頭領と辺境伯令嬢
朝早くに王都の屋敷を出て、公爵家の屋敷に戻ってきた。
夜間警備をしてたらしい人たちに気づかれることなく、あらかじめ開けていた自室の窓から侵入する。
幸い、同室の人が居ないためこの行いが誰かにバレることはない。
「さて、まだ時間もあるし……もう一眠りしますか。」
裁判は午後から。
その前に王城に顔を出してくれとのことだから、時間はある。
ガゼル、間に合えば良いんだけど。
「……、誰か来る。」
部屋の外に感じる人の気配。
覚えのあるその気配に息を殺していれば、トントンとノックがされて。
「ユリア嬢、ガーディナです。お話よろしいですか。」
ソレに居留守を使うかどうするか逡巡する。
まだ早朝だし、知らない顔してベッドに潜ってしまおうか。
また、ノック音が響く。
「よろしくないです、何時だと思ってるんですか?」
領地ならすでに活動時間だが、ココは王都だ。
見回りに出る必要も、朝食を用意する必要もない。
「すみません。ですか、コースター卿から急ぎの手紙だと…………。」
扉を開き、ガーディナ様を見る。
「お父様は?」
「先程、王都の屋敷に戻ると言われて。」
「……ありがとうございます、ガーディナ様。」
「では、私はコレで。淑女の部屋に押しかけて申し訳ありません。」
キッチリと一礼して立ち去っていく姿を見送る。
ガーディナ様のあぁいう振る舞いを見ていると、貴族の息子なんだなって思うわ……。
最近はステラさんに怒られてる姿しか見てないから、あんまりそういうのを感じなかったんだけど。
お父様からの手紙を開いて読む。
内容は今日の裁判について。
お嬢様と殿下がどんな対応をするのか楽しみだと書かれている。
それから、子爵の領地をもらおうか迷ってますという内容が書かれている。
どうやら、ソフィアたちの薬とアルベルトの食堂が話題になっていて繁盛しているらしい。
領地に帰ったら、ぜひとも顔を出したい。
「気持ちはわかるけど、これ以上領地を広げても、税をあげなきゃ生活が成り立たないわよ。取り立てる税もないんだけど。」
ソフィアとアルベルトが頑張って貴族籍を手に入れたのはわかってるけど、領地を治めさせるためじゃないだろうし……。
あれ、そう言えばニーナのことについて一切触れてないわね。
てっきり怒られると思ったのに。
「アルベルト、報告してないのかしら?」
いや、アルベルトに限ってソレはないな。
アレだけ自分を責めてたら、怒られたいがために伝えてそうだし。
と、いうことは…。
「ユリアさん、ステラです。」
「え、ステラさん?」
もうそんな時間?
驚きつつ扉を開けば、申し訳無さそうな顔をする。
「何かありましたか?」
「緊急事態とかではないのですが……、裁判の時間前に殿下とお嬢様が最後の打ち合わせをするようで……。なるべく早く登城したいと……。」
「……わかりました、お手伝いします。」
「お願いします。」
ステラさんが足早に立ち去って行く。
どうやら今日は慌ただしくなりそうだ。
公爵家の使用人総出と言っても過言ではないレベルで準備が進められ、セザンヌ公爵には一時間くらい小言をもらった。
娘を心配する気持ちはわかるが、王侯貴族は参列すると聞いてるから、そんなに怒らなくて良いと思う。
ちなみに、セザンヌ公爵は娘の晴れ舞台に気合が入っている。
まぁ、気合が入ってるとは言葉の綾で。
「コースター嬢、この武器はどうだろうか?」
「検査で引っかかると思いますよ。裁判所には武器の持ち込みは禁止だったと記憶しております。」
「ドナウ公爵は持ってくるだろう、このくらいのものを。」
「ドナウ公爵は騎士団員なので、武器の所持が認められてます。」
「ふむ……今日こそマリアの命を狙う忌々しい奴らを一網打尽にできると踏んでいるのだがな。」
