10.依頼を受けてみよう
前回、全く良いとこなしだった主人公。さて、今回は……
6/1 酒ダル配達の報酬を1件毎から1タル毎に変更しました。
4月26日(日)
10-1.朝の過剰サービス
今日の目覚めは、何というか特殊だった。目を開けると目の前に弩アップのスノーさんの寝顔があった。寝起きのぼやっとした頭で何が起きているのか考えていると、スノーさんがかわいく唸る。
その瞬間、俺のすべての器官が高速起動し、俺はベッドの反対側に転げ落ちた。
その音でスノーさんが目を覚ましたようだ。
「あれ!? リュウくんどうしたの?」
キャミソール姿のスノーさんは、手の甲で目を擦りながら上半身を起こし、床にいる俺を見ながら言った。そして、欠伸を1つすると続ける。
「おはよう。夕べは、よく眠れたみたいね」
「スッススス……」
俺は、立ち上がるが、余りの出来事に言い淀んでいると、スノーさんが、悪戯っぽい笑顔で見つめながら言う。
「スキ?」
「違います! スノーさん、ここで一体何をやってるんですか?」
俺は、ちょっとイラっとして問いただすが、悪びれる事もなく、一言。
「添い寝」
「添い寝…って、ブリジットさんが見たら誤解するでしょうが」
主婦に添い寝される居候がいれば、主人にとっては、かなり問題だろう。
「大丈夫、慣れてるし、リュウくんとは、初めてじゃないから」
さりげなく、衝撃的な事実が告げられる……。
「もっ、もう二度とやらないで下さい!」
俺は、それだけ言うのが、やっとだった。
騒ぎを聞きつけ、ブリジットさんがやって来た。
それを見たスノーさんは、ブリジットさんの胸の中に泣きつく。
「あなた~~、リュウくんが反抗期になっちゃったの~~」
「昏睡してたのに反抗も何もないじゃないですか~」
俺が、自分の無実を訴えかけると、ブリジットさんは、静かに言った。
「リュウイチ、スノーを許してやってくれ。
昨夜、思いつめた顔で帰って来て、遅くまで寝つけずにいるリュウイチのことを
スノーが心配してな。様子を見に……」
(スノーさん……)俺は、胸が熱くなった。
「でもね、様子を見に来たら、リュウくん、グッスリ寝ていたの。
それで私も安心して、そのままここで、寝ちゃったのよ。
このベッド、セミダブルだから狭くなかったでしょ?」
スノーさんが横から話を続けると、すごく感動的な話が、途端にどうでもいい話になった。
「はあ、ぐっすり眠れたので、大丈夫だったみたいです」
俺は、ちょうどいい機会なので話しておくことにした。
「まだ、少し先ですが、あと3週間で、ここをお暇しようかと思います。
その間に、必要な物を用意しますので、それまでの間、よろしくお願いします」
「え~~、リュウくん、ずっと、ここに居ればいいのに~。三食、私付きよ」
スノーさんは、にっこりして言ったが、俺は、それを憚るようにブリジットさんの方を見ながら言った。
「いえ、スノーさんが付くと何かと問題がありますので……」
「ちょっと前までは、あんなに素直だったのに……。うっうっうっ……」
スノーさんは、泣きまねをした。
何度も言うけど、ちょっと前は、昏睡してたんだから反抗のしょうがない。
「スノー、リュウイチは男だからな。それに、目的もある。
堅実に資金を貯めて、独立して暮らすのはいいことだよ。
それとスノー、リュウイチばかりでなく、少し私も構ってくれ」
「もう、あなたったら、淋しがり屋さんなんだから」
スノーさんは、右手の人差し指の指先でチョンとブリジットさんの鼻に触れた。
この後は、イチャイチャモードになりそうなので、俺は朝食を取るため食堂に向う。
朝食は、すでに通いのメイドさんが作っており、給仕までしてもらった。
美味しく朝食を頂いた後、ギルドへ出かけることにする。誰かが気を利かせてくれたのか、お弁当も用意されていたので、ありがたく持って行くことにした。
10-2.依頼を受けてみよう
さて、今日の予定だが、日曜日ということで、午後は、約束通り孤児院に行くことになっている。午前中の内に、初めての依頼を受けることにして、ギルドに出かけることにする。
昨日一度通った道なので、迷いもせずに何とか行けたな……珍しい。
吊り橋を渡り、ギルドの建物に入ると、受付近くの掲示板を見る。
掲示板は、依頼の設定ランクごとにA~Gまでの7つあるが、ランクGである俺が見るのは、当然FとGの掲示板だ。
まず、Fの掲示板の方は、常設の『薬草採取、20本で30G(銅貨3枚)』と『毒消し草採取、15本で30G(銅貨3枚)』等々。城壁の外での依頼となり、確かに戦う術がないと危険がある。
本命のGの掲示板の方は、常設の『船着場の終日荷降ろし1日3名まで、150G(大銅貨3枚)』、『酒場への酒ダルの配達と空ダルの回収、1タル当たり6G(鉄貨6枚)』道具屋の商品配達、1件当たり5G(大鉄貨1枚)』等々。
