返そうかと考えた時、魔物の反応があった。数が多い。10匹以上は居るだろう。しかもゴブリンよりも反応が大きい。危険だ。そう思った時、人間の反応が引っかかった。誰かが戦っている?リュートは500メートル位離れた位置に移動して、詳しくサーチを掛けてみる。魔物の数は12体。対する人間は1人だ。


 どう考える?襲われているのか討伐中なのか判断が付かない。リュートはゆっくりと距離を縮めていく。100メートル程まで近づくと戦闘の音がする。金属同士がぶつかる様な鈍い音だ。どうやら武器を使う魔物らしい。戦闘に気を取られているだろう事を考慮して慎重に近づく。どうやら魔物はオークの様だ。


 更に近づくと小柄な女性の姿が見える。恰好から女冒険者だと判断する。小柄な女性冒険者は自分の身長よりも大きい戦斧を持っている。


 オーク達は1か所にまとまって威嚇をしている。地面には女冒険者が倒したと思われるオークの死体が3体転がっていた。


 高ランクの冒険者なのだろうか?だとすれば手出しは余計なお世話になるだろう。女冒険者を見ると肩で息をしているように感じる。疲れているのか?


 意を決してリュートは女冒険者の後方から声を掛ける。


「手助けは必要ですか?」


 女冒険者は驚いたような反応をするがオークから目を離さない。やはり高位の冒険者らしい。


「誰かは知らぬが、じり貧だ、1瞬で良いから隙を作って欲しい。可能か?」


「解りました。魔法で攻撃します。オークが態勢を崩したらお願いします。」


「了解だ。やってくれ!」


 リュートは女冒険者の右側に躍り出てエアバレットを撃つ。オークは固まっているので狙いは付けずに数を多めにする。


 1瞬の間を空けてオーク達から悲鳴が上がる。体のあちこちをエアバレットに貫通され血が一面に飛び散る。豚の魔物とは言え2足歩行なので結構グロい。


 結果、5体を倒し、7体を手負いにした。それを見た、女冒険者は一気に間を詰め戦斧を横なぎにする。一度の攻撃で2体のオークが吹き飛んだ。身体強化もしていないのにスピードと攻撃力が半端じゃない。体力と敏捷性が高いのだろう。重い戦斧を軽々と扱い次々とオークを屠って行く。


 7体のオークをあっという間に倒し、女冒険者が初めてこちらに顔を見せた。やはり幼い。緑色の髪の毛が印象的だ。そう言えば向こうの大陸には居なかったな。この大陸独自の種族なのかな?


「助かったよ。盾役のオークが面倒でね。倒してくれて楽になった。」


「いえいえ、高位の冒険者さんなんでしょ?余計な事したんじゃないかとひやひやしました。」


「高位と言う程では無いが、Bランクのエリシアだ。改めてよろしく。」


「あ、Eランクのリュートと言います。こちらこそよろしくお願いします。」


 そう言うとまじまじと上から下まで見られた。


「Eランク?戦士の姿をしてるのに魔法で攻撃してたよね?」


「あー、魔法は得意なんですが、魔力量が少ないので、接近戦もやります。」


「なんか色々と突っ込みどころ満載なんだけど、まあいいわ。討伐証明部位の剥ぎ取りと魔石を確保しましょう。オークの場合は右耳ね。」


「僕が貰っても良いんですか?」


「5匹はあなたが倒したのだからあなたの物よ。」


 そう言うと手際よくオークを処理して行く。


「ちなみにオークは肉が素材なのでマジックバッグを持ってるなら死体を持って行くと金になるぞ。」


「そうなんですか?エリシアさんは持って行かないのですか?」


「金には困って無いからね。持てるなら私の分も持って行って良いぞ。」


 そう言われたのでありがたくオークの死体を15匹分マジックバッグに仕舞った。アイテムボックスもあるのだが、知られると面倒そうなのでマジックバッグを用意していたのだ。ゴブリンの死体も入っている。魔石の取り出し方が解らなかったからだ。


