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11.孤児院にお手伝いに行こう

約6500字です。大分削ったのですが、それでも多い。

丁寧な自己紹介をすると会話だけで文字数が膨らんでしまう~

面倒なら11-1のみ読んで、後書きまでジャ~プでも大丈夫です。


4月26日(日)つづき


11-1.その前に買い物をしよう


 俺は、ギルドを出た足で、教会の傍にある孤児院に向かう。ギルドは、城を中心とした3つの城壁の内側から2番目と3番目――第二城壁と第三城壁(外壁)との間にあり、教会は、第一城壁のすぐ外側にある。


 ボロダー商店は、その第二城壁の北東門を潜った近くの商店街の一角にあった。

まだ、時間があったのでボロダー商店に報告がてら寄ってみることにする。


「こんにちは、ボロダーさん」


 お店には、相変わらず客がいなかったが、ボロダーさんは午前中と同じ位置に座っていた。


「おお、リュウイチか、どうした?」


「先程の長期契約書ですが、ギルドに提出して無事受理されました。

 正式には、明日からですが、よろしくお願いします」


「わざわざ知らせに来てくれたのか、すまんの」


「いえ、実は、普通のリュックが欲しくて、こちらに寄ったんです」


「お前には、サブバッグを渡してあるから、それを使えば、ええじゃろう」


「はい。実用的にはそれでいいんですが、防犯上はリュックがあった方が

 いいかと思いまして」


「そうじゃな。そっちにリュックが置いてある良く見て選べ」


 ボロダーさんは、少し考えるとリュック売り場を指差しそう言ってきた。

そこには、大中小の大きさのリュックが幾つか置いてある。

俺は、気に入った形の中サイズのリュックを手に取りボロダーさんの所へ持って行った。


「これで、お願いします。幾らですか?」


「そうじゃな。本来、銅貨3枚じゃが、ワシの店の仕事に必要じゃから

 銅貨2枚でどうじゃ」


「ありがとうございます。お願いします」


 さっき報酬としてもらった大銅貨1枚を差し出すと、ボロダーさんは、お釣りとして銅貨3枚を渡してくれた。俺は、エルエルに借りている水筒と作ったばかりのギルドカードをリュックに入れて背負う。うん、ばっちりだ。


「実は、これから教会の孤児院に行くんですが、

 何かお勧めのお土産を扱っている店をご存じないですか?」


 初回なので何か手土産でも持って行けば、受けも良いだろうという発想だ。

だが、ぶらりと入った店頭で俺が、適当に選ぶよりも、現地の人のアドバイスに従って買う方が効果的だろう。


「おーい、カカア。ちょっと来てくれ!」


 ボロダーさんは、う~んと考えていたが、突然二階に向かって怒鳴った。

俺は、驚いて病気を臥せっているはずの奥さんを呼び出すのを静止しようとするが、すぐに返事があった。


「ハーイ」


 すぐにバタバタと階段を降りて来る音がした。それじゃ、上で臥せっているのは、誰なんだ? 疑問に思う中、降りてきた人物を見ると見知った顔だった。

昨日の今日で忘れられては、いないと思ったが、気の小さい俺は一応確認する。


「確か、ギルドで算術の職業訓練の講師をされていますよね?」


「あら、姉のネルネをご存知ですの? 私と姉は双子の姉妹なんですよ」


 そう言われると奥さんは、眼鏡を掛けてないし、ネルネさんより少しやつれていた。そんな事を考えているとボロダーさんが、口を開いた。


「リュウイチ、これがワシのカカアのルネ……だ。

 こいつが、当分の間、店の配達を任せたリュウイチだ」


「はじめまして、主人がお世話になってます。ちょっと、とっつき難いかも

 しれませんが、根はいい人なので、よろしくお願いしますね」


「リュウイチロウ=キサラギと申します。こちらこそ、よろしくお願いします。

 3週間の予定ですが、お世話になります。

 ………ところで、上で臥せっていると言うのは?」


 ボロダーさんとルネさんは、少し顔を見合わせたが、ルネさんが話し始めた。


「娘です。少し体調を悪くしまして、私が付き添っているので、主人に負担が

 掛かってしまって……。リュウイチさん、配達の方、よろしくお願いしますね」


 ルネさんは、言いにくそうに、答えてくれた。

(あまり、娘さんのことは、触れられたくないのかもしれないな)