マリアお嬢様に危害を加えるすべての物を排除するために傍聴席にお座りになるようだ。
この人、下手な野次馬よりも怖い。
「ユリア、そろそろ行くわよ。」
「はい、お嬢様。」
「マリア、今からでも遅くない。考え直さないか?」
「いいえ、お父様。私はクロード様のために……何よりも私のために、頑張りたいの。私が、クロード様の婚約者で居るために。」
「マリア…………。そうか、わかった。では、私は応援に専念することにしよう。」
「ありがとう、お父様。」
お二人のやり取りを見届け、お嬢様と一緒に私とステラさんも馬車に乗り込む。
セザンヌ公爵に見送られながらゆっくりと馬車が動き出す。
「いよいよですね。」
「えぇ、そうね。」
「緊張してますか?」
「少し。」
「お嬢様なら絶対に大丈夫です!それに、何かあっても私が居ます!」
「ありがと、ステラ。」
二人の微笑ましいやり取りを聞きつつ、窓の外へと視線を送る。
裁判の日にふさわしい晴れ模様。
いっそのこと、雨でも降ってくれれば不吉な空模様に憂いを帯びて見上げるくらいの情緒を持てたかもしれないのに。
「ユリア。」
「はい、お嬢様。」
「貴方昨日、いつ帰って来たの?部屋に居なかったわよね?」
「真夜中に帰って来ましたよ。」
本当は明け方だけど。
「睡眠はちゃんととったから大丈夫ですよ、お嬢様。」
「…………。」
「お嬢様のことはしっかりと守りますよ、約束の日まで。」
王命を遂行して、領地に帰る。
モブキャラである私にはその道だけ。
ヒロインだったら物語終了後は攻略キャラとの甘い後日譚があるのかもしれないが、モブキャラである私にはない。
お嬢様と殿下が無事に結ばれる未来を遠くから眺めるだけだ。
何か言いたげなお嬢様が言葉を発する前に馬車が止まって。
「つきましたね、お嬢様。クロード殿下が迎えに出て来られてます。」
「クロード様が……っ?」
馬車の扉がゆっくりと開き、降りるお嬢様を殿下がニコリと笑ってエスコートする。
ステラさんもレオナルド様の手を借りて降りる。
さすが、攻略キャラ。
いつ見ても紳士だ。
「会いたかったよ、マリア。朝早くから呼び立てて申し訳ない。」
「いいえ。裁判の前に話をする時間を設けて頂いて、とても嬉しく思います。」
「緊張してるかい?」
「…………。」
「大丈夫。証言台に立てないぶん、全力でマリアをサポートするから。」
「ありがとうございます。」
ニコリと微笑むお嬢様に殿下は嬉しそうに微笑んで、お嬢様の前髪を指先で弄ぶ。
ソレに真っ赤になる姿を見て嬉しそうに微笑むと、エスコートして行ってしまう。
完全に、私達のことを忘れてると思う。
「ステラさんはこちらへ。」
「はい。」
「ユリア嬢には会ってほしい人がいます。」
「会ってほしい人?」
「ギブハート団長について行ってください。」
「わかりました。」
レオナルド様の指示に頷けば、いつぞやに見た騎士団長が先導して、殿下やレオナルド様たちとは逆方向に歩いて行く。
チラリとこちらを心配そうに伺うお嬢様とステラさんにはニコリと笑い返しておく。
この王城の中で私がユリア・コースターだと知って何かをしてくる人はいないだろう。
コースター辺境伯は長きにわたり帝国との国境を守ってきた国の要なのだから。
その娘に危害を加えるようなバカ、早々いない。
「……どこに向かっているのですか?」
「地下牢に。」
「地下牢?」
「はい。」
そう言いながら、騎士が周囲を固めている建物を見上げる。
離宮…というよりかは、騎士団員の駐屯所のように見える。
そのくらいに厳戒態勢が敷かれている。
「王城の地下牢には、野盗の頭領が居るだけだと記憶してますが……。ココまでされる実力者が閉じ込められてるのですか?」
「その野盗の頭領のために、この厳戒態勢が敷かれています。」