「ずいぶんと容量の大きいマジックバッグを持ってるのだな。」


「そうですか?それより、お金が目的じゃないって、なんで冒険者をやってるんですか?」


「レベルを上げる為さ。」


「レベル?」


「冒険者をやっていてレベルを知らないのか?つくづく変わった男だな。レベルとは魔物を倒す事で得られる経験値を一定数上げると上がる冒険者の指標の様な物だな。レベルが上がると様々な特典が得られるが、最大の魅力はステータスが上がる事だ。ステータスが上がると戦闘が楽になるのは君も知っているだろう?」


「なるほど、冒険者のランクを数値化したような感じですね。何処で調べられるんですか?」


「冒険者ギルドに行けば無料で教えてくれるぞ。」


 これは良い事を聞いた。レベルを上げれば魔力量も増えるって言う事だよね?明日からはお金を稼ぎつつレベルも上げて行こう。


 2人は連れ添って冒険者ギルドへと向かう。途中色々な話をしたのでだいぶエリシアの事を知る事が出来た。


 童顔で背が低いが年は17歳だそうだ。生まれつき体力の数値が高く、普通の武器では耐え切れず折れてしまうので今の戦斧を使っている事。髪の毛が緑色なのはこの国では珍しくない事などを話してくれた。リュートは自分が一部記憶を失っている事を話した。


「なるほどな。しかし、記憶を失っても魔法は使えるんだな。」


「そこは、自分でも不思議です。」


 冒険者ギルドに付くと各自担当の受付に行く。今日の戦果はゴブリン5匹とオーク5匹だと言って耳を渡したら驚かれた。


「Eランクでオークは無謀ですよ。」


「いや、Bランクのエリシアさんが同行してくれたので危険は無かったですよ。」


「ほう?ソロで有名なエリシアさんと同行したんですか?」


「さあ、僕は初めて会ったので何とも言えませんが。それよりレベルってどうすれば見れるんでしょうか?」


「レベルならそこの丸い石にギルドカードをかざせば見れますよ。」


 そう言って、カウンターの端っこにある。地球儀の様な物を指さした。


 リュートは金貨2枚と銀貨2枚を受け取ると早速レベルを見に行く。丁度終わったのかエリシアさんもこちらへ向かって来る。


「エリシアさんもレベルの確認ですか?」


「ああ、レベルと言うより経験値だがな。レベルは上がれば上がるほど上がりにくくなるんだ。」


 そう言ってギルドカードを石にかざす。石の表面にこちらの言語で数値が浮かび上がる。エリシアさんのレベルは41らしい。これが高いのか低いのか判らないが。


「レベルって判断基準が判らないんですが、どの程度あれば一人前なんでしょうか?」


「そうだな。昔、この国を救った勇者のレベルが120だと言われている。現在王都に居るSランクの冒険者で80程度。君はEランクだから20もあれば多い方だ。」


 エリシアが左にずれたので今度はリュートがギルドカードをかざす。数値が浮かび上がる。


「ん?230??」


 隣を見るとエリシアさんが固まっている。これって不味い展開なのでは?


 急いでエリシアさんを引きずって冒険者ギルドを出た。強引に引っ張って人気の少ない所を探す。ちょっと横道に入った場所が誰も居なかったのでそこで立ち止まる。


「エリシアさん。さっきのは見なかった事にしてもらえませんか?」


 エリシアさんはまだ再起動していない。とりあえず、色々と声を掛けエリシアさんを元に戻す。


 戻ったのを確認して、さっきのは見なかった事にして下さいと再度お願いした。


「1つ条件がある。」


「なんでも聞きますのでお願いします。」


「暫く一緒に行動させて貰えないか?」


「え?それは構いませんが。何故?」


「君の秘密に興味がある。失くした記憶と言うのも気になるしな。」


「じゃあ、代わりに僕に戦い方を教えてくれませんか?」


「解った。」


 こうして、2人は秘密の同盟を結んだ。


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