「はい。微力ですが、がんばらせて頂きます。

 それと実は、お姉さんには、昨日お世話になったばかりなんですよ」


「そうですか。算術の職業訓練をお受けになったんですね」


 まあ、普通はそう思うよな~。だが、細かいことだが、俺は一応訂正しておいた。


「それが、剣術の訓練だったのですが、剣術の先生の具合が悪いとかで

 代わりに指導してくれたのが、ネルネさんなんですよ」


 するとルネさんは、深いため息をついて話し出した。


「リュウイチさん、申し訳ありませんでした。

 その剣術の講師と言うのは、私どもの弟のネルです。

 多分その日は、二日酔いだったのだと思います。

 姉は弟に甘いので、代わりに講座を担当したのでしょう。

 いつも仕事の前には、深酒をしないように言ってるんですが。

 本当に申し訳ありませんでした。よく言って聞かせますので。」


 ルネさんは、何度も謝り、本当に申し訳なさそうな顔をしているので、

逆にこっちが気の毒になってしまった。


「もう、いいですよ。それに俺、剣術の才能がないようですし」


 俺は、諦め顔でそう言った。他の武器なら習得できる可能性もあるし、逆に先生のネルさんに伝《つて》が出来たので、今度は直々に教えて貰えるかも等と都合のいい事を考えていた。


「気を使って頂いてありがとうございます。

 そう言えば、あなた、何か用があったのではなくて?」


 ルネさんは、ボロダーさんに向き直り尋ねた。

ボロダーさんは、お土産に何がいいかという質問の答えを奥さんに求めたようだ。


「そうですね。孤児院の子供たちは、甘い物に飢えていますから。

 小さくて良いので、チョコレートの粒を人数分用意しては如何ですか?

 確か20粒も用意すれば行き渡ると思います。3件先のお菓子屋で

 2つで1G、合計10G――銅貨1枚で買えますが」


「そうします」


 俺は、ルネさんの提案に乗ることにする。俺は、二人に礼を言うと早速お菓子屋に寄って、チョコレートを買い込みリュックに入れた。確かに小粒だが、チョコレートにしてはかなり安いのではないだろうか?


 そんなことを考えていたが、気が付くと予定の2時を若干過ぎてしまった。

走って、孤児院に向かうことにする。



11-2.孤児院にお手伝いに行こう


 目印の教会の尖塔は、どこからでも見える高い建物だ。お陰で道に迷うこともなく、この前の場所に辿りつくことができた。俺は、少し離れた孤児院の建物に近付き、扉を「コン。コン。コン。コン」と短めに4回ノックする。


 急いでいるのを察してくれたか、やや小走りにドアまで来てくれたようだ。

俺は、対応に出てきた年中組らしき少女に用件を伝える。

すると、すぐに中に通された。アニーがすでに話を通してくれていたのだろう。


 その子に一室のドアの前に案内され、一声掛けてドアを開けて中に入ると、机と椅子とがドアに正対する様に配置された執務室だった。

椅子には院長と思われる年配のシスターが座り、その横にはアニーが立っている。

俺は、後ろのドアをそっと閉めると口を開いた。


「こんにちは、リュウイチロウ=キサラギと申します。

 本日より週に3日ほどですが、お手伝いをさせて頂くことになりました。

 よろしくお願いします。それから、これをどうぞ。皆さんで召し上がって下さい」


 俺は、お辞儀をして挨拶を終えるとリュックから先程購入したチョコレートの包みを出してアニーに渡した。


「こんにちは。私が、当孤児院の院長、サーヤです。

 アニーから、親切な方が、お手伝いに来られると聞き大変感謝しています。

 何分にも男手が足りませんので、雑多な仕事が溜まっています。

 詳しくは、アニーの方からお聞き下さい。

 それから、わざわざお土産まで頂きありがとうございます。

 こちらの方からもよろしくお願いします」


 院長は、丁寧に挨拶を返してくれた。挨拶が終わるとアニーに案内されお手伝いに向うことになる。途中、確認したい事があったので、アニーに話を聞いた。


「アニー、院長さんには、俺がどういう経緯でここに手伝いに来たと

 説明してあるんだ?」


「ここで学びたい事があるから、その合間にお手伝いするって感じかな」


 アニーは昨日と違い、年相応の話言葉で答えてきた。


「感じって…かなり適当なんだな。で、ここでは何が学べるんだ?」


 俺は、ちょっと呆れたが、何か学べると聞いて興味が湧いたのも確かだ。


「そうね。文字の読み書きと簡単な計算。この国の歴史等は、子供たちにも

 教えているわ。それから、一応、図書室で調べ物もできるわ」


「おっ、図書室があるのか、それはいいな」


 機会がある度にこっちの常識を聞くようにしているつもりだが、それで聞けるのはあくまでも俺の想像できる範囲の事だ。こちらでは一般的な常識でも、俺の想像を超えた事柄の場合、何かのきっかけがなければ、いつまで経っても知ることができない。その点、子供に常識を教える本や実用書の類は、今の俺にとって貴重な知識を得るための手助けになるだろう。


「へぇ、冒険者が本好きなんて意外ね」


 アニーは、見直したという顔をする。そして小声で続けた。


「学びたいことがあるって言っておいたのは、名簿を閲覧する上での布石よ。

 単なるお手伝いの人が、書類や本を見て調べ物をしていたら、変でしょ?