思わず騎士団長を凝視する。
騎士団員が負けるような相手だとは思えない。
だからと言って勝てる相手ではない。
それは、対峙した私が一番わかってる。
「ココまでする必要があるのですか?彼は地下牢で拘束されているのでしょう?」
「あの男を消そうとする輩は必ず居る。そのための処置です。コレだけの人数で守れば、消される心配もないでしょう?騎士団員の中に裏切り者がいたとしても、対処できる。」
地下牢へと降りる扉を守っていた騎士が敬礼し、通してくれる。
扉を開いてすぐにある階段は薄暗く、少し狭い。
「……まるで騎士団員の中に裏切り者が居るような口ぶりですね。」
「その通り。」
「!!」
「殿下の婚約者である公爵令嬢を狙ったのです。政治的な絡みがあるのは明白。誰がどこで繋がってるかわかりませんからね。警戒しておいて損はありません。」
「…………なるほど。それもそうですね。」
もしかしたら、騎士団長は何かに気づいてるのかもしれない。
それでも何も言わないのは、確証がないからか。
はたまた貴族同士の繋がりがあるからか。
いずれにせよ、お嬢様と殿下の関係を邪魔しなければ私には関係ない話だ。
「この通路の真ん中の牢です。」
「本当に厳重ですね。」
牢のある通路に出る前にも南京錠がついた扉がいくつかあって。
まさしく重罪人のための牢獄。
薄暗い通路を照らすために燭台に火をつけ、騎士団長が先導して歩いてくれる。
「ココです。」
「…………。」
「おい、連れてきてやったぞ。」
牢獄の奥からガチャガチャと金属の音がする。
そして、鎖を引きずる音。
「おせーよ、待ちくたびれちまった。」
「贅沢を言うな。これでも急いで来てもらった。」
「嘘つけ。俺はココに閉じ込められた時から言ってんだろ?ユリア・コースターを呼べってな。お前らがのんびりしてたおかげで、裁判当日じゃねーか。」
このまま口論が始まりそうな気配にパンッと手のひらを鳴らす。
何もないこの空間ではよく響く。
「そんなに熱烈なお誘いだったとは知らなかったわ、ごめんなさいね?騎士団長、少し離れていてもらえますか?」
「ですが……。」
「大丈夫ですよ。相手は足枷も手枷もちゃんとついてる罪人です。」
「……わかりました。」
燭台とともに離れて行く騎士団長のおかげで、私達の周囲はまた薄暗くなる。
「それで、頭領さん。傷の具合はどう?」
「お、心配してくれてんの?」
「当たり前でしょ。見たところ、簡単な処置はされたみたいだけど……、その目、開く見込みは?」
「ないだろうな。あんな手当じゃ。」
「そう……。」
「何、もしかして罪悪感でも感じてる?」
「そんなわけ無いでしょ。貴方のソレはマリアお嬢様とニーナを誘拐した罰よ。」
そういえば、楽しそうに笑う。
「そう言うと思ったぜ。嬢ちゃんの剣筋には迷いが一切なかったからな。」
冷える地面にあぐらをかいて座る頭領は、頬杖をついてこちらを見てくる。
ため息を一つ吐き出して、冷える地面に腰を下ろす。
「…………どうして私を呼んだの。」
「いきなり本題に切り込んだな。」
「裁判まで時間がないの。無駄話はさっきのでおしまいよ。」
「……なぁに、嬢ちゃんがあのお嬢様の護衛してるみてぇだからな、直接教えてやった方が良いと思っただけだ。それに、嬢ちゃんの方も俺に聞きたいことがあるだろ?」
ニヤリと口角をあげたのがわかった。
「今日の裁判で、お嬢様に何か起きるの?」
「さぁな。」
「さぁなって…………。」
「起きるかもしれないし、起きないかもしれない。俺が言えるのは、起こす予定ではあったということだけだ。」
その絶妙な言葉遊びにゆっくりと息をする。
最善の方法は彼の遊びに付き合うこと、か。
「貴方たちがあの誘拐で成功していれば、裁判では何も起きない予定だったけど、貴方たちが失敗したから別の計画が動いていて、お嬢様は狙われている、と?」