単価は安いが、知識が増えそうな、道具屋の商品配達を受けてみることにする。
俺は、依頼書に付けてあったチケットを取るとの受注窓口に並ぶ。
受注窓口は、2つあるが、明らかに列が短い方に並んだ。
列の短い理由は簡単だった。昨日の職業訓練の申込み窓口の男性職員が担当していたのだ。今回も何だか慣れない手つきで、もたつきながら受注処理をしているが、何とか俺の受注も完了した。
さて、道具屋まで移動しよう。店は、第二城壁のすぐ内側にある商店街の一角にあった。店の名前は、「ボロダー商店」か、確かに店はあれだな。と思いつつ店に入る。
「おはようございます。ギルドから配達の依頼で来ました」
俺は、ドアを開け、ドアベルが鳴り止むとすぐに大きな声で挨拶をする。
中には、美人の店主がいる………はずもなく、じいさんの店主が店番に座っていた。
俺は、店主に近付きもう一度、普通の声でバカ丁寧に挨拶をする。
「ギルドへご依頼の商品配達の件で、私、リュウイチロウ=キサラギが
受注し派遣されました。よろしくお願いします」
「ワシが、店主のボロダーじゃ。商品を配達して回る時は、今の調子で頼む」
どうやら、合格点をもらえたようだ。
「はい、わかりました。それで、配達の方はどの程度あるのでしょうか?」
「取り合えず、10件分じゃな。地図はここじゃ」
ボロダーさんは、10件分の伝票と配達先の詳細な地図を渡してくれた。
それを受け取り、伝票と地図を照らし合わせ、次に伝票の中身を確認する。
「この量ですと、荷車に数件分積み込んで配達するのですか?」
「いや。これを持って行け」
ボロダーさんは、俺に少し汚れた肩掛けバッグを渡して来た。
俺は、それを受け取りバッグを調べる。
「これ、ひょっとしてアイテムバッグですか?」
エルエルから聞いていた、どんなアイテムでも無限に入るバッグがこれだろうか?
「アイテムバッグを知っとるのか? じゃが、それはサブバッグの方じゃ。
今はアイテムバッグと同じように使えるが、サブバッグ自体にアイテムを
収納する機能はない。アイテムバッグの方でサブバッグとの繋がりを切れば、
ただの小さな肩掛けバッグに戻ってしまう」
ボロダーさんは、親切に説明してくれた。
「サブバッグは安いし、パーティでアイテムを共有したい場合は、重宝するぞ。
それとなサブバッグにアイテムバッグの容量の一部を分けて専用スペースを
作ることもできるのじゃ」
なるほど、人数分の高価なアイテムバッグを揃えなくてもいいし、共有できれば分けて収納する必要もなくなるのか。更に一部のスペースを割り当てれば、安価なサブバッグに高価なアイテムバッグと同等の機能をもたせられるわけか。
「便利そうですが、パーティで最低1つはアイテムバッグが必要になりますよね?
アイテムバッグって、どのくらいの値段なんですか?」
「そうじゃな。『どんなアイテムでも無限に入り誰でも使えるアイテムバッグ』
となると白金貨が数十枚必要になの。無限と言うのは、もちろん誇張じゃが」
「白金貨~~!?」
白金貨1枚で10万G、日本円で1000万円ぐらいだ。俺は、今朝目が覚めた時とは別の意味で驚いた。
「重量制限や使用者制限があるもので、金貨数十枚じゃな。
このサブバッグに繋がっているアイテムバッグは、10tまで入る
使用者制限なしのもので、金貨50枚ぐらいじゃな。
さて、講義はこの辺りにして、そろそろ配達の方を頼むぞ」
「はい。では行って参ります」
アイテムバッグは、今のところ、手に入れられる金額じゃないようだ。
俺は、サブバッグを襷に掛けると地図を見ながら配達先を回る。
配達先が、大きな屋敷や商店ばかりで、迷う事も留守という事もなく助かった。
ただ、伝票に書かれたアイテムが、どれを示すのか分からずに苦労したが、向こうの担当者に聞きながら正午を少し過ぎたくらいで無事に終わった。
今後もこの仕事を続けるのならアイテムを覚えるのが今後の課題だ。
「ただいま戻りました。ボロダーさん」
「終わったのか? 少し時間が掛かったの」
「申し訳ありません。伝票のアイテム名と実物が結びつかずに結構時間が掛かりま
した。間違えてないか伝票と照らし合わせてもらえませんか?」
「ちょっと、サブバッグをこっちに寄こしてみろ」
俺は、借りていたサブバッグをボロダーさんに渡した。
ボロダーさんは、それを受け取ると不可視のタブレットを操作している仕草をする。
しばらくすると、ボロダーさんは満足げに頷き話し出した。
「サブバッグからの取り出し記録を見る限りでは、伝票と一致しておるの。
まあ、初めてにしては上出来じゃな」
「ありがとうございます。でも、そんなことまでわかるんですか? 」
「ああ、配達用のサブバッグだけじゃがな。
後でチェックできるし、誰かが勝手に横領してもすぐにわかるからの」
なるほど、サブバッグとは言え、新人にポンと渡すわけだ。
「ところで、追加の配達はありませんか?