 でも、すぐには無理よ。今、計画を練っているからしばらく待ってて頂戴ね」


 すでに、布石を打ってあるとは、結構アニーも考えてるな。

そう思うと自然に口から感心の言葉が出た。


「なるほど、アニーの言う通りだ。初対面の時に感じた

 『知的で頼れる大人の女性』っていうのは、錯覚じゃなかったようだな」


「知的で……頼れる……大人の……女性……?」


 アニーは、俺の台詞をオウム返しに言うと紅くなって俯いてしまった。

俺は、咳払いして続ける。


「で、俺は今日は何を手伝えばいいんだ?」


~・~・~


「ふう、結構高いな」


 俺は今、孤児院の二階の屋根の上にいる。古い建物のご多分に洩れず、雨の日には、雨漏りがひどいらしい。この辺りには、明確な雨季がないようで、今までは桶が活躍していたが、男手が出来たということで、俺の出番となったようだ。


 そんな訳で、俺は、二階まで届く長い長い木製のふらつく梯子を何とか上へと上って行き、今ここにいるわけだ。


「さっさと終わらせるか」


 俺は、二階の屋根程度の高さは平気だが、正直高い所が嫌いだ。作業効率を上げるため、早速ボロダーさんに借りているサブバッグを活用することにした。


 まず、目を皿のようにして、割れた石瓦を見つけると割れた瓦を慎重に外してサブバッグに放り込み、代わりに予め入れておいた割れてない瓦を取り出しては慎重に入れ込み交換する。


 そして、交換が終わると新たな割れた瓦を見つけるために移動する。全体的に瓦が古いため、強く踏みつけると割れてしまいそうだ。赤ん坊のハイハイの格好になり、体重を四肢に分散させ、端から順序良く見ていく。


「結構、あっちこっちに割れた瓦があるな」


 俺は、割れたものを見つけては取り外しバッグに放り込み、バッグから出した別の割れていない瓦を取り付けるを繰り返した。瓦を取りに一々梯子を上り下りせずに作業を進めたため、何とか辺りが暗くなる頃には、作業を終えることが出来た。


 なお、この中古瓦は、一般の建物の解体時に出た所謂、建築廃材だったらしい。以前、孤児院の屋根の修理に使うため好意で分けてもらって置いたそうだ。


 しかし、すでに割れている瓦もあり、大分寝かせてあったようだ。一体何年雨漏りを放置していたのだろう? 俺は、二階の天井裏の状態が気になり、そのうち調べてみようと思った。


 ふらつく梯子を何とか下まで降りると、サブバッグに入れておいた割れた瓦を一箇所にまとめて出し、残った割れていない瓦を元の位置に戻す。こうして、サブバッグは空になった。最後に梯子を所定の位置に戻し、すべての作業が終了した。



11-3.アニーからの情報


 作業終了後、アニーは、夕食を食べて行くように勧めてくれたが、かなり疲れていたので、丁重にお断りをして、今回は遠慮させてもらおうとしたが、思わぬ伏兵が登場したのだった。


 俺は、有名な格言『前門の赤ちゃん、後門のゴマちゃん』を思い出した。アニーが、ニコニコ笑った赤ん坊のカルクを連れて来て俺に手渡したのだ。俺は吸い寄せられるように抱っこし、撤退が不可能なことを悟った。う~ん、癒される~~。


 夕食ができるのを待つ間、俺がカルクに哺乳瓶でミルクを与えるとニコニコしながらすべて飲み尽くす。やがてスヤスヤ眠り始めた。


 なぜだか全員がとても感心して俺のことを見ていたようだ。

眠ったカルクをアニーに手渡すと二階の赤ちゃん部屋に連れて行き寝かせたようだ。


 夕食の席で俺は、ここの子供たちに紹介された。

もちろん、俺はかなり加減して食べたよ。1回だけお代わりしたけど。

そして、俺が差し入れたチョコレートは、食後に皆で食べた。


 俺は、有名な格言『皿を食うのは止めておけ』に従い甘い物が苦手と辞退したところ、子供たちは、俺に感謝し、更にチョコレートを持ってきたのが俺だと知ると、まるで麗しの女神を見るが如くキラキラした目で俺を見つめた。1回だけのつもりだったが、また、チョコレートを買って来なければならなくなったようだ。