「そういうことだ。」
「誰が何のために。」
「誰がかは知らねぇ。元々は俺たちの仕事だったからな。何のためにかは簡単だ。殿下と公爵令嬢の婚約を白紙に戻すため。」
「犯行動機がソレだと確証はあるの?」
「俺たちに依頼しに来た時にそう言ってたからな。」
「……金払いが良かったから貴族だろうって言ってたのは、衣類の理由が殿下と公爵令嬢の婚約を白紙に戻すことだと知ってたからね?」
「ククク、御名答。」
「今日の裁判で、貴方が命じられていたことは何?」
「会場内の撹乱と公爵令嬢の殺害。」
「!!」
ギブハート団長が動いたのか、鞘のぶつかる音がして。
「貴様!なぜソレを黙っていた!!」
「おいおい、怒るなよ団長さん。俺は言ったハズだぜ?ユリア・コースター以外に話す気はねぇから、さっさと呼べってな。」
「…………っ!!」
「ギブハート団長、やめてください。」
「……、しかし……っ!!」
「今、そんな小さな争いをする時間も惜しいの。わかっているでしょう。」
「…………っ。」
「退がりなさい。今、彼と話をしているのは私です。」
「…………はい。」
渋々ではあるものの数歩戻るから、息を吐き出し頭領を見る。
彼はあいも変わらず楽しそうに口角を上げている。
「さっき誰がこの計画を実行するのかわからないと言ったけど、心当たりもないの?」
「ねぇな。依頼人の顔を俺たちは拝んじゃいねぇ。どんな協力者がいるかも検討つかねぇな。」
「本当に?」
「嘘ついてどうする。俺にはなんのメリットもねぇ。」
深呼吸を一つ。
彼には、まだ話してもらわなくちゃいけない。
「ここまで協力して情報も吐いた。コイツらに減刑するように伝えてくれよ、嬢ちゃん。」
「何言ってるのよ。私にそんな力はないわ。」
「何……?」
「ソレに、貴方はまだすべてを話してはいないでしょう?」
そう言えば、ギラリと剣呑な光を宿して睨みつけてくる。
そのくらいの睨みで怯んでいたら、辺境伯領では生きていけないのよ。
「睨みつけても怖くないわよ?」
挑発的に笑みを浮かべれば、楽しそうに笑い出す。
頭領の楽しそうな声が地下牢に響き渡る。
「はぁ、笑った笑った。いやぁ、嬢ちゃんは本当に面白いなぁ。頭領の俺がココまでバカにされることなんかねーよ。」
「バカにはしてないでしょう。貴方がたかだか小娘だと私を侮ってるだけで。」
「ククク、言ってくれる。」
「それで?他にはどんな情報をつかんでるのか、教えてもらえるかしら。」
「断る。」
「…………。」
「俺を解放できないなら、これ以上の情報は渡せない。ユリア・コースターならデキると思ったんだが、見当違いだったらしいからな。」
「貴方を解放できるなら、教えてもらえるのかしら。」
「できねぇんだろ?」
「そうね、私にはその力がないから。」
「だったら。」
「でも、貴方を解放できるかもしれない情報ならつかんでるわ。」
「…………。」
疑うような睨みつけるような、鋭い視線。
私の言葉を真実かどうか見極めているのだろう。
情報を一切出さずに取引できる相手なんかじゃない。
掴んでいる情報の一部を開示する必要が……ある。
「……宝石店で屑石として扱われていた小さな宝石を見つけたの。その小さな宝石はガラス玉と同じように扱われていたけど、とても貴重な宝石だったわ。」
「…………。」
「でも、ソレを取り扱ってる店主は知らなかったの。じゃあ誰がそんなことをしてるのか。気になって調べたのよ、私。」
頭領に反応はない。
私もただ、静かに事実だけを述べる。
殿下とお嬢様が関わっていることは伏せて。
「そうしたらね、とある家族に行き着いたの。引き籠もりの三男坊と吟遊詩人の五男坊がいる家族にね。」
「────」