なければ、昼食の弁当を食べたいのですが」
「急ぎのはねえから、その辺りに座って食え」
俺は、さっさと弁当をあけ、あっと言う間に平らげる。そして、エルエルから借りている水筒の水を飲み干した。俺は、エルエルの言い付けもあり、飲み水はすべてこの水筒から飲むようにしている。一息着くと俺は、ボロダーさんに尋ねてみた。
「ボロダーさんは、この店を一人で切り盛りしているんですか?」
「半年ぐれえ前までは、カカアと一緒にやってたんじゃが……、
ちょっとの……臥せっちまったんじゃよ……」
ボロダーさんは、上を指で指すとそう答えた。
俺は、二階で病気の奥さんが、寝ているのだろうと考えた。
「それでも、2、3日前までは1人で店番と配達をやってたんじゃが、
昨日、配達の途中に膝の古傷を痛めちまって、歩くのにも難儀してな。
それで、ギルドに昨日依頼を出したわけじゃ。確かリュウイチじゃったな」
「はい」
「それでじゃ、できればワシの膝が治るまで、毎日来てくれると助かるんじゃがな」
「俺の方でも好都合なんですが、午後2時ぐらいまでしかお手伝いが出来ません。
職業訓練と教会の孤児院での奉仕活動がありまして、今日も教会に行く予定です。
それでも、大丈夫でしたらお願いします」
「ああ、それなら問題ねぇ。今ある分の配達も、明日で十分間に合うからの。
いつもは、朝の分の配達が終わったら基本的に配達は終わりじゃ。
日によって件数は変わるが、慣れれば問題ないじゃろ。それと、これは持ってな」
そう言うと、サブバッグを俺に返してよこした。
「契約金代わりじゃ。アイテムバッグの中に専用スペースを作った。
入る容量は1t程度じゃが、十分じゃろう。
契約期間中だけじゃが、自由に使ってええぞ。
ただし朝、店に来る前に空にしてくるのが条件じゃ、わかったな」
「ありがとうございます」
俺は、喜んで今日から三週間の長期契約を結ぶことにした。達成ポイントを貰うためギルドを通した契約となるが、窓口での受注申込みが不要になり達成報告のみで済む。お陰で朝は、直接店に来ることができるため、時間の節約にもなる。
オマケに期間限定だが、期せずしてアイテムバッグに相当する物を手に入れることが出来た。更に、空いた時間にアイテムについて色々と教えてもえる事にもなった。何だか運が向いてきたな。
俺は、足取りも軽く店を後にして、達成証明書と長期契約書を持ってギルドに報告に行く事にする。
俺はギルドに戻ると、初依頼の達成報告を窓口で行い、大銅貨1枚と達成ポイント2ポイントをもらった。達成ポイントは、一緒に提出したギルドカードにギルドポイント(GP)として記録され、一定量溜まるとギルドランクが上がる仕組だ。
また、ボロダー商店と結んだ長期契約書を窓口に提出し、長期受注手続きも合わせて行った。これで、明日からの3週間の仕事が決まった。
さて、アニーの待つ教会の孤児院に向かうとするか。
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まとめ
朝起きると、隣にスノーさんがいた。
何? 添寝は初めてじゃない!? まずいよ、ブリジットさんが、怒るよ。
ブリジットさん登場! 何でスノーさんが泣き付いてるの?
俺、ノットギルティですよ。
反抗期!? 寝ながら反抗はできないですから。
ブリジットさんは大人でした。でも如何でもいい話になるのはなぜ?
早くギルドに依頼探しに行こう。
これいいね。道具屋の配達の仕事だって、宅配便みたいだな。
ちょっとガンコっぽい店主だけど、親切そう。
では、配達行って来ます。アイテムの名前がわからん。
すいませんけど、この名前のアイテムこれですか?
ご協力ありがとうございます。よし、配達完了!
長期契約? 午後2時までに終わるなら。
終わる? だったら契約します。
ギルドに報告してと、依頼料とポイントもらって、
長期契約も登録して、終わったから教会行くか
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