 アニーにも、チョコレート効果があったのだろうか、色々と俺が知らないことを聞くことが出来た。まず俺は、他人のステータスを調べるアイテムについて聞いた。


「城や教会に置いてあるということは、『創造神の瞳』のことね。

 使い捨ての方は、『創造神の目』よ」


 これらは、就職等の時に本人の能力証明に使うアイテムのようだ。

『創造神の瞳』が城や教会に置いてあるのは、一度に大量に人が入るためらしい。

カーク教会にもあり、お布施を払えば、能力証明書の発行もしてくれるそうだ。


「相場は、銀貨1枚ね」


 どうやら、俺にも自分のステータスを見るための手段があるにはあるわけだ。

1回約1万円じゃ、俺の今の収入では、頻繁には無理だが。

『創造神の目』の方は、明日ボロダーさんにでも聞いてみよう。


 それから、洗礼名簿のことも少し聞いてみた。


「詳しい名前とかは今は無理だとして、大まかに今年成人した女性って

 何人ぐらいいるんだろう?」


 正直、1000人以上の中から探すのは、今の方法では無理だと思う。


「そうね。おおよそ100人から150人の間らしいわ」


「調べてくれたのか?」


 俺は、やや安堵して尋ねた。でも、100人でも結構多いな。


「リュウイチさんが、今私に聞いたのと同じような事を私も院長に質問したの、

 何気なくね。それと私自身は、まだ見習いだから直接洗礼名簿を閲覧する

 権利がないの。それも含めて時間が欲しいのよ」


 アニーの時間が欲しいっていうのは、そういう意味だったのか。


「その件は、わかった。アニーはやっぱり、頼りになるな」


「まあ、大船に乗ったつもりでいなさい」


 アニーは、胸を張って答えるが、より大きく強調されるので、正直目のやり場に困った。俺は、煩悩を振り払うため、別の事を頼んだ。


「それとアニーの知り合いに同い年の女性がいたら、俺に紹介してくれないか?」


「なっ、何それ!? しっ失礼しちゃうな。私、何だか……面白くな~~い」


 よくわからないことで、アニーを怒らせてしまったらしい。


「アニー、何か勘違いしてないか? あくまでもお告げの人探しのためだ。

 名簿がない今の状態じゃ、知り合いの知り合いを当たるのが、

 一番確実な方法だろう?」


 俺は、自分の意図を正確に伝えることでなだめ様としたのだが……。


「……どうせ……、……探しのくせに………」


 アニーは、俺には聞こえないぐらいの小声で、ブツブツ何か言ってるだけだった。この方法は、少し欠陥があるらしい。こうなると同い年の男の知り合いも作って、そっちから攻めることも考えないとな。 


 他にもまだ聞きたいことがあったが、アニーの機嫌が直らないことと、そろそろ時間が遅くなってきたこともあり、次の火曜にまた来ることを約束しお暇することにした。


 言い忘れたが、年少組はもちろん、年中組の子供たちにまでも、腕が上がらなくなるまで高い高いを当然の如くやらされた。こうして、俺の孤児院での初の奉仕作業は終わった。


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 まとめ


 ボロダーさんの店で、社員価格でリュックを買った。

 お菓子屋でお土産のチョコレートも買った。


 こんにちは。え~と年配の院長とアニーがいるな。

 よろしくお願いします。で、アニー俺の仕事何?


 たっ高け~な。いや別にビビッてないって、ちょっと苦手なだけっだ。

 さてと、割れた屋根瓦を交換するか! もちろん、サブバッグも利用するよ。

 ボロダーさん、ありがとう~

 ハイ!終わり、時間掛かったけど、ビビってた訳じゃないよ。


 飯食ってけ? いや、帰って………やっぱり赤ちゃんは癒されるな~。

 はっ、俺は帰るつもりだったのでは? まあいいか、ご馳走になるよ。


 俺は、いらん。子供たち、俺が買ってきたチョコ食いねぇ。

 ははは。崇めよ、子羊たち。もっと? また、そのうちな。


 へ~、「創造神の瞳」って言うのか、俺のステータスもこれで調べられるな。

 お布施が、銀貨1枚!? 当分いいか。


 ところで、15歳の女の子ってこの都市に何人いるの? 100~150人?

 結構多いね。でも、千人いたらお手上げだったな


 後さ、アニー、女友達紹介してよ。

 なっ何怒ってんの。機嫌直せよ。ダメか。今日はもう帰るよ。


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