「貴方も知ってるわよね?その家族のこと。だって、捨てたにせよ捨てられたにせよ、家族だもの。」
ピクリと指先が動き、目が見開かれる。
「さて、教えてくださらない?貴方の握っている情報を。」
「……その口ぶりだと俺が誰か、検討がついてるってところか。だが残念。ソレじゃあ俺を解放できるかもしれない情報にはならない。」
「貴方は、今回の仕事を依頼してきた人物を知ってる。いや、知ってるというのは語弊があるわね。大方の検討がついてると言った方が良いのかしら。私、あの建物で聞いたでしょう?」
マーシャル・タールグナーを知ってるかって。
「…………なるほど。全部調べた上であの質問か。」
ニコリと微笑むだけに留める。
本当はココ数日の間に情報収集してましたなんて言えない。
「嬢ちゃん一人くらいと侮った俺の負け、か。」
「そうよ。私に惨敗してるんだから、さっさと情報吐きなさいよ。裁判まで時間ないんだから。こんなところでグズグズしてる時間なんて私にはないのよ。」
「コレが罠だとは思わないのか?」
「あら、心配してくれてるの?大丈夫よ。今日の裁判は殿下とお嬢様は片時も離れないし、もし離れたとしても王侯貴族の集まる場所。そう簡単にお嬢様は暗殺できないわ。」
何より今日の集まりにはお父様が居る。
「狙うなら、証言台に公爵令嬢が立っている時。証言台の周辺は人払いがされていて護衛も傍にいないし殿下も離れてしまう瞬間。」
「ソレがわかっていながら、暗殺はできないというのか?一瞬の隙でも、暗殺できるぞ?」
ニヤリと頭領が口角を上げる。
その挑発的な笑みにため息をついて立ち上がる。
「そこまで言うなら、私はもう行くわ。貴方が話す気がないのはわかったし。」
「もう行くのか、嬢ちゃん。」
「話す気もない人とこれ以上居たって時間の無駄だもの。私には貴方を助ける力はないけど、情報は一部開示しちゃったから。知った貴方を生かしておく理由もないのよね。」
「…………!!」
「じゃあね、次男坊さん。せいぜい暗殺されて死なないように気をつけて過ごすことね。」
「ま、待て!俺も情報は喋っただろ!!」
ガシャンと檻が音をたてる。
振り返れば頭領が檻を掴んでこちらを睨んでいて。
「あら、変なことを言うわね。貴方が開示した情報はこちらでも予想がつく範囲のものだったわ。私にとっては目新しい情報ではなく憶測を裏付ける証言にしかならなかった。そんな情報を話しただけで命乞いするつもり?」
「…………っ。」
「貴方の話してくれた情報に価値はないわ。」
「…………、俺を減刑させられるかもしれないと言って俺に話した情報。あれのどこに俺を減刑させられる要素がある。」
「説明されなきゃわからないほど、貴方は馬鹿に見えないけど。」
「…………潰す手伝いをしろってことか。」
「私は無事にマリア・セザンヌ公爵令嬢とクロード・カルメ殿下の婚姻の儀を迎えることができるなら、貴方たちがどうなろうとどうでも良いの。」
私に与えられた王命は婚姻の儀までマリアお嬢様を守ること。
そのために私はココに居る。
「あとは殿下にお願いすることね。裁判の時間があるから私はもう行くわ。お話できて良かったわ、じゃあね頭領さん。」
「…………。」
「よろしいのですか。」
「えぇ。付き添いありがとうございます、ギブハート団長。」
騎士団長の先導で地下牢から出れば太陽は高く昇っていて。
もしかしたらもうすでに裁判所に向かってるかもしれない。
「ユリア様。」
「マルクル様っ?」
「お待ちしておりました。お疲れかと思いますが、付き合っていただけますか?」
マルクル様の隣には、私の待ち人であるガゼルが紙束を持って控えていた。
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